【香港!HONG KONG! Feb.2020】つかの間の里帰り(1)

アイキャッチ画像:時代廣場(Times Square)の農暦新年飾り。デモや新型コロナウィルスで、なんか落ち着かない農暦新年(筆者撮影)>

2月8日~10日という、まさに「しゅっと行って、しゃっと帰る」慌ただしい日程で、およそ3年ぶりに「里帰り」してきた。

香港永久居民の小生。この「香港永久居民身分証」は「3年香港を空けると無効やで」というルールがあって、そのリミットが目前に迫っていた。警民衝突に出くわして、催涙煙吸うくらいならまだしも、「お前、写真撮ってたやろ!」とか言われて「正義の民主派」諸君にボコられ、血まみれにされちゃたまったもんじゃないし、さらには「新型冠狀病毒新型コロナウィルス」もなんか気持ち悪いしで、本来なら避けたいところだが、なにせ香港永久居民には「選挙権」があるし、ごくたま~に、海外居民も含めて政府から「お小遣い」も出るわけだから、放棄するなんてもったいない。

ここは、飛行機代と宿代が「更新料」と割り切って、帰るしかない。

ってことで、LCCの「ピーチアビエーション」を利用して、ひょいひょいと飛んできたという次第だ。

朝8時台の搭乗は、朝の弱い小生には厳しく、「寝坊したらあかん!」と思っていたら、結局、30分ほどうたた寝しただけで、関空へ向かうという遠足前夜の子供みたいな状況(笑)。

予想はしていたが、客、少ない。搭乗率はぱっと見で6割弱というところか。これまたぱっと見でそのうちの9割以上が香港人。「もしかして、日本人、俺だけ?」みたいなね(笑)。

香港国際空港へ着いて、驚いた。とにかく、がら~んとしているのだ。だから入境もスムーズ。いつ体温測定されたのかもわからん。ええんか、こんな感じで?

さらにびっくりは、機場快綫(Airport Express)のホームに、ほとんど人がいないということ。もちろん、列車内も「1両に1人」くらいの割合しか客おらん。

ほぼ無人の機場快綫ホーム

2月19日付香港各紙では、香港旅遊發展局(香港政府観光局=HKTB)が18日に発表した、2月の来港者数を報じている。それによるとは2月の来港客数は1日当たり平均3,000人で、前年同期比98%減になったという。SARS流行時でさえ約1万人だったというから、目も当てられない惨状だ。ホテルの客室稼働率も、平均20%となり、高級ホテルに至っては一ケタにまで落ち込んでいる。

下表は14日付の『Bloomberg(WEB版)』に載ったグラフ。落ち込み具合が一目瞭然だ。

さて今回の宿は、最初の奉公先にも最後の奉公先にも近い、灣仔道(Wan Chai Road)の東の端っこに立地する「利景酒店(The Charterhouse)」。随分昔に、一度だけ宿泊したことがある。今や、ご多分に漏れず大陸人御用達だが、普段なら恐らく一泊HK$800(約¥12,800)くらいだと思うが、すでに実質、大陸人の入境をシャットアウトしている今、な、な、なんと!HK270(約¥4,320)という破格のお値段。

ま、さすがに古ぼけてしまっているけど、1泊だけだし悪くはない。そしてここも、もちろん閑散としている。昼飯でよくブッフェに来たが、大陸人だらけだったもんだが…。

部屋から見える風景は、表通りの灣仔道だが、決して心落ち着くものではない。が、この辺は、本当に慣れ親しんだエリアだけに、小生にとっては、ある意味「日常的光景」と言えるわけで、逆に「帰って来た!」と思わせてくれる景色でもある。

さっそく、宿の近辺をブラブラしてみる。が、その前に腹ごしらえせねば(笑)。LCCなもんで、昼飯は出てこないから、腹が減ってたまらん。こういうとき「やっぱ、キャセイにしときゃよかった…」なんて思う(笑)。

「着いたら、まず“あそこ”で叉焼飯大碟(大盛叉焼メシ)を食うんだ!」というのも、目的の一つだった。あそこ、すなわち、小生が朝昼晩三食お世話になることもしばしばだった「強記飯店」という叉焼飯の人気店。利景酒店からも3分とかからない。ウキウキな気分で行って、愕然…。「かくのごときご時世につき、顧客と従業員の安全に考慮して、15日間休業いたす」との張り紙…。「ええええ!」ってもんだ。まさか、このまま永久に閉店ってことないよな?実際、SARSの時には、そういう事情で地元民御用達の多くの飲食店が廃業している。特に大陸人で儲けていた店ではないから、肺炎騒動が一段落したら、また営業再開するとは思うけど…。ここの大将とは仲良しなんやよな…。今度帰ったときには、腹いっぱい叉焼飯食えますように。

かかる次第なもんだから、斜め向かいの「新嘉美茶餐廳」に予定変更。ここも朝昼晩お世話になった店。90年代、奉公先の口の悪い日本人奉公人たちから「労務者食堂」と呼ばれていたが、数年前にリニューアル。こぎれになったが、相変わらず労務者好みのメニューも多い。

菠羅油(香港式メロンパンバターはさみ)」と「熱奶茶(ホットミルクティー)」という、「下午茶(アフタヌーンティー)」の超定番メニューを食す。しかし!これはあかん!菠羅油がとにかくダメだ。パンが甘くない。香港のパンは、日本のパンよりも砂糖の含有量が異常に多いので、すんごく甘い。しかし、このパンはたいして甘くない。それにより、バターの味が生きてこない。これでは菠羅油の魅力半減どころか、「こんな菠羅油はイヤだ!」の典型になってしまっている。昔はパンも看板商品だった店だけに、残念な思いでいっぱいになる。そう言えば、勘定場のおばあはんの姿も見なかった。どうしてるんだろう?

とにもかくにも、時の流れは残酷だ…。

こちらは時代廣場(Times Square)。かつての奉公先が上層階のオフィスフロアに入居していた。あれから15年以上が経つ。ビルの前には農暦新年を祝うデコレーションが誂えられていたが、本来なら、大陸観光客でごった返すはずが、まあ、驚くほど閑散としていたね。

香港人がこういうものに群がる時代は、遙か遥か昔のハナシ。今や見向きもしないね(笑)

その時代廣場の向かいにある薬局には、マスクを求める人たち。実は、香港、日本ほどマスクは品薄ではなかった。インドネシアあたりから緊急大量輸入したようで、東南アジア各国産や韓国産の箱入マスクが、山積みである。ところが、写真を撮るだけで購入する人はほとんどいない。とにかく「高い」のである。小生の自宅近所のドラッグストアで「お買い得」で一箱450円くらいだったが(今は売り切れ状態が続いているが)、香港では約5,000円。店によっては、8,000円もするから買う気になれない。だから写真を撮って、SNSに上げて「暴利をむさぼる〇〇薬局!」とやったり、家族知人と情報交換したりするんだろう。

当面は8,000円でも買う人は買うだろうが、そもそもマスクが「感染予防」にはあまり効果がないのは、SARSのときに香港人は学習済みのはずで、肺炎騒ぎも一段落すれば、あちこちで「マスク大量放棄」という風景が見られるだろうと、小生は予測している。台風のときのタクシー代と言い、今回のマスク価格と言い、「困った人間の足元を見る商売」をするってのが、香港人らしいと言えばそうかもしれないが、そういうところが香港人のイヤなところでもある。

MTRでTST(尖沙咀=Tsim Sha Tsui)へ向かう。久々に会うお友達(日籍男子)と「どこで晩飯にしようか」と、しばし彌敦道(Nathan Road)をぶらつく。かなり回復したとは言え、まだまだ暴力示威集団による破壊活動の傷跡は残る。

美麗華商場(Miramar Shopping Centre)横のMTR出入口は、放火と破壊でズタズタにされたが、今なお、使用できない状態。

道路標識もスプレーで黒く塗りつされていたが、「とりあえず、最低限のところ拭きとりました」という状態。こういう状態の標識は、ここに限らず、あちこちで見かけたな。

郵便ポストにも「天滅中共」の落書き。ここも黒く塗られていたと思われる形跡が…。

このほかにも、完全バリケード防備の中国銀行や、暴力示威集団によるガードレール撤去の跡をプラスチックの鎖で急場をしのいでいたり、歩道に埋め込まれたレンガを連中が片っ端からはがしたため、そこだけとりあえずコンクリート舗装にしていたり…。まあ、よく自分たちが生まれ育った香港を破壊しつくしたもんだと感心するやら、怒りがこみ上げるやら…。そんなのばっかり見てても気が滅入るから、さっさとメシにしよう。

で、向かったのは人気火鍋チェーン店の「海底撈火鍋(Haidilao Hot Pot)」。心斎橋にもあるなんて、大阪に戻ってから知ったわ(笑)。

実はこの海底撈、1月29日に大陸本土の全店舗の営業休止を発表している。「新型コロナウイルスの拡散防止活動に積極的に呼応し、職員と顧客の安全を確保するため」ということらしいが、外出が厳しく制限されている本土のこと、店を開けても客が来ないから、しゃーないってとこだな。香港、マカオ、台湾はこの決定には含まれていない。

人気店だが、客席の1/3ほどには客を入れないのか、照明を消しているのが、ご時世だなと。しかし、この店が人気なのがわかるな。店員がよく気が利くし、フレンドリーだし、何と言っても、鍋物が旨い!お友達曰く「天井にたくさんカメラついてるけど、あれで各テーブルの状況を管理してるらしいで」と。スープは足りているか、ビールはまだあるか、具がそろそろ終わりではないか、などなどを見ているらしいけど…。ホンマかいな?

普段は1時間以上待つこともザラだと言うけど、大陸旅団がいない今では、スイスイと席につける。これはどこの人気店でも同じこと。

鍋が四つに仕切られているから、出汁も4種類楽しめる。各テーブルのタブレットで注文したネタは、ロボットみたいなんが運んでくる。当たり前だが、Wi-Fi完備。

香港で信頼度の高いグルメ情報サイト『開飯喇(Open Rice)』での評価も極めて高い。

宿に戻って「しまった!」と思ったのは、「疑惑のww」監視カメラも含め、一切の写真を撮っていないってこと(笑)。まあ、それだけおいしく、気分良く四川火鍋を堪能できたということだろう(ってことにしておくww)。

ガッツリと火鍋を食らって「軽く一杯いっとこか」と、お酒の旨い店で一杯のつもりが、三、四杯ひっかけて、それぞれの帰路に就く。

ペニンシュラも農暦新年の提灯で飾られて、とてもきれいだったが、稼働率の低さを象徴するかのように、部屋の照明が消えている…。もしかしたら、寝たのか?なら、いいけど

とっくにスターフェリーのない時間になっていたが、久しぶりにTSTのプロムナードを歩いてみた。以前なら、この時間になっても、大陸人はもちろんのこと、根が宵っ張りな香港人も、うじゃうじゃといるはずだが、「え?、もしかして、今、ここにいてるのは俺だけ?」ってくらいに、閑散としている。SARSの時でも、ここまでのことにはなってなかった。これは、えらいことでっせ、ホンマ。一方で、いかに今まで大陸旅団に恩恵を受けていたかが、よくわかる光景でもある。その点では、日本も似たり寄ったりだけどな。

「この夜景は誰に見せるために輝いているのかな?」と、気の毒になるほど、人がいなかった…。ユルユルの画像だったので、Photoshopで相当くっきりさせたけど、iPhoneのカメラでは、これが限界やね。

♪あー、明日の今頃は、僕は機上の人~ と、どっかのグループの歌ではないが、そんな感じなもんで、さっさと寝ましょう…。

(令和2年2月8日)



 


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