【睇戲】『カンフーリーグ』(港題=功夫聯盟)

今回で3回目となるシネマート新宿、シネマート心斎橋が映画ファンに贈る「のむコレ」。シネマート新宿、心斎橋の番組編成担当・野村武寛氏が、アジア映画に強いシネマートらしく、韓国・中国・香港は勿論、世界中から話題作をいち早く集めた、要チェックなレア作品が目白押しの映画祭。

と、言いながら、過去2回は完全スルー。「これ観たい!」と思っても、なかなか日程を合わすのが難しく、涙をのんだ作品がいくつもあった。今回も見送らざるを得なかった作品もあるものの、ようやく小生の都合と上映日時がピタッと合うのがあって、観てきたのが、趙文卓(ヴィンセント・チャオ)主演の『功夫聯盟』。題名に「カンフー」と付き、趙文卓が黄飛鴻(?付きw)を演じる、そして監督が劉鎮偉(ジェフ・ラウ)というからには、面白いに決まっている!と…。そんな時代から25年以上経過した。さて、我らが「ブンちゃん」、どこまでキレキレ功夫を見せてくれるのやら、かなり心配でもある。はて、どうなるやら…。

しかし、最近は趙文卓のこと、<ヴィンセント・チャオ>でなく、<チウ・マンチェック>なんて呼び方するのね…。なんかヘン(笑)。

のむこれ3
カンフーリーグ(港題=功夫聯盟)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

港題 『功夫聯盟』
英題 『KUNG FU  LEAGUE』
邦題 『カンフーリーグ』
公開年 2018年
製作地 香港
言語 標準中国語、広東語

評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):劉鎮偉(ジェフ・ラウ)

領銜主演(主演):趙文卓(ヴィンセント・チャオ)、安志傑(アンディ・オン)、陳國坤(ダニー・チャン)、杜宇航(デニス・トー)、書亞信(シュー・ヤーシン)、麥迪娜(マイ・ディナ)、張子文(スティーブン・チャン)
主演(出演):張瑶(ヤオ・チャン)、周子諾(ジノウ・ジョウ)
客串(ゲスト):何雲偉(ホー・ユンウェイ)、梁小龍(ブルース・リャン)、苑瓊丹(キングダム・ユン)、虞鑫蕾(ユー・シンレイ)

香港映画ということだが、実質、大陸映画。監督と数名の俳優が香港映画人ということで、なんとか香港映画と言っても嘘にならないが、セリフが普通話、撮影地も大陸、映画の舞台も上海。「華語片のボーダーレス化」と言えば聞こえはいいが、香港映画が輝きを放っていたころにヒット作を連発していた劉鎮偉(ジェフ・ラウ)なんだから、もっと「香港に寄り添った」作品を撮って欲しいんだが、そこはまあ、お金儲けやからねぇ…。

それにしても、なんとも言えないほどに、下らなさとおもろさが同居した、はたまた、紙一重を行ったり来たりと言うか…。そんな103分だった。敢えて言うと「103分で終わってくれてよかった」というところ。小生は激しい尿意を覚えたんで、エンドロールと同時に席を立ったけどね(笑)。

それそれの登場人物が怪しい限りだ。恐らくは次の功夫レジェンド4人がモデルなんだろうけど…。

黄飛鴻(ウォン・フェイホン 1847年-1924年) 南派少林拳洪家拳の達人。北派の技、無影脚も自在に使う武術の神様。香港で知らない人はいないし、だれもが敬意を込めて「黄師傳(ウォン・シーフー=黄師匠)」と呼ぶ。これまで多くの俳優が黄師傳を演じたが、關徳興(クワン・タッヒン)、李連杰(ジェット・リー)が双璧。趙文卓も何度も演じている。

霍元甲(フォ・ユェンジャア 1868年-1910年) 北派少林拳秘宗拳の達人。

陳真(チェン・ジェン) 霍元甲の弟子、陳公哲(1890年-1961年)がモデル。李小龍(ブルース・リー)がその出世作『精武門(=ドラゴン怒りの鉄拳)』で陳真を演じている。

葉問(イップ・マン 1879年-1972年) 李小龍の師匠。南派少林拳詠春拳の達人。甄子丹(ドニー・イエン)主演の大人気シリーズ『葉問』シリーズは、5月にいよいよ最終章が日本で公開。

映画の設定は4人の功夫レジェンドがで、ひょんなこと(実は、この「ひょんなこと」がさっぱりわからんww)から現代にタイムスリップして、漫画青年の恋物語に巻き込まれる、という、「おい!またタイムスリップもんかえ!」って何とも安直なものなんだが、さあ、そのレジェンドだが、趙文卓が演じるのは「黄師傳」であり、黃飛鴻とは言わず、「霍大俠」は霍元甲とは言わず、「陳阿真」も陳真とは言わず、「葉別問」に至っては葉問と言わないどころか、「別」が暗示するように真っ赤な偽物だったというもので(笑)。

甘口評】のっけから『黄飛鴻之三 獅王争覇(=ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地争覇)』を彷彿とさせる獅子舞対決。な~んとなく主題歌『男兒當自強』らしき音楽が背後に流れて、「おお、これは!」とちょいとウキウキしたりする自分が「馬鹿だねぇ~、お前」ってところだ。小生が昔、大好きだった關芝琳(ロザムンド・クヮン)が演じていた十三姨は、本作では張瑶(ヤオ・チャン)が演じる。まあ、テンション上がったのはこの獅子舞対決くらいなんだけど(笑)。そう言えば本作の字幕でも「イーさん」になってたね(笑)。

サービス精神という点では合格点。そこはさすが劉鎮偉(ジェフ・ラウ)。こういうのは香港の彼くらいの年代の監督さんなら、お手のモノだ。

それと驚いたのは梁小龍(ブルース・リャン)の存在。『功夫(=カンフーハッスル)』で、突如として銀幕に復帰した功夫の名手だが、本作でも『功夫』で見せた「崑崙派蛤蟇功」らしき技で、趙文卓演じる黄師傳を追い込んでいたのが、素晴らしい。何が素晴らしいっかて、御年71にしてあの動きってのがねぇ。

梁小龍(ブルース・リャン)の動きには、びっくらこいた!

辛口評】実に「なんじゃらほい?」な映画。上述の獅子舞の前に、映し出された水たまりでの格闘シーンなんて、「あの映画から引っ張ってきたのか?」みたいな(笑)。レジェンドが現代にタイムスリップした原因も、なんかはっきりしないし…。言い出したら、最初から最後までツッコミと言うよりも「おい!ジェフ、ええ加減にしとけよ!」と怒りと呆れが逆巻く103分間だったという塩梅だわな。小生イチ推しの安志傑(アンディ・オン)も、あの使われ方はないやろう…。

劉鎮偉のことだから、シリアス全開の「功夫対決」はないとは思っていたが、せっかく各流派の使い手ナンバーワンが勢ぞろいしたんだから、無影脚vs詠春拳なんか、チラッとでも見たかったなぁ…。

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上述したキャスト以外では、苑瓊丹(キングダム・ユン)が懐かしい。小生が香港での奉公を開始したその日から4年半にわたって放映されたTVBの夜の帯ドラマ『真情』に出演していたのを思い出す。元気そうで何より。

4人が揃うきっかけとなった漫画青年、英雄(インション)を演じた書亞信(シュー・ヤーシン)ってのが、オリエンタルラジオ藤森慎吾にそっくりだったのが印象的。だからどうってハナシでもないんだけど(笑)。ちなみに藤森は小生の在港と一瞬、在住期間が重なる。小生がデコちんに汗して奉公していたころ、彼は香港日本人中学で天真爛漫に過ごしていたという次第。さらにどうでもいいハナシだが(笑)。

その英雄君が恋心を寄せる同僚の保儿(バオアー 演:麥迪娜(マイ・ディナ))に、やはり恋心を抱く、保儿の従兄で社長の張鵬(演:張子文(スティーブン・チャン))だが、自ら開発したAIカンフースーツなるものを装着して、葉別問以外の「疑惑の」功夫レジェンド3人を相手に大立ち回りという展開。で、どうもこのAIカンフースーツが小生には、香港を破壊しまくる黒衛兵の黒装束に見えて仕方なっかた。大陸的にこの衣装はどうなんだ?(笑)

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ま、あくまでも娯楽作品、もっと言えば「コメディ」として観るには、「アハハのハ」と笑ってられる作品。久々の趙文卓(ヴィンセント・チャオ)と小生イチ推しの安志傑(アンディ・オン)を楽しみにしていただけに、かなり肩透かし食らったってのが、正直なところかな…。

もっと功夫を!

と、我々の年代なら思うよな…。

(令和元年12月21日 シネマート心斎橋)



 


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