【反送中】催涙弾も何度目か?またもや警民大衝突

こうしてブログを週に1~2回したためている間にも、次から次へと色んなことが起きて、まったく追いつかなくなってしまった。香港市民の皆さん、お気持ちは察して余りありますが、もう少し、ペースダウンしませんか? クソ熱い時候でもありますし…。

さて、本ネタに入る前に、マクラをおひとつ。

7月31日付の『Bloomberg』(英語WEB版)に、”White House Eyeing Chinese Forces Gathered on Hong Kong Border“の見出しで、深圳あたりに解放軍治安部隊が続々と集結し、「出動指示待ち」であるという動きを、米・ホワイトハウスも注目しているという旨の記事が出ている。いよいよ「その日」が近づいてきたのか、と思わざるを得ない。

この「続々と集結」が何のためかは不明だが、香港のデモが念頭にあるのは間違いないだろう。こういう動きをチラつかせることで、抑止力になるなどと思ってはいないだろうが。

今、警察と最前線で衝突している子らの中には、背負ったリュックに「遺書」を忍ばせている子も少なくないと聞く。恐らく、あの子らは、解放軍を前にしても身体を張って、「香港を守る」のだろう。もし、小生に子供があれば、あの子らと同年代だろう。それを思うと、「香港を守る以上に、自分を守れ!」と言いたい親の気持ちになるのだが、彼ら彼女らの決意は動かないだろう。すでにそういう段階に入っているのだ、この香港は…。

「優男で、困ったチャンが多い」と思っていた香港の「90后」「00后」世代だが、いやいや、実に逞しく育ったもんだと、最近、見直している。この薄っぺらなリュックには遺書も入っているのかと思うと、あまりにも切ないし、背負った物の大きさや重さを感じる (7月28日、西営盤での衝突)

現在、香港には約6000人の解放軍が駐留しているが、普段は基地から外に出ることはない。ただし、香港特区政府は「公の秩序の維持と災害救援のための駐屯地からの援助を求める」こともできる。ただ、要請通りに動くかどうかは、中央が決定することになっている。特区政府はどうするのかね…?

さて「この香港には、一体、催涙弾は何発備蓄されているんですか?」と聞きたくなるくらい、催涙弾をぶっ放しまくっている今日この頃。7月28日には、またもや、警察とデモ隊の激しい衝突が起きた。その翌日、国務院港澳事務弁公室(中国国務院香港マカオ事務弁公室=港澳弁)が1997年の設立以来初となる、単独での記者会見を開いた。

会見する港澳弁・楊光報道官 by “国務院新聞弁公室”

昨今の香港の事態について」と題した会見で、港澳弁の楊光氏報道官は「林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の施政、香港警察の厳正な法執行、関係部門や司法機関による暴力犯罪者の法に基づく処罰、愛国愛港者による香港の法治を守る行動」を中央政府は断固支持すると表明。この姿勢は、デモ当初より中央の終始一貫したもので、何の珍しさもない。香港市民からすれば「な~んや、こんなことでわざわざ会見開くなよ」というところだろう。

警官隊や家族が抱えている大きなストレスにも触れ、「負担に耐える優秀な警官たちに敬意を示す」と述べた。あ、これは小生もそう思うね。でも、このコメントもまた、「な~んや、そんなことかい!」ってところだ。「新聞稿=プレスリリース」だけで事足りるやん、ってなもんだ。

香港の現状については、「完全に平和的デモの範囲を越えており、安定と繁栄を破壊し、一国両制という原則のボトムラインを超越している」「法治、社会秩序、経済、民生、国際イメージに深刻な影響を与えている」と厳しく指摘。またもや「肩透かしコメント」だ。外交部の賢そうな報道官が、ずっと言ってきたことだ。

ここからは、「な~んや」で聞き流してはいけない。一国両制で低触してはならない一線として、「国家の主権・安全に危害を与えること、中央の権力と香港基本法に挑戦すること、香港を利用して中国本土に破壊行為を及ぼすこと」は絶対に許さないよ!と。それがすべてではないが、先週、中聯弁が汚辱にまみれ、挙句は中華人民共和国の徽章まで汚された(=写真)ことで、この3点すべてが一連のデモに当てはまると、向こうさんは解釈している。「催涙弾なんて生易しい、もっと厳しくやれ」「いざとなったら、援軍に参上する」ということと、小生は受け取っている。中聯弁襲撃で「喧嘩を売った」ことへの、まず最初の中央からの答えだ。すでに市民の闘争すべき相手は、特区政府でも林鄭のおばさんでもない。ずばり中央政府に向きを変えたのだ。

そうなれば、『Bloomberg』が言う「深圳あたりでの治安部隊の動き」も「そういうことか」となってくる。ま、10月1日の国慶節までには、何らかの結末を迎えているだろう。まだ少し先の話だが…。

いささかマクラが長くなってしまったが…。

7月28日のデモの模様をちょいと。

結末から言うと、またも「無許可のデモ」から「警民衝突」に発展し、逮捕者、負傷者多数という、この2か月ほどの間に毎週繰り広げられている流れとなった。

7月7日に九龍で初のデモを成功させた本土派劉頴匡(ヴェンタス・ラウ)が、中環(Central)の遮打花園(Chater Garden)から西營盤(Sai Ying Pun)の中山紀念公園までのデモ行進を申請していたが、警察から「反対通知」を受けたため、遮打花園での「反送中集会」に予定変更。警察も「午後11時までに終了するのであれば反対しない」と、開催許可が出された。

集会の取材を受ける呼びかけ人の劉頴匡。これからも何度も登場すると思うので、再び言うけど、名前と顔は覚えておいた方がいいよ
遮打花園には「数千人」の市民が集った

但し、前回も記したが、「デモこそ大正義」という時代なので、合法だろうが違法だろうが「集まったもん勝ち」というわけで、当然のごとく、集会参加者はデモ行進を開始する。ある者は東へ向かい、銅鑼灣(Causeway Bay)を目指して歩き始め、ある者は西へ向かい、中聯弁を目指して歩き始める。なし崩し的に「無許可デモ」が始まったのである。

集会後、東西に分かれて無許可のデモ行進を開始した香港市民のみなさん

この集会が行われているころ、香港電台(RTHK)の討論番組『城市論壇』が公開生中継されていたのだが、前日、元朗(Yuen Long)で、申請していたデモに許可が出なかったことで「一人デモ」を宣言した申請者の鍾健平(マックス・チュン)も参加していた。多くの市民が賛同して元朗に集結した結果、警民衝突に発展してしまったわけだが、警察は番組終了後に、鍾健平を不法集結の罪で即逮捕した。

番組では口角泡を飛ばす討論をしていた鍾健平だったが…。まあ、しゃーないね逮捕は。「あかん!」と言われたことをやったわけだからな

さて、東西に分かれて「違法デモ」を開始してしまった市民。まず、銅鑼灣では、香港そごう前で道路の鉄柵を解体し、バリケードを作る。明らかな「公共物破損」だが、警察は特に制止せず、成り行きを見守ることに徹したようだ。

瞬く間にデモ参加の市民に「不法占拠」された香港そごう前の道路
デモ参加者は路面電車の線路上に並び、解体した鉄柵など警察と対峙する際に必要な物資を、リレー方式で西へ運ぶ。撮影した『香港01』では、この人たちが罪に問われないようにとの配慮から、顔と履物にモザイクをかけている。それほど気を遣わねばならない時代になってしまった香港が悲しい

一方、西營盤(Sai Ying Pun)の中聯弁や西区警察署を目指した者は、付近を不法占拠。ほどなく、警官隊との衝突が開始される。

警察と睨み合う「先鋭化部隊」。それにしても、毎度毎度、セブンイレブンの傘が目立つ。セブンイレブンにしたら、思わぬ「雨傘景気」だったりして(笑)

衝突の始まりと共に、銅鑼灣を占拠していた部隊は撤収し、西營盤チーム支援のために、西へと急ぐ。これにより、銅鑼灣は平常を取り戻した。

「また汚されたら大変!」と、徽章に覆いを付けて襲撃に備える中聯弁。意外にもやることが可愛らしい(笑)
「催涙弾を撃ち返せ!」と、ラケットで対応する「テニスの王子様」が出現!気は確かか?
最初は「すげぇーーー!」と思っていたが、こう毎週毎週だと、こんな場面にも驚かなくなってしまった。いけないね、こういう傾向は…
俗称「雨傘陣」で催涙弾から身を守るデモ隊最前線。そしてここにもまた、セブンイレブンの傘が! by “香港01”
この地域は、非常に古い町並みで、こうした狭い道と急な坂道が多い。そこでも容赦なく「橙旗」を掲げ、催涙弾発射の最後警告が出される。前日の元朗以上に「市街戦」の様相を呈した by “香港01”

警察は催涙弾やゴム弾などで排除行動開始。この衝突で、近隣の信徳中心(Shun Tak Centre)では、マカオや広東各地へのフェリーとヘリの発着を午後7時に停止。「浮世の憂さを忘れて、マカオでおねーちゃん遊び」を目論んでいたであろう人士の恨めしそうな顔が目に浮かぶ(笑)。ご愁傷さん。MTR港島線は西營盤、香港大學、堅尼地城(Kennedy Town)の3駅への列車運行を停止。もちろん、バスも路面電車もストップということで、西方面の交通は完全マヒ状態。住民は身動きが取れない状態に。で、仕方ないので家にこもっていたら、催涙弾連発で、催涙煙が部屋にまで入ってきて、体調不良を訴える人も続出。住宅街での催涙弾使用は考えもんだな。さりとて、デモ隊排除には今のところ、最も効果的な手段ではあるのだけど。

手押し車に載せた雑物=ゴミ、ガラクタに火をつけて、警官隊に向けて走らせるという「新技」を披露した先鋭化部隊。ってか、放火やんか、この行為は

この「火車攻撃」に加え、先日来、紹介している「ゴム鉄砲攻撃」など、様々に知恵を巡らせて警察に対抗するデモ隊の「先鋭化部隊」。この日も各メディアの現場Liveをはしごしていたのだが、警察の打つ手によって、陣容も組み替えながら、臨機応変な動きをしていることに気づいた。これは、衝突の経験を積んで自然に身に付いたと言うよりは、何者かの指揮、指導があってことと察せられる。

親中メディアは度々、若者たちの「リーダー格」数名に指示を出す欧米人男性の写真を掲載しているが、彼が何者なのかはわからない。やはり中国が言うように、アメリカが背後で動いているのだろうか? まあ、そんな「斜め」からの目線で、一連のデモを観察してみると、報道されているものとはまた違う姿が見えてくるのだが、今の香港では「黒か白か」「反対か賛成か」の二極にはっきりと分裂してしまっているので、そのほかの見解が入り込む余地は全くない。はっきり言って、「民主主義」から遠く離れた状態に陥っている。

その水ボトル、勤務先からくすねてきたのか? 空の容器に水道水を汲んだんだろうな…。とにかく煙が充満しないうちに、必死で催涙弾を消火する

デモ側は、「特区政府、行政長官、中央政府のせい」と言うし、反デモ側は「デモ隊が暴力的行為に走るから悪い」と言うし…。小生のように「逃亡犯条例改正には断固反対だが、警察の行動は(白シャツ事件以外)全面支持」というような意見は、どっちにも受け入れてもらえないし、聴く耳も持ってもらえない。だから、日本で好き勝手言ってるのがちょうどいいのかもしれないな(笑)。

ところで、あの手この手のデモ隊に比べ、警察の排除方法は手が尽きたという感じが強い。催涙弾攻撃も、この日のような人口過密地域では、多数の一般市民を巻き添えにしてしまい、さらに警察への風当たりが強くなってしまう。そこで、新兵器導入ときたもんだ。

図案は「明報」

水炮車」すなわち「ウォーターキャノン砲」の導入だ。水圧で人間をぶっ飛ばすことができるという威力。催涙スプレーの液体を放出することも可能。顔料を混ぜた液体も放出できるので、前線で警察に暴力的行為を働いた者を「色付けして」識別するのに役立つのでは、との期待も高まる。実際、水圧で転倒して頭を打って死亡するというケースも他国では発生しているようで、デモ隊排除に大いに効力を発揮しそうだ。これさえあれば、解放軍にわざわざお越しいただく必要もないだろう。ぜひ、そうあってもらいたい。解放軍もぶっ飛ばせ!

その香港警察は、29日午前3時過ぎに西營盤など上環(Sheung Wan)一帯での衝突に関して、記者会見を開いた。デモ隊による違法行為で道路標識や信号機など公共物が大規模に破壊され、至るところで放火が発生したことを厳しく譴責した。先述の「火の車」をはじめ、レンガ、ガラス瓶、腐食性液体、ゴム鉄砲での攻撃などを厳しく非難し、デモ隊が所持していた弓矢など攻撃性の武器を多数押収したと発表。事件により違法集結や攻撃性のある武器所有などで少なくとも49人を逮捕した。この日の衝突による負傷者は16人だった。

そして逮捕した49人のうち44人を暴動罪で、1名を攻撃性武器所有で起訴した。下記は『明報』による起訴された45人の「事件の背景」である。まあ、それとなく読み取ってください(笑)。49人のうち男は32人、女は17人。年齢は16~41歳。14名が学生でそのうち少なくとも5名が香港中文大学生とみられる。暴動罪による起訴は返還後で最多となった。30日夜に次々と保釈され、31日から東區法院で審理が開始された。

ちなみに小生も東區法院で法廷に立たされたことがある。罪状は、なんと、「たばこポイ捨て現行犯」だ(笑)。食物衛生管理署署員に反則切符を切られたのである(笑)。ま、長い間住んでりゃ、一度くらいは裁判にかけられもしますわな(笑)。

小生は1万円程度の罰金で済んだが、暴動罪が確定すると、おそらく懲役7~10年ほどの刑期となるだろう。10年後、2029年。彼らが刑期を終えた時、香港は返還から32年が経過し「50年不変」のタイムリミットまで残すところ、18年である。思うに、そのころの香港はすっかり「中国の一地方都市」に成り下がっているだろう。ま、中国の思う壺だわな、それこそ。

あーだこーだ言ってるが、もしまだ現地在住なら、間違いなくヘルメット被ってゴーグルして、マスクして、現場で写真撮りまくってるんだろうな…。って呑気なこと言ってるこの間、九龍各地で同時多発的に警察署を市民が包囲したり、道路を占拠したりと大混乱。もちろん、催涙弾の雨あられ状態の九龍半島である。いやはや…。



 


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