【反送中続報】逃亡犯条例改正はひとまず審議延期、されど…

審議「延期」だが「撤回」ではない

by”South China Morning Post”

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は15日午後、刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」の改正を、期限を定めず延期すると表明した。対立が深まる中での改正手続きは難しいとの判断によると言う。

林鄭長官は記者会見で「条例改正が深刻な対立を引き起こしていることに、政府としては社会の平穏を取り戻す必要がある」と述べた。さらに「あくまで延期であって撤回ではない」とし、今後は期限を設けず「人々の意見に耳を傾ける」と語った。

スマホで会見を見る香港市民。最近はみんなこうやるね(笑) by “South China Morning Post”

中国政府も15日、外交部の耿爽報道官が、「地域社会における複数の意見に広く耳を傾け、できるだけ速く社会に平静さを取り戻す試みだ」と絶賛し、「中国政府もこの決定を支持、尊重し、理解する」と述べた。このことから、何らかの指示が下ったものと推察できる。そりゃそうだろう。中央からすれば、「たかだか地方の木っ端役人」程度にしか考えていない香港の行政長官の決定を、こんなに素早く評価するはずもない。

今回の速攻の「見切り」は、月末に大阪で開催されるG20を考慮してのことだろう。それがなければ、雨傘並みに長引いていたかもしれない。

林鄭長官は、記者団からの「中央の指示の有無」に関しての質問には、従来通り「北京からの指示で動いてはいない。すべては自分の考えからだ」と回答したが、中央の介在を改めて否定したが、果たして「たかだか地方の木っ端役人」にそんな行動が許されているとは思えないなぁ…。もうこの時点で「一国両制度」なんて、終わってるのだ。

笑顔で対応する林鄭行政長官だったが、かなり胸糞悪い気分で会見していたんじゃないだろうか?同時に「なんでこんな事態になってしまったのか?」と、自らへの苛立ちもあったのでは?と…。

記者団からは辞任するのかしないのか、辞任時期はいつか、前夜の深圳における韓正副総理との会談内容は、などなど質問が飛び交ったが、あくまで辞任はしないと言う。まあ、おばさんが辞任したところで、次の行政長官も中央のお気に入り人士しかなれないわけだから、昔の野球の応援団がよく相手チームの投手交代時に言ってた「だ~れが投げてもいーっしょ」ってやつだ。

会見前夜の14日には、母親たちによる「私の子供を撃たないで」なる警察への抗議集会が開催された。ほほー、この人たちが警察を挑発し、攻撃した「90后(1990年以降生まれの子たち)」のお母さん方か…。抗議の前に、ご自分のお子さんたちへ「歩道を舗装しているブロックを外してはいけません」「火炎瓶や歩道のブロックを投げてはいけません」「鉄パイプで人を殴ってはいけません」と、しっかり教育なさるべきだと思いますがね…。

さて此度の改正。「刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする」という内容だが、実際には、「中国に都合の悪い人物が引き渡しの対象になりかねない」との懸念が広がり、それはすなわち、「司法の独立」を謳う「一国両制度」の終焉を意味するということで、市民の反発が高まって9日の103万人デモに発展したという背景がある。

まあ、こんなことはあり得ないとは思うが、たとえば「あのLeslieyoshiって日本人は、いつもブログで偉大なる中華人民共和国と中国共産党を茶化して、国家転覆を企図する重罪人だ!」ってことで、「今度あいつが香港入境したら即時身柄拘束の上、我が方に突き出してくれ」ってなったら、小生は中国公安に連行されてしまう…。ってことも(笑)。

とりあえず、次の審議再開、そして改正までは、小生も安心して香港へ帰ることができる(笑)。

まあ、それは冗談として、改正には建制派(親香港政府、親中派、財界寄り)からも懸念の声が上がっていた。特に財界からは「香港の信用度の低下につながりかねない」として、慎重を促す意見が多かったという。

なぜ40年間、それこそ英国領時代から公務員として、実直に歩んできたおばさんが、この期に及んで、そんな「悪法」に走ったのか? それはもう、ご自身がいくら否定しても「北京の指示」があったのは、疑う余地のないことだろう。でも、それを言ったら最後、それで外面だけは一応体裁を保っている「一国両制度」は崩壊してしまうからな…。ま、小生から言わせてもらえば、そんなもんは砂上の楼閣であるのは、返還前からわかっているハナシなんだけどな。

例の103万人のデモを主催した民間人權陣線(民陣)では、16日にデモ行進、17日に立法会周辺で集会を開くと発表していたが、16日のデモは挙行するも、17日の集会は取りやめと発表した。民陣では、あくまでも逃亡犯条例改正そのものの撤回、林鄭行政長官の辞任を求め、12日の抗議行動を「暴動」とした発言の撤回や、警察の催涙弾発射など「暴力的行為」に対する譴責などを掲げて、デモを行う。前週は「白い服装で」との呼びかけだったが、今回は「黒い服装で」と参加者に呼び掛けている。これでまたジョルダーノは黒いTシャツが飛ぶように売れるね(笑)。

会見する民陣メンバー。左から二人目が代表の岑子傑(ジミー・シャム)。なかなかイケメンではないか(笑)。で、なんで李卓人や長毛がいるの?

民陣が「17日の集会はやめるわ」と言ったところで、「三罷(ストライキ、授業ボイコット、商店休業)」で、立法会議場は再び包囲されるような気がする。あくまで市民が求めるのは「撤回」である以上、撤回の言を引き出すまでは闘争が続くんではないか? それまでにまた、一部の組織的暴力に訴える集団が警察と衝突する可能性も高い。まだまだ目が離せない「反送中」である。

とりあえず、今回の「しばらく延期」で林鄭行政長官は、習近平から見切られた、ってことかな…。ロイターなんかが伝えてますな、「習近平は林鄭行政長官による今回の一件の進め方に不満を抱いているようだ」と。40年間、公務員として頑張ってきたのに、無念でしょうな。公務員の頂点に立ったがために、こうなってしまって…。

で、明けて6月16日。民陣の呼びかけに応じた市民が、指示通りに黒い服を着て、再び街頭に繰り出した。送られてくる画像や映像を見る限り、1週間前の103万人を上回っているんじゃないかなと。

by “蘋果日報”

このデモについては、後日改めて考察したい。



 


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