【反送中立法会包囲】催涙弾の悪夢、再び…

雨傘以来の催涙弾
衝撃の香港!

2014年の「雨傘行動」以来の催涙弾が、香港市民に向かって撃ち込まれた。

立法会で「逃亡犯条例」の2回目の審議に入る予定になっていた6月12日、香港市民は、「三罷」で再び大反撃を試みた。前回記したように、「罷工、罷課、罷市=ストライキ、授業ボイコット、店舗休業」によって、審議の行われる立法会議場を包囲しようというもので、多くの市民が賛同し、前夜から続々と立法会議場周辺に詰め掛けていた。小生の友人たちも、前夜から立法会議場近辺で待機していた。

雨にもめげず、多くの市民が徹夜で立法会議場を包囲した
いつもなら通勤通学客である市民は、この日は立法会を包囲するためにMTR金鐘(Admiralty)駅に降り立った

大半は、この日のために仕事や学業を犠牲にして集まった市民である。こういう人たちが、理性的に立法会議場を包囲し、抗議の声を上げつつ、審議の成り行きを議会場の外から見守るという、本来の形であったならば、たとえこの前のデモのように100万人集まったとしても、警察は催涙弾を発することはなかっただろう。

約4万の市民が集まったという。繰り返すが、普通の人たちである。暴徒化したのが若者だったために、日本の報道は「集まった若者たちが…」とされているが、そうではないことは、現場の写真や映像を見れば一目瞭然だ。こうして、事実は報じる側の都合の良いようにトリミングされてゆくのだ。

さて、その「若者たち」のさらにごく一部は、朝から何をやっていたかというと…。

by “立場新聞”

せっせと歩道を舗装するレンガを取り外していたのだ。そして…

by “立場新聞”

えっちらおっちら一輪車で運んで…

by “立場新聞”

きれいに積み上げ、「投石用意完了!」である。前回、103万人デモの稿でも記したが、連中は最初から警察と衝突する気満々なのである。警察が手を出さざるを得ない状況を、自ら作っていくのである。これは断固、許せない行為である。投石だけでなく、火炎瓶なども使用し、警察を激しく挑発した。これでは、批判の相手である林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に「組織的に発動した暴動」と批判されても、反論の余地がない。

警察は連中からの仕掛けを鎮圧すべく、今回150発もの催涙弾を撃ったほか、コルク弾、布袋弾(フランジブル弾)も多発し、13日午前10時の段階で、負傷者は重体2人を含む79人にのぼっている。年齡は15~66歳と幅広く、この「集団包囲」が決して「若者」だけで行われたものでないことが、残念ながらこの数字で確認できてしまう。

そして必ず彼らはマスクで顔を隠して行動する。さらに決まって黒装束である。彼らに言いたいのは、「抗議するなら、暴力に訴えるのではなく、マスクをせず顔を見せて堂々とやれ!」という事だ。お前らの暴力行為と警察への執拗な挑発が、多数の市民を巻き添えにし、負傷者を出しているのだ。こんな連中が陣取る場所へ、安心して抗議に行けないではないか。そこに考えを巡らせないのか、はたまた、そこを理解できないというアホですか?

ま、海外メディア的には「若者が香港の将来に危機感を抱き議会を包囲するも、警察が武力で押さえつける」という画の方が、うま味があるんだろうが、それは事実のほんのわずかな部分でしかない。

こんな人生の大先輩方も、香港の将来を危惧して、多数、現場に駆けつけておられるのだ。市民を巻き添えにするような行為は、慎めと、彼らには声を大にして言いたい。

午前中には、こんなにもの市民が立法会議場近くの幹線道路を埋め尽くした by “蘋果日報”

すでに午前8時ごろから、上述の「一部の若者グループ」と警察の衝突は発生していた。最初は、放水や胡椒スプレーなどで対抗していた警察だが、デモ隊の攻撃はエスカレートする一方で、衝突が一層激化した午後3時すぎから、コルク弾、布袋弾(フランジブル弾)にレベルアップし、午後4時ごろには最初の催涙弾が発せられるに至った。

放水なんて序の口 by “蘋果日報”
胡椒スプレーも、もはやいつものことで…
ついに、催涙弾が… いやまあ、すごい迫力ですな
現場に隣接するのは人民解放軍基地。その外を催涙弾から逃れる人たちが。基地内では解放軍兵士らが、防毒マスクで催涙ガスに備えている by”蘋果日報”

衝突は深夜にまで及び、その間も間断なく催涙弾が放たれた。季節柄、天安門事件を想起させるが、よもや解放軍が制圧に乗り出したりはしないだろう。それこそ「香港の終焉」である。「逃亡犯条例」どころの話ではない。

批判の矢面に立つ林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、この日、市民に向けた3分程度のビデオメッセージを公開した。

「金鐘(Admiralty=議会場付近の地名)で発生した衝突は、社会の安寧を破壊し法律を無視した暴動行為で、いかなる文明・法治社会も容認しない」とし、「若者たちの抗議行動」を暴動と断言した。「平和的な集会でないことははっきりしており、公然と組織的に発動した暴動で、香港を愛する行為ではない」と、強く非難した。

おそろいのヘルメットが、明らかに「組織」の存在を印象付ける。この資金は一体、だれが出しているのか?若者を煽って、警察を悪者にすることが、「反送中」の抗議活動を変容させてしまうことを良しとするのか?それは「雨傘」が失敗に終わったのと同じ末路を予期させる…

小生、このおばさんの手法は決して歓迎できるものではないが、「公然と組織的に発動した暴動」というのは、納得できるな。いま、香港でこういうことを言うと、それこそ「中共の狗」「売港奴」みたいにつるし上げられるんだが、そういう香港の風潮もイヤだな。自ら発言の自由を制限しちゃ、いけません。

また、同日のTVB(無線電視)のインタビューでは、「逃亡犯条例改正」を撤回する意思はまったくないことを明言しており、相当な強い意志をもって改正に臨んでいるようだ。こうなると、一時的に中止された立法会での第二回目の審議がいつ再開されるのかが注目されるが、現時点では再開についてのアナウンスは出ていない。

一方、市民側は先日の103万人デモを主催した民間人權陣線(民陣)が、6月16日に再度のデモと、17日の立法会議場の包囲と集会を呼びかけている。民陣に言いたいのは、立法会議場での集まりについては、呼びかけ人として、きちんと現場を仕切って、今回のような衝突を起こさないようにしていただきたいということだ。

そして、参加を予定している市民各位は、「明日の香港のことも大事だが、今の自分の身の方がもっと大事だ」と申し上げておきたい。くれぐれも、ご安全に。と言っても、SNSなどで「保持冷静」と書き込んだだけで、「警察の味方なのか、お前は!糞野郎め!」なんて噛みつかれるご時世だから、怖い怖い。

今日のところは、ひとまず「速報」的に、今回の衝突を振り返ってみた。本当なら、香港へすっ飛んで行きたいところだが、なかなかそう簡単にはいきまへん…。



 


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