【上方芸能な日々 文楽】文楽若手会

鑑賞教室に続いて行われるのが、これまた恒例の「文楽若手会」。日ごろはチョイ役だったり、まだ足遣いの修行中だったり、ツレで端っこの方に坐しているような若手が、中堅の助けも借りながら、普段の本公演では遣えない大役を遣ったり、切場に相当する場を語り、奏でるという、いわば「修行の成果」を披露する場。こういう機会があるから、頑張れるというもの。また、そういう姿を応援してやろうというファンで、毎回、客席は超満員となる。
そんなわけで、「チケット争奪戦」に乗り遅れまいと、こちらも頑張るわけだが、出足遅く、床からははるか彼方の席になってしまった。これが大きく響くことに…。

取れたお席は、ここ。いやもう、参った。床の正反対。これは困ったことだ…。

万才(まんざい)

咲寿、小住、碩 錦吾、燕二郎、清允
人形:太夫-玉彦、才蔵-勘次郎
特に、どうこうというものは感じない舞台だった。よく言えば「大変よくできました」。意地悪く言えば「なんだ、こんなもんか」。まあ、この演目ではそうなってしまうよな。

絵本太功記(えほんたいこうき)

先般の「鑑賞教室」と同じ演目。今回は若手による「太十」。「鑑賞教室」よりも期待感あり。これまで、この「若手会」で、キラッとひかる演技を見せて、そこがきっかけで、グーンと力をつけていった人を何人か見てきただけに、今回もそんな若手の出現を期待しながら観たい。

「夕顔棚の段」
亘、清公
いまひとつ、ってところか。ここは3人の女性の心情をきっちり伝えてほしいところ。それによって、後の「太十」の展開が生きてくると、小生は思っている。その点でいくと、亘には「まだできる、もっとできる」と言いたい気分になった。上手いのに、もったいなさを感じた。

「尼ヶ崎の段」
前:希、友之助
後:靖、寛太郎
いやもうねえ、靖太夫がここを語るなんて、胸アツ以外の何でもないでしょ! 靖太夫もここまでになったかと思うと、滂沱の涙が…、ってのは大袈裟だが、これは国立劇場側が、遠からぬ将来、靖にはここをやるだけの実力があると、認めたということだろう。

で、靖は期待通りの熱演だった。上述の通り、いつものような床に近い席なら、もっとその熱を感じることができただろうに。そこは、自分のうっかり度合いと運の無さを嘆き悲しむしかない。この熱演で、靖には秋以降に一段階アップした場が与えられれば、いいなと思ったし、そうならなければ、「若手会」を開催する意義がないだろう。
もっとも、寛太郎が随所で方向修正をかけてたような気もするから、課題も残ったとは思う。て言うか、このコンビで売り出せるんじゃないかとも思うが、どうでしょ?

と、ここまではいいように記しておく。ここからは、期待の太夫ゆえの意地悪な見解も記しておく。こっちが本音かも(笑)。

確かに熱演だったし、拍手も多かったが、この舞台は、ツメ人形にも拍手が起きる「若手会」である。そこは大いに差し引かねばならない。靖は気合が空回りして、語りの流れを作れないままでいた。もっと言えば、もがき苦しんでいるような語りだった。声もしんどいのか? 客席後方には師匠の嶋さんの姿があったが、厳しい指導があると思われる。
寛太郎は我が道を行きすぎていた。我が道を行くのは、悪いことだとは思わないが、太夫が流れを作れないのだから、三味線が手招きくらいしてあげないと、人形も生きてこない。こちらも課題てんこ盛りである。

と、少々、意地悪も言っておく(笑)。

希と友之助も熱演だったので、このコンビでも「太十」の切を聴かせてほしいと思う。ただ、来年は他の演目にして(笑)。

人形では、「鑑賞教室」で「子供役のイメージが…」と記した蓑太郎が、ここでは真柴久吉をダイナミックに遣う。玉勢の光秀ともども、きびきびとして、いい感じだった。

傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)

半袖の季節に、真冬の舞台とは、一体どういう了見なんだ? と、本公演なら文句を言うところだが、若手の研鑚の発表のための会なので、そんなことは言わぬ(笑)。

口:碩、清允
前:小住、清丈
後:芳穂、清馗
ここはやっぱり芳穂が秀逸。心地よい語りながら、父子の絆や、この先の梅川、忠兵衛の行きつくところをしっかりと感じさせる語り。「もうアナタは若手会を卒業しなさい」って言いたいくらいのレベルに達していた。ああ、あくまでも小生如きの感想だから、あまりアテにしないでちょうだいね(笑)。
この日の公演をしめくくるにふさわしい語りで、万雷の拍手だった。
ただねぇ。繰り返すけど、床に近い席ならもっと感動は大きかったのになぁと思う。ホンマ、前売りはさっさと買うに限るな。反省、反省。

人形では、梅川の紋秀、忠兵衛の玉翔、孫右衛門の文哉の3人は、さすがに抜かりなく遣っていた。お楽しみは、村人が次々通りゆくシーンで、日ごろの舞台では顔を見ることのない若手が一瞬ながら、顔出しで出てくること。「ほう、清之助と和登ってこういう顔してるのか」だの「蓑悠は一輔とあんまり似てないなw」などと思いながら、観察するのだ。それぞれの間隔が不揃いなのは、気になって仕方なかったが…。

さて、次は夏休み公演やな。松竹座の七月大歌舞伎、近鉄アート館のあべの歌舞伎、文楽劇場の素浄瑠璃の会上方歌舞伎会、そして「鷹の祭典 in Osaka」と、忙しくも楽しい季節になる。
夏本番、もうすぐそこまで…。

(平成30年6月23日 日本橋国立文楽劇場)


 


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