【睇戲】『スキップ・トレース』(港題=絕地逃亡)

『スキップ・トレース』
(港題=絕地逃亡)

映画館で、成龍(ジャッキー・チェン)の最新作を観るなんて、何年振りやろ?
別に避けていたわけではないけど、「そのうちCSかBSでやるでしょ?」という思いから、どうしても後回しになってしまうのが実情。今回も、たまたま難波の東宝シネマの前を通ったら、ジャッキーの顔が見えたので、「ほな、観ておこか」ってことになった次第。もし、あの日に難波に行かなかったら、多分観てないでしょう(笑)。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

57936b014e223港題 『絕地逃亡』
英題 『Skiptrace
邦題 『スキップ・トレース』
製作年 2016年
製作地 香港、中国、米国
言語 標準中国語、英語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):レニー・ハーリン

領銜主演(主演):成龍(ジャッキー・チェン)、ジョニー・ノックスビル、范冰冰(ファン・ビンビン)
演出(出演):曾志偉(エリック・ツァン)、王敏德(マイケル・ウォン)、趙文瑄(ウィンストン・チャオ)、イヴ・トーレス、郭品超(ディラン・クォ)、施詩(シー・シー)、呉耀漢(リチャード・ン)

監督のレニー・ハーリンはフィンランド人。『エルム街の悪夢4』、『ダイ・ハード2』、『クリフハンガー』など、ヒット作も多いが、ダメな作品がそれ以上に多いというお方らしい。そこで新天地を中国に求め、今作に至る。現在はオフィスを北京に置き、どっぷり中国生活。今後、大資金源・中国でどれだけヒット作を生み出して行けるか、ちょっと注目しておきたい。

さて映画。最初の捕り物の場面は、「香港のベニス」という、本家が聞いたら怒りそうな別名が付いている、古き香港を今に伝える大澳(Tai O)。独特の水上家屋「棚屋」が並び、観光客に人気の村である。この「棚屋」が次々と将棋倒しになってゆくシーンは圧巻だが、あの跡地というか「跡海」はどうなってしまったのか?興味津々ではある…。

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大澳の棚屋。ベニスに見えるかどうかは、あくまで「個人の意見」(笑)

【甘口評】「安定と安心」の路線。古い表現ではあるが「ご家族そろってお楽しみいただけます」という見本のような作品。アクションシーンは豊富だが、いわゆる「バイオレンス」ではなく、あくまで成龍(ジャッキー・チェン)の功夫を基本とした「アクション」を見せるという点で、何十年も貫かれた伝統芸能の境地にある。善悪も非常にわかりやすい。

御年63歳のジャッキー、さすがにキレは衰えた感が否めないが、スタントマンを使わず、満身創痍で撮影に臨む姿勢がうれしい。その主役のジャッキーの相棒役の、ョニー・ノックスビルが、イキもぴったりで役柄にもうまくはまっていた。そこにジャッキー作品の「安定と安心」を感じる。
范冰冰(ファン・ビンビン)のマカオのカジノの女性フロアマネジャー役も似合っていた。

基本的には、冒険物語であり、ロシア、内蒙古自治区、ゴビ砂漠、貴州省、広西チュワン族自治区と香港以外の撮影ロケ地が多く、各地の大自然や人、風俗なども美しく迫力ある映像となっている。往年の「福星」シリーズで、ジャッキーと共演してきた曾志偉(エリック・ツァン)と呉耀漢(リチャード・ン)が顔をそろえているのも、香港映画マニアにはうれしい。

【辛口評】「ジャッキーだったら何をやっても許されるのか!」と、固いことは言わないが、あまりにも簡単に国境を乗り越えすぎて、苦笑する。中国公安も舐められたもんである(笑)。事程左様に、いくつかの唐突な展開があって、それこそが「安定と安心の成龍」と言えばそれもそうなんだが、マンネリ感満載ということの裏返しでもあり、その辺の妥協点をどこに置くかで、色々苦心してるんやろなってのが、見え隠れする。ジャッキー好きは、その点は清濁飲み込んでというところだろうが、小生のように斜に構える人間には「う~ん」の連続でもあった。施詩(シー・シー)の出番や活躍がもっとあってもよかったのにと思うし、王敏德(マイケル・ウォン)がイイ人、実は悪い奴っていう設定が、最初の出から見え見えだったのにも苦笑。

エンドロールに合わせてのNG集は健在。これを観たら、作中の疑問や不審点、スッキリしない事など、すべて「無かったこと」に思えてしまうから不思議だ。ある意味、卑怯だね(笑)。

久々に映画館でジャッキーを観たわけだが、小生的には、この人の映画は、自宅でくつろぎながら観るのがいいなぁと思った。そういう意味では、まさに「ご家族そろってお楽しみいただけます」というわけだな(笑)。パンフの豪華さが、他の追随を許さないってのも、ジャッキー映画だからこそやな。

(平成29年9月7日 東宝シネマズなんば別館)



 


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