【睇戲】『おじいちゃんはデブゴン』(港題=特工爺爺、中題=我的特工爺爺)

『おじいちゃんはデブゴン』
(港題=特工爺爺、中題=我的特工爺爺)

「香港インディペンデント映画祭」の合間に、デブゴン主演の娯楽作品を観て、梅雨の合間を謳歌したい(笑)ってわけでもないが、インディペンデントの重い作品群が続く中で、こうしたまっすぐな商業映画、香港映画本来の魅力と言える娯楽作品を観るのは、決して息抜きのためではない。そこから昨今の商業作品の、娯楽作品のいろんな特徴、主演の洪金寶(サモ・ハン)の魅力などがより鮮明に見えてくるのだ。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

poster_1455198612港題 『特工爺爺』
中題 『我的特工爺爺』

英題(香港)『THE BODYGUARD』(大陸)『My Beloved Bodyguard』
邦題 『おじいちゃんはデブゴン』
製作年 2016年
製作地 香港、中国合作
言語 広東語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督)、動作設計(アクション監督):洪金寶(サモ・ハン)

領銜主演(主演):洪金寶(サモ・ハン)、朱雨辰(チュー・ユーチェン)、李勤勤(リー・チンチン)
特別演出(特別出演):劉德華(アンディ・ラウ)
主演(出演):馮嘉怡(フォン・ジャーイー)、陳沛妍(ジャクリーン・チャン)
七小福世紀再聚(七小福21世紀再集結出演):元彪(ユン・ピョウ)、元秋(ユン・チウ)、元華(ユン・ワー)、元庭(呉明才=ウ・ミンサイ)、元寶(ユン・ボー)
客串(ゲスト):胡軍(フー・ジュン)、馮紹峰(ウィリアム・フォン)、彭于晏(エディ・ポン)、宋佳(ソン・ジャー)、徐克(ツイ・ハーク)、麥嘉(カール・マッカ)、石天(ディーン・セキ)

とにかく豪華すぎるゲスト出演。特に「七小福」の面々がこんだけ揃うのは、さすが兄貴分である洪金寶の鶴の一声。インタビューでも「電話一本で、もちろんノーギャラ(笑)」と洪金寶。

香港映画史にその名が燦然と輝く徐克(ツイ・ハーク)、麥嘉(カール・マッカ)、石天(ディーン・セキ)の3人が、洪金寶と同じく老人役で出演。歳月の流れを感じざるをえない…。

プロデューサーにも名を連ねている劉德華(アンディ・ラウ)が特別出演ってのは、まあよくあることだが、とにかくこのメンツは何度見ても「壮観」の一言。

もっとも、彭于晏(エディ・ポン)なんぞは、ほんのチョイ役だったけど。ま、この辺は近日公開の『危城(日=コール・オブ・ヒーローズ-武勇伝-』に向けての顔見せってところか。

【甘口評】洪金寶、20年ぶりの監督作品。日本公開に向けた宣伝にも力が入っており、前宣伝で来日した折には、精力的にメディアの取材に対応していた。

1952年生まれ、今年で65歳になる洪金寶だが、「さすが!」と大向こうをうならせるアクション技の連続で、若き日の「動けるデブ」から「動けるデブ老人」へと変貌を遂げている。さすがに昔のように飛んだり跳ねたりは無理なようだが、見せ場と言うものを熟知したアクションを余すところなく披露していた。

アクションだけでなく、大事にしていた孫を見失い、行方不明のままという「過ち」を背負いながら、孤独に生きる退役軍人という役どころも、年齢を重ねたればこその味が出ていた。この孤独な退役軍人に気を遣いながら、恋心もちらつかせる大家を演じる李勤勤(リー・チンチン)、隣家の少女役の陳沛妍(ジャクリーン・チャン)も好演。

【辛口ってわけじゃないけど…】もはや大陸マーケット抜きでは考えられなくなった、香港の商業映画。今作も、カテゴリーとしては「香港映画」なのに、作品の舞台は中露国境近くの黒竜江省は綏鎮が舞台。なのに言語が広東語という、得も言えぬ違和感(大陸上映では北京語なんだろうけど)。

最近の香港映画は、ほとんどこんな感じだ。出演者には大陸の役者も多く、彼らの会話は広東語の吹き替えとなっていて、どうしても口の動きと声が一致しなくて「日本語字幕付きの広東語吹き替え大陸映画」を観ているようなことになってしまう。矛盾だらけなのである。

今後、この「中・港合作」はますます増えていくだろう。香港で資金が集まらない以上は、スポンサーを大陸に求め、マーケットもスポンサーニーズに応えて大陸に主軸を置くしかないだろう。残念な話だが現状は極めて厳しい。「香港インディペンデント映画祭」の合間に観たからこそ、余計にそう思うのかもしれないが…。

作品自体では、どうも洪金寶のアクションが「手首ひねり」一辺倒だったように見えたが、これはインタビューで「ボディーガードとしての戦い方を意識した」「相手の骨を折り、砕くことが必要」と語っており、その言をもって納得するようにしたい…。う~ん…。

で、せっかくジャッキー以外の七小福が揃ったんだから、それぞれがほんの少しだけでもいいから、アクションシーンにからんでほしかったなぁ。特に元彪(ユン・ピョウ)なんかは、洪金寶並みの動き、できるだろうに…。

甘口、辛口関係なく観れば、とにもかくにも「やっぱ、香港映画はこうでなきゃ!」と、香港映画=功夫アクション で育った世代の小生は、思うのであった。

[TRAILER] 特工爺爺 THE BODYGUARD

(平成29年6月7日 シネマート心斎橋)



 


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