落語
吉朝学習塾 十三回忌やっちゅうねん(3日目)
いまだ多くのエピソードが語られ、それを聞いている分には「ははは!吉朝おもろい!」って感じで、まだピンピン生きているような錯覚を覚えるほどでござりまして。弟子っ子たちはネタに入る前のマクラで鮮やかな、色あせることのない思い出話を聞かせてくれるのだが、こうして文字にしてあらためて「十三回忌」と打ち出されると、ホンマにねぇ、なんちゅうかねぇ…。
ま、感傷に浸っていてもしゃあないので、なんか吉朝師があっちで大いに喜んでいそうな会が3日連続でありますよという宣伝なので、その最終日に行ってきた。全部行きたかったけど、小生には小生の事情もありますので…(笑)。
<ネタ帳>
『おごろもち盗人』 桂あさ吉
『遊山船』 桂吉の丞
『化物使い』 桂吉坊
中入り
『鯉盗人』 桂しん吉
『蛸芝居』 桂よね吉
三日間続き読み!
リレー落語『地獄八景亡者戯』 あさ吉→佐ん吉→吉の丞
芸回し
しん吉:茶瓶笛 吉坊:寄席囃子で日舞 あさ吉・吉弥・よね吉:トリオ漫才
「口上」 全員
前座に筆頭弟子だが、この一門の心強いのは、誰もが前座ができて誰もがトリをやれるということ。実力の裏返しである。もちろん、下座の鳴物も全員がきちんと心得ていて、キッカケをしくじるなんてことはまずない。だからあさ吉が羽織を着ずに前座に出てきても、全く不思議ではないし、ビシッと開口一番決めてくれるのである。さすが一門の長男!(と、長男の小生は惚れ惚れするのであったw)
吉の丞愚痴りまくる、のマクラに客席大爆笑。今回の会は吉の丞プロデュースとかで、宣伝用チラシ、当日配布のプログラムの体裁なんぞも彼が考案したのやそうで、「よう出来てるでしょ!」(笑)。愚痴、ボヤキの4割、いや半分はよね吉の時間感覚に対してのものだった(笑)。さて「遊山船」、なかなかに活気あふれる高座で、これはうまいことマクラで緩みっぱなしだったお客の頬をそのまんまの状態で最後まで持っていったなと。上々出来。
吉坊の「化物使い」を聴くのは多分、初めてだったと思うけど、これがなんかしらん「デジャヴ感」を感じるのは、恐らくこれは紛れもなく「吉朝の『化物使い』」だったからじゃないだろうか? じゃあお前は吉朝の「化物使い」は聴いたことあんのか? と問われると、こりゃもうすっかり失念したとしか言いようがない。なんせ十三回忌なもんで…。とにもかくにも、きっちり中トリを決めてくれる吉坊はさすがである。
前座であさ吉が盗人話をするなんて想定外だったと言うしん吉。まあでも被ってもええかと、珍品と言うべき「鯉盗人」で。もちろん初めて聴くネタ。きれいでわかりやすいオチ。そしてコンパクトなネタ。こうしてトリのよね吉へ「時間厳守」のプレッシャーをどんどんと仕掛けてゆくのである。前座のあさ吉から始まるこのへんのバトンの渡し方も、息の合った一門会ならではで、楽しい。
「時間厳守」のプレッシャーがかかるよね吉は「蛸芝居」で。芝居話、とりわけこの「蛸芝居」は、演者がどれだけ歌舞伎が好きで、どれだけ気分よさそうに高座を務めているかを披露するネタで、客に「えらい楽しそうにやってはるわ~」って思ってもらわねばならない。ハナシ自体はまったくおもろないんだから…。その点、この日のよね吉は実に気分爽快にやっていた。あとで「地獄~」前のMCで出てきた吉弥と吉の丞が「気持ちよさそうにやってたな~」って言うほどだから、よね吉自身も気持ちよかったのだろう。「蛸芝居」はそうでなけりゃいけないって見本のような。
3日間の最大のウリはこれ。リレー式であの大ネタ「地獄八景亡者戯」をやるという。これを見ると、やっぱり3日間行っておくべきやったとかなり後悔。でもまあ終わってしまったもんはしゃあないので気を取り直して聴こう。
ネタ部分はあさ吉→佐ん吉→吉の丞のリレーで。人呑鬼パートの吉の丞がけっこう長い。と言うのも、そのパートで「芸回し」があって、一芸披露コーナーが組まれているという趣向。しん吉の「茶瓶笛」は急須で音楽を奏でるって出し物。「お~いっ!」ってところで(笑)。お次の吉坊は吉坊らしく「寄席囃子で日舞」。しゅっとこなす。三題噺でネタを客席から頂戴したあさ吉、吉弥、よね吉の「トップ3」によるトリオ漫才は、かなり無理からだったけど、その無理加減がかえってウケる。
そして吉の丞がいよいよオチに向けて話すうちに、舞台、客席暗転…。「ひょ?」って思っていたら、いつの間にか闇から聞こえる声が吉朝師に…。胸に迫るものを感じる。なんちゅう計らいや…。噺、上手い具合に落ちたところで緞帳上がると、7人が並んでいる。中央のあさ吉くんが代表で3日間満員御礼のお礼と「これからも一門をよろしく」の旨、口上でチョンとなって御開きに。フィナーレは実に感動的だった。こうされると、これからもこの7人を応援していかねば!って思いがますます強まる。ホンマええ会やった。3日目だけでも十分おなか一杯、胸一杯、ついでにお客も一杯、存分に楽しませてもらえた。よかったよかった。
なお、こういう企画ものの会ではなく、本式の(笑)追善興行は、秋に東名阪で開催されることが決まっている。おう!もちろん行くでぇ!
(平成29年6月3日 天満天神繁昌亭)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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