【睇戲】『女士の仇討』(港題=女士復仇) <世界プレミア上映>

第12回大阪アジアン映画祭
Special Focus on Hong Kong 2017

『女士の仇討』(港題=女士復仇)

さて。この『女士の仇討』にて、小生の今年のアジアン映画祭は終了。授賞式もクロージングフィルムも見ないのか?と聞かれるかもしれないが、もうそこまで気力は残っていない(笑)。そんなに若くはないのよ…。
昨年、『荒らし(DVD名:クレイジー・ナイン)』で大いに楽しませてくれた火火(ファイアー・リー)監督が今年も最新作を引っ提げて来阪してくれた。昨年開局したテレビ局「ViuTV」で最近はその姿を見かけることも多い。今回の作品も、そのタイトルからして大いに期待ができそう。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

港題 『女士復仇』
英題 『HUSBAND KILLERS』
邦題 『女士の仇討』
現地公開年 2017年夏予定
製作地 香港
言語 広東語
評価 ★★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):火火(ファイアー・リー)

領銜主演主演):鄧麗欣(ステフィー・タン)、周秀娜(クリッシー・チャウ)、樂基兒(ゲイリー・ロック)
主演出演):何傲兒(リリー・ホー)、 孫佳君(エイリアン・サン)

いや~もう~、最高におもろい作品を最後の最後に観られて、なんと幸せなことでありましょう! 今年も魅せてくれましたね~、火火監督。アナタ最高!

文句なしの娯楽映画の王道、これこそ香港映画!って作品だった。こういう映画が、大陸での撮影でなく、香港「本土」で撮られているうちは、まだまだ香港映画も大丈夫、って安心してしまうような作品。そりゃまあ『一念無明』も『29+1』も『77回、彼氏をゆるす』も『姉妹関係』も『七月と安生』もいいんだけど、やっぱり香港映画はこうでなけりゃ、みたいなことを2年連続でぶっつけてきてくれて嬉しいったらありゃしない。

色っぽい女優の共演。なのにバイオレンスそしてアクション。ボンテージファッションがエロスの匂いプンプン。監督曰く、「鄧麗欣(ステフィー・タン)と周秀娜(クリッシー・チャウ)は、以前からこのように過激な作品に出演したいと思っていた」らしく、鄧麗欣なんぞは撮影中に「私、クレージーになっている?」と、楽しみながら演じていたと言う。彼女らのノリノリぶりが、スクリーン一杯から強烈に伝わってきて、それがこの映画を面白くしてる最大の要因だと思った次第。

火火監督は、「頭の中にあるキャラクターを出すような映画を撮ったら、お客さんもクレージーな方がいいって喜んでくれた。今や、私は香港映画界の変態です!」と笑う。そうそう、前作『荒らし』もそうだったけど、この作品もその変態ぶりが大いに発揮されていて、素晴らしい限り。

子供の頃からヤンチャ坊主だったという火火監督。大人になり、「映画の中で余計にヤンチャをしていいかなと思うようになった」。どんどんお願いします!

「アクションは、2、3か月前から訓練に入った」と言う。アクションの稽古と言うよりも、「とにかく怪我をしないための訓練だった」とのこと。「周秀娜はアクション経験者だが、他の2人は初めてだったため、早くからの訓練が必要だった」。

わずか17日の撮影期間。3人ともスタントは使いたくないと言い、自らアクション場面を演じた。そのため「怪我で撮影がストップしてはいけないから、訓練には力を入れた」ととのこと。プロレスや相撲など格闘競技の稽古と同じだな、この発想は。なるほどなるほど…。

物語は、一人の男が3人の女を愛し、その末に捨ててしまったという事態に、「黙ってられない!絶対復讐してやる!」と、「復讐の鬼」に変じた彼女らの素顔が実は「女ヒットマン」という設定。大がかりなアクションシーンがめまぐるしく展開するのは、沙田(Sha Tin)の燒乳鴿(鳩ロースト)で有名な「龍華酒店(Lung Wah Hotel)」。映画では、うらぶれた連れ込み宿のような設定だったが、ここ、実際には行ったことないんで、実態がよくわからない。そこでサイン会の時に監督に直接尋ねてみた。

「龍華酒店って、今、あんな感じなんですか?」
「係呀~、係呀~!(そう、そう!)」
「眞係!?(まじっすか!?)」
「映画で客室のシーンがあったけど、あの部屋も全部現地で撮影したんですよ!」
「嘩~(うわぁ~)」

ここで、「お次の方に…」とか係の人に言われて小生の質問時間タイムアップ。本当に聞きたかったのは、あんな連れ込み宿と化しているのか?ということだったんだが…。ま、次回、香港に里帰りした時に我が目で確かめて来よう。鳩は生きていても死んでいても大嫌いなので食べませんから、見るだけ~(笑)。

龍華酒店のフェイスブックに、映画撮影に使われたよ!と、撮影を報じる週刊誌の記事の写真があった。女性陣、このファッションでアクション全開なのだ!

龍華酒店で復讐を図るも、3人を捨てた男に依頼された、孫佳君(エイリアン・サン)演じる別の「女ヒットマン」と息子2人が主役3人の女性たちを苦しめる。まあ、この孫佳君が色っぽいのなんのって、アナタ!これこそが熟女の色気ってもんだ。これはいいもの見せてもらったと心中密かに「フフフッ…」とほくそ笑んでいた小生だが、きっと表情に出ていたと思う(笑)。

最後は見事な二段オチ。標的にされた男は…。これがまったく顔が明かされない仕組みになっていて、その隠し方が非常に面白い手法だと思った。エンドロールに目を凝らしたが、それらしき名前は確認できず。思うに、この役は監督自ら演じたんじゃないかと…。あくまで想像の域の話だが…。

大阪での世界初上映にあわせ、急遽日本語タイトルのポスターを持参してくれた火火監督。香港の配給会社がつけた邦題が『女たちの復讐』。実行委員会が付けた邦題が『女士の仇討』。「どっちがいいかは皆さんで決めてくれ」とのことだが、もっともっと過激でエロチックなタイトルがいいかな(笑)。

「観た後に女性がスッキリして、家に帰って旦那に優しくなってくれればと思い、女性がヒーローという映画を撮った」と言う火火監督。今回、香港映画は女性が主役の映画が席巻したが、他作品とまったく色合いが違う、いや、違いすぎる女性主役のこの作品が、小生的には群を抜いていた。

いや~、最後に超おもろい映画を見せてもらえて、余は満足じゃ~!
この傑作を、現地香港よりも数か月も早く観られたというこの優越感!!

《女士復仇 Husband Killers》預告

(平成29年3月12日 ABCホール)


今年の大阪アジアン映画祭、個人的に賞を選考すると…。
最優秀作品賞—–『一念無明』
最優秀監督賞—–黄進(『一念無明』)
最優秀脚本賞—–陳楚珩(『一念無明』)
最優秀主演男優賞—–方偉傑(『敗け犬の大いなる煩悩』)
最優秀主演女優賞—–鄧麗欣、周秀娜、樂基兒(『女士の仇討』)
最優秀助演男優賞—–蔡瀚億(『29+1』)
最優秀助演女優賞—–金燕玲(『一念無明』)、鄭欣宜(『29+1』)
新進監督賞—–黃胤毓(『海の彼方』)
最優秀映画音楽賞(作品)—–『突然20歳 タイの怪しい彼女』、『敗け犬の大いなる煩悩』
最優秀映画音楽賞(楽曲)—–『Do Mi沒有Sol』(『52Hz, I LOVE YOU』)
あくまでも自分の観た分で、ってことだけど。『突然20歳 タイの怪しい彼女』以外は、見事に華語片(笑)。しゃあないわな(笑)。



 


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