【場所総括】平成29年三月場所

IMG_5004

大相撲
平成二十九年三月場所総括

たま~にやってる「場所総括」です(笑)。
久々に、相撲場へ出向いたので、その日のことを中心に。

稀勢の里土俵入り (1 - 1)

まずは、稀勢の里には謝らなあかんね。

三役以前から、彼には辛辣なコメントばかりしていたからな、俺。

大関昇進後も、「ま、彼はこれが天井でしょう」とか「優勝を期待させながら終盤に格下に連敗とは、横綱になる器やないね」とか「彼には白鵬の連勝記録を止めた稀代の名大関として、末永く人々の記憶に残る道を歩んでほしい」などなど。

豪栄道に対しても厳しいコメントを残してきたが、どうしても大阪出身力士という「身内への甘さ」もあって、ここまでのものじゃなかった。

稀勢の里に対しては、期待の裏返しなんてものではなく、ほとんど言葉のリンチみたいなもんだった。それは何も小生に限らず、多くの相撲ファンが同じような気持ちを抱いていたんじゃないかと推察。挙句には、「モンゴル勢が横綱を独占しているのは、稀勢の里のせい」みたいな言われ方してたりもねえ。

その稀勢の里がようやく綱取りを達成し、最初の場所であの感動の優勝とは…。よく耐えてきたもんだと思う。先代の鳴門親方(元横綱隆の里)が「おしん横綱」として忍耐の人だったことを思うと、よくそのDNAを継承して頑張ってきたなと思う。


一方で、三月場所は白鵬、豪栄道が休場、日馬富士、鶴竜も横綱としては恥ずかしい成績に終わったことも優勝への追い風となったかと思う。四横綱が万全で、大関陣もふさわしい活躍をする場所で初めて、稀勢の里の横綱としての真価が問われることになる。

さて、小生が場所を見物したのは、9日目の3月20日。升席は4人用だし、さりとて土俵際溜り席なんて買うような大金持ちじゃないし…。てなわけで、椅子席のまあまあいいところを茶屋経由で購入した。相撲茶屋で購入すれば、たとえ椅子席でも、席まで案内してくれるし、お弁当におつまみ、ビール、お酒、ジュースにお茶、さらには素敵なお土産物までついてくる。「P」で買うと、たしか1000円ちょっと安くなるけど、こうしたサービスが一切ない。「ほな、相撲協会は一体、それぞれになんぼで卸してはるの?」って話だが、ま、そこはあえて詮索せず、気分を味わいましょう、相撲見物の気分を。

IMG_5007

その「まあまあいいところ」からはこんな眺め。まだ11時前だとお客さんもほとんど入ってない。この席、ラッキーなことに東二階椅子席最前列でど真ん中。東方力士のおいどしか見えないけど(笑)、西方力士の表情はばっちりわかる。

三段目の取組を五番残したところで、新序二番出世披露が行われた。朝日山親方(元関脇琴錦)の長男松沢ら新序二番出世力士37人が、部屋の親方や先輩の化粧まわしをつけて、次々と土俵に上がる様は初々しくもあり、頼りなくもあり(笑)。「こんな細っちょい子、大丈夫なんかいな」って子も多いのだが、彼らは、5月場所から序ノ口として番付に名前が載る。

新序二番出世 (1 - 1)

幕下までは仕切り回数も少ないのでトントンと取組が進んでゆく。そうした中、我が地元、大阪市は田辺出身の出羽鳳の出番となる。西幕下45枚目で残念ながら三月場所は7戦全敗。すでに31歳。初土俵から2年で十両にも昇進し、期待は高まったが、それがピークだったか。ここ数年は病気との闘いの日々。ただ、彼には1日も長く土俵に上がっていてほしい。

出羽鳳 (1 - 1)

出羽鳳2 (1 - 1)
相手の彩の湖(右)にもろ差しになられ、顎が上がってしまい苦しい体勢の出羽鳳
出羽鳳3 (1 - 1)
最後は力尽き、土俵に這いつくばるように敗れた出羽鳳。あああ、残念無念!

目が行くのは土俵上の力士ばかりじゃない。土俵下から勝負を見つめる審判員の親方衆もなかなかタレント揃いである。新序二番出征披露直後から十両土俵入りまでの審判員は、正面審判長が振分(高見盛)、行司溜赤房下に錣山(寺尾)、西方に浅香山(魁皇)などかつての人気力士が居並ぶ。

寺尾 (1 - 1)
角界一のイケメン親方、錣山
魁皇 (1 - 1)
こちら、魁皇の浅香山。まだまだ立派な体格
高見盛 (1 - 1)
振分審判ってよりも、やっぱり高見盛(笑)

よりによって(笑)、振分が正面審判長のときに「物言い」の一番が。例によってマイクを取って「ただいまの協議についてご説明申し上げます」と始めた振分。最初は「お、ちゃんとしゃべってるやん」と思いきや、次第に怪しくなっていき、最後は何が何だか聞き取れない状況に(笑)。両力士が再び土俵に上がったので「あ、取り直しか」と状況理解した次第。もうキミのときは、「ただいまの協議の結果、取り直しと決定しました!」のコールだけでいいよ(笑)。

そうこうしている内に、十両土俵入りが始まった。しかし十両土俵入りでまだ客席は半分も埋まっていない。チケットは早々に完売しているのに。小学生の時から相撲場に来ているけど、ずっと不思議に思っているのが、幕内土俵入り(3時45分ごろ)から来る人が圧倒的に多いこと。升席なんて数万円もするのに、たった2時間15分しか見物しないなんて、あまりにも勿体ないじゃないかということ。別に小学生時代の小生のように一番相撲から見ろとは言わないけど、三段目くらいから見物しないとモトが取れないじゃないかと思うのは、やっぱり貧乏人の考えなのかな…。

十両土俵入り (1 - 1)

土俵入りの後、幕下上位五番の取組があるが、ここらあたりの番付になると、「懐かしい」顔ぶれが出てくる。豊ノ島などはその最たる力士だろう。常に三役を張り、土俵際のエビ反りで驚異の粘り腰を見せる取り口が懐かしい。いやいや、懐かしいなんて言うと本人に失礼だ。アキレス腱断裂という力士生命にかかわる大けがを克服し、番付こそ幕下二枚目にまで落ちたものの、十両復帰、さらにその先の帰り入幕も見据えている。とは言え、三月場所は1勝5敗1休と大きく負け越してしまった。来場所の奮起に期待したい。

豊ノ島 (1 - 1)
待ってるぜ、豊ノ島!

十両の取組が始まると、さらに幕内経験者が増える。北磻磨、里山、北太樹、青狼、富士東、安美錦、旭日松、大砂嵐、豊響、千代丸、臥牙丸、誉富士、千代大龍…。小生が幕内にいたよな?って思うだけでこの数。昔からこうだったっけ?十両は。いや、違うよな…。この現象はおそらく、幕内で世代交代が激化しているってことを表しているのかも。そして、その幕内土俵入りが始まった。

東方幕内土俵入り (1 - 1)

奇数日(9日目)なので東方から土俵入り。今場所10勝すれば一場所で大関復帰の琴奨菊の後ろ姿も見える。

西方幕内土俵入り (1 - 1)

続いて西方。この時点で優勝争いのまっただ中だった関脇高安と大関照ノ富士も見える。

鶴竜土俵入り (1 - 1)

日馬富士土俵入り (1 - 1)

鶴竜(10勝5敗)に日馬富士(10勝5敗)。がっかりだ。この二人の横綱が最低でも13勝上げておれば、優勝争いはもっともっと混沌としたものになり、稀勢の里の感動劇もなかったかもしれない。ま、それにつけても稀勢の里は責任を全うしたな。横綱はこうあるべきって姿が非常に頼もしい。けがはきっちり治してほしい。致命傷になっていないことを祈る。

稀勢の里土俵入り3 (1 - 1)

満員御礼 (1 - 1)
いつの間にか「満員御礼」の幕が。全日程完売の大盛況だった

今回、注目力士は当初は豪栄道だった。昨年九月場所の全勝優勝の勢いを維持していれば、もしかしてご当地場所で新横綱・豪栄道を見ることができるんじゃないか? そんな期待もあって早くからチケットを押さえていたんだが、新横綱の夢は先に稀勢の里が実現させてしまった。ま、それはそれで嬉しい誤算でもあるんだけど。あともう一人、「白鵬では客を呼べない」なんて言っていた時期もあったが、やっぱり第一人者が圧倒的に強くないと、場所が締まらないってこともあって、白鵬がどこまで強さを発揮するのかにも注目していたんだが、ここのところあまり調子は芳しくないようで、三月場所は早々に休場してしまった。

となると、先に十両のところで記したように世代交代がどこまで進んでいるのか、ってところに注目せざるを得ない。

東16枚目錦木26歳(5勝10敗)、東13枚目貴景勝20歳(11勝4敗・敢闘賞)、西13枚目大翔丸26歳(7勝8敗)、西12枚目宇良27歳(8勝7敗)東11枚目大栄翔(11勝4敗)、西11枚目石浦27歳(7勝8敗)、西5枚目北勝富士24歳(7勝8敗)、西2枚目貴ノ岩27歳(6勝9敗)、東小結御嶽海24歳(9勝6敗)、西小結正代26歳(4勝11敗)…。このあたりの相撲は観ていて楽しいし、たとえ大きく負け越しても「来場所がんばれ!」と応援したくなる。

優勝という人参が目の前にぶらさがっていたがためか、立ち会いに変化して一身にブーイングを浴びる大関よりも、遥かに良い。照ノ富士もうかうしてると、あっという間にこのへんに追いつかれてしまうよ。小生はそういう時代の到来を待っている一人やけどね。

宇良 (1 - 1)
関学相撲部から初めてプロ力士になった宇良。表情がいいし、小兵ながら相撲っぷりもいい。お気に入りの力士である
石浦 (1 - 1)
長年、白鵬の付き人を務めた石浦。十両昇進の時、白鵬が我が事のように喜んでいたのを思い出す。この力士も実にいい面構えである
遠藤 (1 - 1)
幕内前半戦最後の取組は遠藤-隠岐の海。永谷園の懸賞が3本(笑)。柔軟な遠藤らしい取り口で隠岐の海を寄り切る。腰の高さ、こんだけ違う!
流血 (1 - 1)
北勝富士と貴ノ岩の一戦は見ごたえあった。勝った北勝富士がご覧の大流血!

高安 (1 - 1)兄弟子・稀勢の里の横綱昇進後最初の場所、そして自分の大関獲りの大事な場所ということで今場所も奮闘した高安。終盤、やや息切れしたが、12勝3敗、殊勲賞は堂々たるもの。今年の早いうちに、新大関誕生のニュースが聞けそうな、昨今の成績。

栃東 (1 - 1)
お、ラジオ放送席には、元大関栃東の玉ノ井が。テレビの解説と違い、協会のジャンパーでリラックスムード。実況は藤井アナの模様

注目の取組が続く。勢-照ノ富士。この日勝てば、勝ち越しでカド番脱出、1敗堅持という大事な一戦。まあ、この場所の勢の調子から見て、余裕で勝てるだろう。

照、勢 (1 - 1)
あっさり土俵を割った勢。今場所は精彩を欠き、5勝10敗に終わる。大きく負け越しても、交野市出身のご当地力士とあって、大歓声を受ける日々

そしてこの日最大のお目当て。琴奨菊と稀勢の里。先場所まで大関同士の対戦だったのが、大きく明暗が分かれてしまう。琴奨菊は大関陥落、片や稀勢の里は横綱昇進。大関に同時昇進した二人だったが…。感傷に浸ってる場合ではない。琴奨菊は10勝挙げれば大関復帰が叶う(この制度もどうかと思うのだが)。稀勢の里は全勝をキープし、二場所連続優勝にを目指す。どちらも負けられない一戦。特に琴奨菊はここまですでに2敗。この後は下位力士との対戦が続くが、何度も記するように若い力の台頭が目覚ましいだけに、3敗すると赤信号に近い黄信号が灯ると言える。

お馴染みのポーズもむなしく、琴奨菊は3敗となりにけり。内容は悪くなく、終始前に出て稀勢を土俵際まで追い込んだが、突き落としの逆転を食らいあえなく撃沈。結局、この場所は9勝6敗に終わり、大関復帰は叶わず。その夢を絶たれた14日目の照ノ富士との一戦、勝負がついて東の徳俵に下がったときの何とも言えぬ表情が印象的だった。でも、負けは負けである。

残る二番。日馬富士は荒鷲に敗れる。もはや、これを波乱とか「荒れる春場所」とかは言わない。日馬富士が4敗、5敗してももうだれもなんとも思わない。

力水日馬富士が敗れ、東方に勝ち残り力士がいなくなったため、結びの一番、東の宝富士に力水をつけるのは、付き人に。鶴竜はそつなく勝ったけど、横綱の土俵って空気が館内に漂わない。テレビで観ていて多分そうなんだろうなと思っていたが、いざ、現場でそのあまりにも軽い空気を感じると、どうしたもんだろね~って…。

最後は、おなじみ聡ノ富士の回る回るグルグル回る華麗な弓取り式を見て、打ち出しと相成りし。聡ノ富士も2013年初場所(2015年初場所を除く)からだから随分長いな…。

弓取り (1 - 1)

そんなこんなの、三月場所9日目および場所総括でありました。
長々、失礼!

(平成29年3月彼岸の中日 難波・エディオンアリーナ大阪)



 


1件のコメント

コメントを残す