【上方芸能な日々 落語】第20回月亭文都独演会

落語
月亭文都入門30周年 襲名3周年記念
第20回月亭文都独演会 ON THE ROAD

繁昌亭へ来ることもめっきり減ってしまった。まあ、昼席には行きたくはないよな、正直。
ここ数年は年に3回も来ればいいほうだろう。うち1回は必ず文都独演会。
で、この日ももちろんその文都独演会。

16-12-11 bunto-ol<ネタ帳>
北の旅リレー『池田の猪買い』
月亭都来~月亭秀都
『元猫』 月亭天使
『二番煎じ』 月亭文都
仲入り
日本の手品『浮かれの蝶』 松旭斎天蝶
『うばすて村』 月亭文都

独演会のタイトルと言い、チラシのデザインと言い、どこかで聞いたような見たような…。まあ、師匠は大ファンだそうですから。そういうことだと思いますよ(笑)。

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さて、八天時代から数えて第20回となった独演会。パンフに平成8年(1996)の第1回目からのネタ帳があったが、第1回目の色もんさん(ゲスト)が義太夫漫才の三人奴だったんだなぁ。開口一番は月亭連方の『動物園』。ここから始まり、現在も「ON THE ROAD」ということかな。

弟子が3人になって一門会としてやっていけるようになったはいいが、時には他の一門からの出演もほしいかなと思う。

本日のお座席からの眺め

まずは三番弟子・都来から二番弟子の秀都へとつなぐ『池田の猪買い』。
この日の都来は散々だった。本人の名誉のためにもその散々の具体的内容には触れないけど、「君は何をそんなに焦ってしゃべろうとするんだ?」ということだ。たしかにテンポよくいきたいネタではあるが、「もっと落ち着いてしゃべれよ」と。多少のヘマは客も目をつむって聞き流してくれるが、雪崩式にヘマすると、「がんばれ!」の掛け声とは裏腹に、多くの客は内心「もうええで」と思っている。それも修練とは言え、そんな新人を見るのはつらい。客に楽しんでもらおうと出てきたはずが、客に辛い思いさせちゃいけませんぜ。

その点、後を受け継いだ秀都は無難にこなしていた。彼の場合、いつも言うけど無難すぎてねぇ。なんか若手を「温かく見守ってあげている」という気分になれない、という点で損してるかも。

まあ、こんな具合に客は気まぐれ。若手も「ほな、どないせえと!」というところだろうけど、そこはどうしたいいかはご自身で見出しておくなはれ(笑)。

天使の『元猫』は何回か聴いているが、こちらさんは逆にマイペース過ぎるんだけど、すでにそれを自分の「かたち」にしているのが強み。そういう点でも『元猫』は聴くたびに進化…いや発展途上。もっと面白くなるはずという期待を込めて。

そして文都師匠『二番煎じ』。本格的な寒さに向かうこの時期にぴったり。「やっと落語聴けるわ」なんて言ったら、3人の弟子よりもその3人を指導育成する師匠に失礼だわな。でも実際にそう思ってしまったのだから仕方ない。怒らんといて下さい。
にしても、「宗助はん」は自分のことのようでもあり、一方で集団に必ずこういう損な役回りかつ勝手の良い人いてるわな~と、そこんとこでいつもククッてなってしまうねん。

仲入り

ゲストは手品というか手妻というか、松旭斎天蝶。で、この方は小天正門下で元はと言えば「わんだふる佳恵」。こっちの名前の方がまだわかる、「ああ、あの子な!」って具合で。
今回披露の『浮かれの蝶』は、三代目帰天斎正一が先帝の御前にて演じ奉った古典芸で、正一師匠の弟子である帰天斎正華より受け継ぐ由緒ある芸。お見事でした。

トリはもちろん文都師匠で。本日二題目は「ハナシをノベル!!」で誕生した新作ネタ『うばすて村』(原案・山中利一、原作・田中啓文)。「姥捨て」というと暗い過去の一ページだが、それをひらがなに書くと、重いイメージが消えてしまうから文字というのは大変な力を持っていると思う。テレビのテロップなどでやたらひらがな書きが目立つが、仮名では伝えきれない言葉の意味というものがあるはず。あれはよくない。「そんなアホにもの教えるみたいなことするな!」と言いたい。

で、このお話は決して「姥捨て山」の実話をアホにもの教えるためにかな書きタイトルにしたのではなく。

初めて聴くネタ。「やっぱ姥捨てだけに重たいなあ」なんて思ってたら、えらい展開になっていって、これなら捨てられたほうが幸せやなと、ハッピーな気分で席を立つ(って、どんなよ-笑-)。

いつものように文都さんに見送られて、帰路につく。「日曜夜の繁昌亭は動員が難しい」なんて言ってた時代もあったが、この日は超満員で補助席も出ていた。何よりのこと。

最近、繁昌亭帰りの定番メニューとなった「えび4本」の天丼食って、うーうー言いながら地下鉄に乗ったアホでございました(笑)。

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(平成28年12月11日 天満天神繁昌亭)



 


3件のコメント

  1. 文都師匠の会に行けなかったので、読ませていただきました。有難う御座います。(なかなか師匠の苛苛が消えなさそうな)三番弟子の成長を見守りたいと思っているばあばより。

    1. お読みいただき、ありがとうございます。
      弟子を育てるというのは大変なことだと、三番弟子を見る度に思います。

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