【上方芸能な日々 素浄瑠璃】第17回蝠聚会

素浄瑠璃
第17回 蝠聚会

毎日お暑うございます。

8月3日に千穐楽を迎えた文楽劇場の夏休み公演。結局、千穐楽も『生写朝顔話』を通しで観てきた。2回目で気づいたことや「なんで~?」と思ったことなど多々あれど、大体は1回目の鑑賞と似たり寄ったりな感想になるので、割愛。

翌日は、三味線弾きさんたちが浄瑠璃を語る「蝠聚会」が小ホールで。
ここ数日、ブログのアクセス数が急増しているので、「はて?」と思い、アクセス分析を覗いてみると、「蝠聚会」で検索かけてここにたどりついた数が相当あった。で、みなさん、昨年の「蝠聚会」のブログを見て行かれたようで、その稿のみのアクセスもかなりの数になっていた。ごめんね~、去年ので(笑)。

そんなわけで今年の「蝠聚会」ネタをようやくアップ。
会の方からは、早々に振り込み用紙まで添えて、御案内状をいただいていたにもかかわらず、直前までこの日の予定が定まらず、昨年に引き続き当日券に望みを託す。

あらかじめ、数日前に文楽協会に問い合わせたところ、「5枚出る予定です」と。いやもうね、これ限りなくゼロに等しいよ。思わず、
「そりや聞へませぬ協会さん。当日券がわずかに5枚とは、そりやまぁあんまりな、しええええ、、、」
とは泣き崩れないけど、そう思ったよ(笑)。

で、結局、ささっと行って、ささっと買えたけど(笑)。結構、当日券狙いの人いるからねえ。補助席もあるにはあったけど…。

ふくじゅかい座席

客席後方からは、住さんお師匠はんご夫妻、住大夫一門も見守る。清介師の挨拶では、住さんの指導も仰いだとのこと。その住さんは、すこぶるお元気そうで何より。

■壺坂観音霊験記
沢市内の段
浄瑠璃:鶴澤清介 三味線:鶴澤清公
まずは、清介師匠から。もうこの人は、自分の浄瑠璃の世界を確立しているから、好きなように、自分が心地よいように語る。「ほんま、好きなんですね~」という雰囲気が、しっとりと伝わってくる。

■仮名手本忠臣蔵
裏門の段
浄瑠璃:鶴澤燕二郎 三味線:竹澤宗助
今回の注目は、蝠聚会初参加の燕二郎と清允。ふたりは文楽研修の同期。彼らが研修中の発表会や研修修了の発表会も観てきた。二人とも研修期間中から、やけに落ち着き払っていて「タダ者ではない感」を持っていた。
まずは燕二郎が浄瑠璃で「裏門」にトライ。これはもうねえ、出だしの「立ち騒ぐ~~」で、やられた! と思ったね。小柄な体格からは予想もしなかった大音量。上手か下手かで判断せよと言われたら、そりゃまあ下手っぴで、地方の子供浄瑠璃か、と言われてもそこはしゃーない。本職は三味線弾きなんだし。でも、引き込まれた。なぜか? 詞章が聞き取りやすいから。そして声が大きいから。太夫は、特に若い太夫はこうでなきゃ、の基本がばっちしだった。この日のMVPものだった。これだけ語れるんだから、きっといい三味線弾きになるはず。

中入り
住さんの席へ、燕二郎、師匠の燕三夫妻が挨拶に行っていた。燕三夫妻も愛弟子が「初舞台」を無事勤め終えて、ホッとしたことだろう。住さんがお三方にどんなことを言っていたかは、知らないけど、住さん、きっと誉めてたんじゃないだろうか。住さんが好みそうな浄瑠璃だったもんな。

■義経千本桜
椎の木の段
浄瑠璃:鶴澤清丈 三味線:竹澤團吾
清丈も、清介師同様に自分の世界を持った語り。いがみの権太が秀逸。ってか、「お前、これ地やろ~?」と聞きたいくらい、いがみの権太になりきっていた(笑)。でも、浄瑠璃語りは相当好きそうだな、彼も。「ちょっと、自分だけで楽しまんといて~な~」と思ったり(笑)。

■菅原伝授手習鑑
車曳の段
浄瑠璃:鶴澤清志郎 三味線:鶴澤清允
イキの良い語りにびっくらこかされた燕二郎の同期、清允は「本職」の三味線で蝠聚会初見参。来年は浄瑠璃聴かせてよ。
清志郎がこれまた本職の太夫顔負けの語り。「私、ホンマは太夫ですねん」と言われても、否定できないほどのもので…。まあ、細かいこと言うと「そこは、多分、違うと思うわ」とか「ああ、そのイントネーション惜しい」などなど、山ほどあるわけだけど、数年に一回順番が回る? だけの機会で、ここまでやると、そりゃ、同年代の太夫チームはもっと危機感持って舞台に臨まないとあかんと思うな。時平の高笑いもえらい拍手起きてたもんね。いやもう、大人しそうな顔して、やる時はやるね!

4人とも、よく「ニン」の出た語りで、それぞれの人となりまでわかってくるような感じだった。
最後は、会主の清介師の挨拶と大阪締で、おひらきに。超満員のお客さんは、大満足だったろう。少なくも、小生は大満足した。

帰りがけ、見送りに出ていた燕二郎君に「よっ!カッコよかったで!」と声を掛けると、「ぎゃひゃ、ぎゅひゃ」と、言葉にならないような声を発して、赤面していた。まあ、まだまだ可愛らしいね(笑)。

(平成27年8月4日 日本橋国立文楽劇場小ホール)


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