【上方芸能な日々 落語】吉坊ノ会<6.Apr.2015>

落語
吉坊ノ会 <6.Apr.2015>

恒例の「吉坊ノ会」。これがなんとまあ、今年最初の落語行きである。こりゃあかん。こんな有様では「趣味、落語鑑賞」なんて口が裂けても言えまへん。

この稿自体は、翌日には完成していたのだけど、続けて東京での会があるので「ネタバレ」しちゃいかんから、ということで、「予約投稿」にした。ちょうど東京で「そってん芝居」が口演されてそうな時間帯に公開と設定にしました。気ぃ、遣ぅてんやしぃ、俺も(笑)。

19時開演の近鉄アート館。「あべのハルカス」開業に合わせて、この小屋も再始動したわけだが、これほどいい場所はない。自宅最寄り駅まで近鉄電車で駅三つ。なんかいつも同じようなことを言っているが(笑)。

毎回、何らかの発見や驚きのある「吉坊ノ会」。さて、今回は。

11025663_799354970152140_2065960769103520400_n<ネタ帳>
「道具屋」  桂福丸
「天神山」  桂吉坊
中入り
ゲスト~江戸小唄~  千紫巳恵佳
「そってん芝居」  吉坊

注目は「そってん芝居」である。人生51年と9カ月。いろんなネタを聴いてきたが、これは珍品の部類。
パンフによると、「昭和18年大師匠米朝が東京にて、初代桂小南師の高座を一目見て、ついに上演の機会を得られなかったもの」とある。米朝は吉坊の師匠である故吉朝師ら一門の直系数人に稽古をつけ、「当時米朝のもとで内弟子をしていた」吉坊もその場にいたとのこと。吉朝は平成17年初演。吉朝の音源がネット上にあるが、これを聴かずに臨むことにした。吉朝師のを聴くのはこの日の吉坊を見てからにしようと。もっとも、芝居噺なので聴くことでは伝わらない、感じないことがいっぱいあるとは思うけど。

「道具屋」福丸 あまり巡り合う機会がなかった噺家ではあるけど、その少ない機会の度に、端正で所作がしっかりしているなあと感心しながら聴いている。福團治の指導が行き届いているのはもちろんのこと、灘中、灘高、京大という経歴が示すように、頭の良さも感じる高座さばき。将来、大いに有望。

「天神山」吉坊 この季節にもってこいのネタ。「従来型」と「枝雀型」のサゲがあるが、吉坊は「従来型」にて。ただ、『芦屋道満大内鑑』があーだこーだとサゲで言って、「はは~ん、そうなんや」と納得する客が、どれだけ客席を占めているかでサゲの反応も変わるから難しいだろう。恐らく、吉坊の客筋の大半は、文楽、歌舞伎にも通じている人だと思うので、このサゲでOKのはず。ちなみに小生は、小学生のころ(昭和40年代)、旧なんば花月で音曲漫才の三人奴が、「葛の葉の曲書きの障子抜け」や「松づくし」を見せて喝采を受けていたのを実際に観ている。その「教育」(笑)の成果もあって、自分としては、従来型のサゲがしっくりくる。なんと言っても、吉坊なんだから、それでサゲないとね(笑)。

「江戸小唄」千紫巳恵佳(せんし・みえか) 東阪で開催される「吉坊ノ会」。今回、大阪のゲストに江戸の粋(いき)、東京のゲストには上方の粋(すい)を楽しんでもらおうと招かれたのが、千紫巳恵佳。元々、お江戸の粋な文化にも興味津々ではあるのだが、なかなか大阪でそれに接する機会は少なく、たまにお江戸から来演の噺家さんの語りに触れるくらいである。短い時間ではあったけど、いいものを聴かせてもらった。

「そってん芝居」吉坊 そもそも「そってん」って何やねん? 「剃ってん」かな? 感性鈍い小生には、噺を聴いただけではそこは不明のままであった。「今はやる人がいない」噺には、大きく分けて二つの理由があるらしい。「長すぎる」か「面白ない」か。で、このネタは後者に属するらしく、サゲもインパクトがまったくもって頼りない。それこそ「それで終わるんかい!」なサゲ。芝居噺と言っても、『蛸芝居』や『質屋芝居』などのように芝居シーンのオンパレードってわけでもない。唯一と言っていい見せ場は、髪結いシーンだろう。下座の囃子と髪結いの技が見事にマッチしていて、さらに髪結い技も「お~!」と唸らされ、最後には拍手喝采だったけど、誰も髪結いシーンなんてナマで見たことないのにね(笑)。米朝がこのネタを記憶していて、弟子数人に伝え、その場に吉坊もいたというのがもうねえ、えらいストーリーですわいな。吉坊はすでに米朝から「使命」を受けていたということですわな、これ。持ちネタとして、ぜひこれからも続けてほしい。

次回は11月25日、場所も同じく近鉄アート館で。

(平成27年4月6日 近鉄アート館)


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