【睇戲】『GF*BF』(台題=女朋友。男朋友)

GF*BF
(台題=女朋友。男朋友)

久々のシネマート心斎橋。本作、上映最終日。もっと早く観に行きたかったけど、ギリギリになってしまった。でも、観ることができてよかった。本当によかったとつくづく感じる良い作品だった。

1985年、戒厳令下にあった台湾から始まる、ただの三角関係ではなかった、いや、なれなかった男と男と女の物語。

まず冒頭、2012年の台北の女子中学での「短パン穿かせろ!」抗議行動の場面から始まる。騒ぎを先導した双子の姉妹と、呼び出された保護者<忠良>の関係…。兄なのか父親なのか…。のっけからややこしい関係のハナシに…。と思ったところで、時代は遡り1985年、台湾南部は高雄の夜、玉蘭摘みの場面に変わる…。

台湾の「土の香り」と「時代や社会の風」

映画は、ときに「その土地の土の香り」と「時代や社会の風」を観る者に伝えてくれる。この作品もご多分に漏れずと言うか、たっぷりすぎるほどに。

主人公3人が川遊びをする渓流の美しい場面も印象的なら、1990年の「野百合学生運動」の熱い風もまた印象的。「野百合学生運動」は、この春の学生運動「太陽花(ひまわり)学生運動」の原点なのかもしれない。

腹痛(生理痛)に苦しむ「女」<美宝>に楠の葉をもんで匂いを嗅がせてやる「男」<忠良>。この楠の葉も印象深い。パンフでも紹介されていたが、日本統治時代台湾では樟脳の原材料として楠のプランテーションが作られたという。香港の街頭でも玉蘭売りのおばちゃん出没するけど、台湾大好きな僕は、あれは台湾でなけりゃいけないと思っている。

大衆歌謡が鳴り響く中、踊り子が舞う夜市、発禁本の古本を売る<美宝>。ゲイの<許神龍>とカレシの結婚式…。
「台湾の土の香り」と「時代や社会の風」は、3人の主人公のために用意された、最高の書割りになっていた。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

gf_bf_ver3_xlg台題 『女朋友。男朋友』
邦題 『GF*BF』
制作年 2012年
制作地 台湾
言語 北京語、台湾語

評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)

主演(出演):桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、張孝全(ジョセフ・チャン)、鳳小岳(リディアン・ボーン)、張書豪(チャン・シューハオ)

自由を求め、ようやく声を上げ始めた頃の80~90年代の台湾を描きたいと思っていたと言う楊監督、会心の一作。タイトルからは、ハートウォーミングな物語という印象を受けるかもしれないが、実は「眩しくて、やがて切なき…」というストーリー。人によっちゃ、大泣きするかもね…。

【甘口評】
3人の主人公の27年という歳月をきちんとそれぞれ一人で演じきった桂綸鎂、張孝全、鳳小岳の3人にまずは拍手喝采。とくに桂綸鎂はイイ女デスね! 青春時代の「じゃじゃ馬娘」から大人なった<美宝>まで、透明感ある演技が光る。

そんな具合に3人とも役になりきって物語に入り込んでいたのが素晴らしく、それがゆえに観る方の心にズキズキと響いた。作りも非常に丁寧で引き締まっていたし、各時代に合わせたカメラワークも効いていた(ああ、80年代ってこういう撮り方多かったよな、みたいな)。

音楽も良かった。終盤、水のないプールで一瞬、昔のようにはしゃぐ張孝全が演じる<忠良>と桂綸鎂演じる<美宝>の場面で流れた羅大佑(ルオ・ダーヨウ)の『家』が心に沁みて、グッと胸が詰まる思いだった。エンディングの『青春無敵』もよかった。張書豪演じるゲイの<許神龍>は、友達づきあいの中にいてほしくなる役どころをうまく演じており、存在が光っていた。

【辛口評】
特に辛口する要素は無し。
何度も観たい作品の一つになった。

どーでもいいことかもしれないが。携帯電話の形が懐かしい。主人公の一人<心仁>が結婚後に使っていた携帯、ボクもあの時代に香港で同じのを使っていた。NOKIAのやつでバナナの皮みたいに通話の時にスルっと「皮をむく」タイプね(笑)。いつもGパンのケツのポケットに入れていた、曲がり具合が丁度ケツのラインにフィットしていたなぁ(笑)。

そしてボクは<忠良>のカレシとの別れ言葉、「鏡を見たんだ、みじめな顔だった」という一言に、ピストルで心臓一撃される思いだった。あの一言が、僕の中でこの映画のポジションを非常に高いものにしたと思っている。ネタ帳にさっそく記録(笑)。

電影【女朋友。男朋友】正式預告片

(平成26年6月27日 シネマート心斎橋)



 


5件のコメント

  1. こんにちは~。最近台湾TV劇<我的自由年代>を見ていて90年代の台湾の雰囲気を味わっていたので、この映画も見てみたいです。ご指摘のように主演の桂綸鎂はいいですね。若干コリアン風顔つきが気になりますが凹凸♪(丸山光三)

    1. 桂綸鎂をご存じだったんですね! さすが素早い(笑)。そういえばコリアン風味がありますが、今、台湾や香港の若いタレントは、韓流の化粧やヘアスタイル、服なんかを大いに好みますから、どうしてもそうなっちゃいますね…。由々しき潮流ではあります。

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