【上方芸能な日々 文楽】素晴らしきリズムの宴*旧ブログ

インフルエンザもようやく癒えたので、1月20日、文楽初春公演の第1部を観てきました。

人形浄瑠璃 文楽
平成二十三年初春公演
第一部
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いや~、楽しかった!
文楽の面白さを再確認したひとときでした。

寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)
正月らしい演目です。
大夫7人、三味線6挺で奏でる三番叟のリズムは、華やぎの絶頂。
三番叟のリズムが大好きです。ウキウキします。思わず手拍子したくなります。実際に手拍子したらあかんのでしょうか?隣の席の強面のおっちゃんが、かわいらしく「指拍子」打ってるのを見て、そう感じました。
人形の二人三番叟、幸助、玉志の動きも軽やかで、「明るく、楽しい」文楽が繰り広げられ、幸せな気分になりました。
こういうリズムの競演もまた、文楽の見どころのひとつでありましょう。

傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
「土佐将監閑居の段」
通称「吃又」。人気狂言のひとつ。
ここはやはり何と言っても齢83の住さんに圧倒されてしまいます。
言葉がうまく操れない身に対するコンプレックス、そしてその身を嘆く又平の何とも言えぬ悲哀に心打たれます。それに尽きる「吃又」。この人と文楽の空間を共有できていることの幸福感は、何とも表現のしようがない。
清三郎改め文昇の加納雅楽之介も出番こそわずかではあったけど、住さんの語りでの、「襲名披露」はかけがえのない出番となったことと思います。
住さんの思いたっぷりの「吃又」でした。

染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)
「油店の段」、「蔵前の段」
「お染・久松」ものです。
油店における、咲さんが圧巻でした。
文楽を浄瑠璃を楽しんでもらいたいという思いの詰まった語りが、観客をぐいぐいと物語に引き込んでいくのがよくわかりました。お客のノリも最高でした。こういう雰囲気が大阪の文楽らしくて大好きです。
「整いました」なんて近頃のギャグも交えながら、お染・久松を追いこんでやろうと企む番頭・善六と質屋源右衛門のやりとりを軽妙にわかりやすく進めていきます。「軽妙にわかりやすく」と言っても、浄瑠璃を語っているので、現代語で語るわけではないのですが、声の使い方や前述の現代のギャグ語をひとつ入れるだけで、ずいぶん変わって来ます。これこそ咲さんの世界であります。エンタメの真髄を十二分に聴かせてくれました。
人形は清十郎のお染がよかった。
こういう道ならぬ恋に苦しむ娘は、この人にぴったりです。
人形そのものは表情を作れませんが、ちょっとした角度の違いや仕草などで、その思うところが観る者に伝わります。この日のお染もビシビシと伝わりました。
そういう見方をすれば、久松の勘彌にもう少し性根を見せてほしい気がしました。
勘十郎さんが悪役=番頭善六を遣うのもなんか新鮮でした。源右衛門=勘禄との「悪の連携」も咲さまの語りとマッチしていて、見ごたえがありました。

この日は、企業のインセンティブがあって、不入りが目立つ午後の部としては、まあまあの入りでした。楽しんではったかどうかはわかりませんけど。
初春公演は、見どころ、聴きどころ満載でした。
一方で「あれ?こういうのアリか?」みたいな場面もありました。
もちろん、小生は文楽鑑賞歴30年ほどの若輩者ですから、疑問を抱いた点もそれでOKなのかもしれませんが、そういうのもちゃんと確認したいし…。
そんなこんなで、もう1回通しで観たいところですが、23日が千秋楽。予定があって行けません。それがなんとも残念。
インフルエンザにさえなってなけりゃね(笑)。


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