【上方芸能な日々 演芸】第50回上方演芸特選会*旧ブログ

演芸
第50回上方演芸特選会

6100_1上方の演芸各団体(上方落語協会、浪曲親友協会、関西演芸協会、関西芸能親和会)が大阪にも国立演芸場の開設を目指すべく2000年から開催されている「上方演芸特選会」も今回が50回目。

会場は当初より国立文楽劇場の小ホール。
定員200人程度かな。寄席芸を見るには格好の規模。

平日の昼間と言うこともあって、年齢層はかなり高い。きっと小生は最年少だろう。

とくに浪曲が2題かかることもあってか、浪曲ファンが多いように感じるのは、決して気のせいではないだろう。

<ネタ帳>
1.落語 林家市楼 「もぎ取り」
2.浪曲 幸山倖若 「奥州奴 谷風の生い立ち」より
3.落語 林家染丸
4.漫才 二葉由紀子・羽田たか志
中入り
5.剣戟漫才 サムライ勇・朝
6.浪曲 三原佐知子 「羽ばたけ千羽鶴」
7.落語 桂福団治 「藪入り」

なんか妙に懐かしさを覚える番組である。
こういう感じは、子供の頃の角座とか花月、もっと言うと新世界の新花月を思い起こさせる。
ま、その頃は浪曲なんてすっごくイヤで、早く新喜劇とかポケットミュージカルとか始まってくれ~って思ったもんだが、もはや浪曲もすんなり受け入れられるお年頃に…。

お目当て「その1」は、由紀子・たか志。
吉本興業が世界に誇る超ベテラン夫婦漫才であります。いや~、変わってないね。劇場で見るのは10数年ぶりやけど、ほんま変わらんエネルギッシュな漫才ですな。記憶に間違いなければ、たか志のアコーディオンを由紀子が「仏壇(大阪弁で”ぶったん”)ぶら下げて何言うてるねん」ってギャグあったような。今日はなかったけど。20分、お客を笑わせっぱなしという驚異の漫才であって、きょうびの若手「お笑い」には絶対できない芸であります。

お目当て「その2」、染丸師匠。
なんかねぇ、ネタやりはれへんかったのよ。年末やし、てっきり「掛け取り」あたりやるんやと思ってたら、しっかり裏切られたわ~。世間には色んな夫婦がおまんなぁ~で、小ネタ3つ4つで終わってしまった。消化不良。でも、こういう展開は、それこそ花月では今なおしょっちゅうで、前の浪曲がぐぐーーっと重厚やったから、さらっと流しはったんかな…。

お目当て「その3」、福團治師匠。
こちらは十八番の人情噺「藪入り」。ただ、時間制限あったためか、中頃をうまいこと飛ばして短縮バージョンだったのが残念。親子三人で食べるご飯の温かさ「かくばかり、偽り多き世の中に、子のかわいさ誠なりけり」と申します。のサゲはびしっと決まったけど、うむうむうむ…。

落語が消化不良気味だったのに対し、浪曲は熱演でした。とくに三原佐知子の「羽ばたけ千羽鶴」は圧巻。
関西女流でトップクラスの人気実力の佐知子師が原爆の悲劇を語る「新作」。
ぐいぐい聴かせて曲に聴衆を引き込んでゆく力は当代一と言われる佐知子さん。原爆による病に倒れ、やがて天国へと逝く幼い少女や両親の物語に、アタシはボロボロ泣いてしまいましたよ。まさか自分史の中で浪曲で泣く日が来るなんて、それこそ花月や角座で「浪曲イヤやなー」って思ってた頃には考えもしなかったことですね。
もし、この話で胸を打たれない人がいたなら、どうぞ鬼畜道へ堕ちてください、と言いたいな。

あと、倖若の曲師(三味線)をやった一風亭初月(いっぷうてい・はづき)。
普通、浪曲の伴奏は「陰弾き」で表に姿を見せないが、彼女は「出弾き」として、舞台に出て伴奏するのが特徴。春野恵子、幸いってんら期待の若手による「新宣組」の一人でもあり、未来の浪曲界を託されている逸材。

こうしてみると浪界がこの「演芸特選会」に力を入れているのがわかる。なるほど、客席に浪曲ファンが多いはずだな。

そう言えば、サムライ勇・朝の朝師匠はかつて朝起太郎というピン芸人だった時期があったな。結構、松竹の若手の話題にのぼることが多い大御所の一人。
サムライ勇・朝も出てきてから下がるまで、ずっと笑わせっぱなしで、よくこれだけネタが持つもんだと感心。

約3時間、2000円。まあ、これだけ見せてもらえりゃお得というもの。
今日は平日だったけど、ほぼ満員。土・日にどれくらい入ってて、年齢層がどうだったのかというのも知りたいな。

どこをどうやっても追いつけないだろうし、目指すところが全く違うんだろうけど、baseよしもなんぞで、キャーキャー言われてる自称・若手「芸人」たちに、「芸人を名乗るのが恥ずかしいだろ、お前ら」、と言いたくなるような由紀子・たか志師匠の熱演が、何と言ってもうれしい限りだったこの「上方演芸特選会」でした。

(平成22年11月29日 日本橋国立文楽劇場小ホール)


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