【上方芸能な日々 落語】第15回 月亭八天独演会*旧ブログ

毎年、この時期恒例の八天師匠の独演会。
今年で15回目。会場のワッハ上方内のワッハホールの歴史とともに。

さて、そのワッハホールも12月26日をもって営業終了となる。ワッハ上方(大阪府立上方演芸資料館)自体は年明けから3月まで休館となり、4月以降は新たな管理者のもと、再スタートを切るということだが、果たしてどうなるのか、見えてこない点が多い。
世界でも類を見ない「笑い」の博物館である。所蔵の史料や展示物、過去の放送音源や映像のほとんどが個人や在阪メディアから無償で提供されたものだけに、その好意を無にしないことが、望まれる。

恐らくワッハホールでは最後になるであろう今回の独演会。
八天師匠も入門25年、50歳の節目の年とあって、上方の大ネタ『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』をかけるという意気込みで。
超満員の会場。鈴鳴り席(補助席)も前売で完売という大盛況。アタシも補助席、ケツ痛い…。

第15回月亭八天独演会
2010年11月23日
ワッハ・ホール

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<ネタ帳>
1.鷺とり 月亭天使
2.地獄八景亡者戯 月亭八天

中入り
3.手水回し 月亭方正(山崎邦正)
4.涙をこらえてカラオケを 八天

財布を忘れて家を出て、途中乗り換え駅の天王寺でICOCAのチャージ時にそれに気づき、家まで取りに帰って…。というあほなことをしてしまい、開演に間に合うのは無理と思っていたが、そこは交通至便な東住吉区田辺。なんとか天使の開口後1分ほどで席に着くことができて、一安心。
2月に八天師に入門し、米朝師匠の玄孫弟子として話題を呼んで早9カ月。高座を見るのはこれが2回目。前回も「鷺とり」やったかな。そういう意味で比較するが、まだあれこれ注文をつけるのはかわいそう。ご本人は課題をよく心得られているようなので、克服されてゆくでしょう。女性に甘いと言われりゃ、ああ、そうだとも!と…。
さて、八天師の「地獄~」。なかなか完成度が高い出来になっていたとみます。
時事ネタや身辺ネタなど色々詰め込んで完成させてゆくネタでもあり、演じ手によっては前半後半に分けてやる場合もありますが、師は1本立てで。
それでも1時間を優に超す長講となるも、客をダレさせることなく、きちんとした八天落語らしい「地獄~」になっていました。
今公演のパンフレットの作家・田中啓文氏の寄稿によれば、八天師の「地獄~」は桂雀三郎師匠に教えを請うたとのこと。小生が前回「地獄~」を見聞したのが雀三郎師の独演会だっただけに、なるほど、同じ香りが随所に漂っていた。
同文で田中氏も指摘しているが、雀(じゃく)さん(関西人は愛着を込めてこう呼ぶ)の「地獄~」は、がっしりと骨太で力強い、原点回帰的な「本来の地獄」。この日の八天師の「地獄~」もまさにその通り。
1時間超となったにもかかわらず、客席にダレた空気が一切なかったのは、さすが!の実力であります。

中入り挟んで「ヤマザキ一番!」の出囃子で軽やかに登場の方正くん、すなわち山崎邦正。落語に目覚めて八方師匠に正式に入門、ピン芸人活動とともに高座に上がる機会も多くなっています。
前座からトリまで、その演じ手のレベルに応じて、同じネタでも様々な見え方、聴こえ方がするのが落語の不思議なところ。「客の想像力に委ねる」芸能であるがゆえのことなのですが、方正くんの「手水回し」はトリネタの風格さえ感じました。
初めて「落語家・山崎邦正」を見たわけですが、カミ・シモの使い分けもきちんとしてるし、ピン芸で磨いた技としての人物描写も的確。いや、ここまでしっかりした落語ができるとは、思っていた以上でした。もっとネタ数増やして、独演会やりなはれ。

トリは三枝師匠作の創作落語を八天師が。
実際にカラオケ用のエコーマイクを使って歌ったり、高座上にミラーボールが登場したりと、三枝落語のサービス精神が、詰め込まれた逸品。
それはそれはめっちゃ面白い噺なんですが、15回目の節目、入門25年の節目、最後?のワッハのトリネタとして、どうだったんだろうなあとも感じました。
古典、作家とのコラボに加えて創作落語をネタの軸に加えた年でもあったので、このネタを持ってこられたんでしょうが、自称・コアなファンであり弟子(笑)でもある小生は、古典で締めてもよかったんじゃ…、と思います。

打ち上げに毎回呼んでもらってます。
この日は過去最高?の100人近い参加者が。
方正くんも中盤まで参加。まあ、えらい人気です。方正くんの前に座ってたこともあってか、何回記念撮影のシャッター押したか。人気商売って大変やな。ゆっくり飯も食われへんやん。入れ替わり立ち替わり、写真やら握手やらサインやら…。せっかく正面に座ったのに、ゆっくりお話でけんかったわ…。
それは八天師も同様で、また機会を改めて、今公演のことや来年の独演会のことなどもゆっくり聴かせてもらいましょうかね。
なお、来春には入門25周年記念として、25日間連続の会を開くとのこと、こちらも大いに注目です。


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