【上方芸能な日々 文楽】第112回文楽公演*旧ブログ

今回の文楽公演の目玉はなんと言っても「吉田清之助改め五世豊松清十郎襲名」でござります。
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女形の大役を次々とこなす一方で、そのりりしい素顔同様の二枚目もこなすなど、進境著しい、脂が乗ってくる年代の人形遣いさんです。その襲名口上、襲名披露狂言を観劇。
11月21日(金)午後の部
襲名披露なのに4割ほどの入りは寂しい。

『靭猿』
ご祝儀狂言とも言うべき「景事」ですかね。

『恋娘昔八丈』
材木問屋で起きた婿養子(要するに腹黒い)殺害未遂事件を扱う。
問屋の娘・お駒を遣うは、
吉田勘弥。抜擢だという。なるほど、心ならぬ婚礼を前に揺れ動く娘心を見事に演じていて、「この公演が大きな飛躍のきっかけ」かと。
こういうふうに、きらりと光る演者がいると、自然と舞台に躍動感が出てきますね。
床は「城木屋の段」切場の綱大夫・清二郎親子が、好演の勘弥とともに物語をグイグイ引っ張ってゆきます。
「鈴ヶ森」の段はお駒の処刑の場面なのだけど、幕が上がる前に見物人があれこれ噂ばなし。いきなり処刑場に場面転換せずに、ここで「はは~ん、お駒は婿養子を殺しよったんや」と勘を働かせるとか、最初から筋書きを知っているとか、見るほうの力量が問われる場面かも。
ただ、それではいきなりお駒さんが処刑されることにびっくりしてしまう人も多いだろうから、なんか工夫が必要でしょうね。物語自体はハッピーエンドだからいいようなものの。その点はアンケートにも書いておきました。

『口上』
五世豊松清十郎襲名披露。
住大夫、寛治、蓑助の人間国宝が並び、清十郎師と同年代の勘十郎も。舞台もぱっと明るくなり、いやがうえにも襲名した清十郎への期待感を高める。

襲名披露狂言
『本朝廿四孝』

清十郎師、襲名の記念狂言はおなじみの狐ものにて。
これはね、大好きな嶋大夫師が切場を語るし、華麗な八重垣姫を遣う清十郎さんが聴き所、見所でしたね。
八重垣姫は代々の清十郎が十八番としたとかで、襲名にふさわしい狂言だということです。
たしかに「うまいなぁ~」と惚れ惚れしましたね。襲名というものが、この人形遣いさんを大きく飛躍させるきっかけとなっているのが間違いないのがよく伝わってきました。で、これも終演後にアンケートに書いたのですけど、せっかくの襲名披露なのなぁ…。と、ひっかかる舞台設定があったことは、かなり残念でしたね。

でも。
やっぱり文楽はいいですね。素晴らしい。アーティストの渾身の芸のぶつかり合い。こういう芸能をはぐくんだ大阪はもっと自信を持たねばなりませんよ。


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