【上方芸能な日々 文楽】第111回文楽公演*旧ブログ

いや~、大阪は暑いですな
香港はタクシーが安いから、こういうときは乗り倒すけど、日本はねぇ、タクシーはもちろん、交通料金、高すぎるわ

さて。
大阪滞在となれば、やはり芸能鑑賞。
文楽の夏の公演へ。

夏の公演は3部構成。朝は子供向け、昼は名作、夜は6時半からサマーレイトショー。
2,3年前に「サマーレイトショー」に行ったけど、やっぱり6時半開演ならば客は入る。その日は超満員で補助席も出ていた。夜の部は6時半、できれば7時開演の恒常化を切に望みます。

本日の昼の部は近松もの2作。
まずは『お夏清十郎 五十年忌歌念仏-笠物狂の段』。初演は宝永6年(1709)正月というから、300年前か…。300年たってもお夏清十郎で客を呼べる、近松ものは強力や。

この日のお目当ては
鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねのかたびら)』。
さらにお目当ては、「浅香市之進留守宅の段」を語る豊竹嶋大夫。
声が好きでねぇ、ほんまに。
浄瑠璃のうなるような搾り出すような声とは、ちょっと違うんですな。すごく耳あたりがよいんです。こういう世話物にもってこいの大夫かと。
嶋さんの声をじっくり聴きたくて、あえて舞台が見えにくいけど、盆の真下の席を指定したわけで、じっくりたっぷり堪能でけた。大夫の声が聴きたくて、人形をほとんど見ない、こういう見方を小生がするのは、この人だけだよ。

笹野権三に蓑助、道ならぬ恋の果てに権三ともども命を絶たれるおさゐに文雀の両人間国宝。とくに文雀のおさゐが際立っていたなぁ。やっぱ、名人が遣う人形は怖い…。生身の人間以上に情念を発散させるから。
22年前の映画『鑓の権三』なら、郷ひろみ岩下志麻のコンビやで。なかなかええキャスティングと、この日の舞台を見て、振り返る。

後ろの席の奥さんが「”ぶんしょう”さん、出ずっぱりやな」って言うてはりましたが、おいおい…。「ぶんじゃく」さんでしょ…。
ところで。
プログラムには伊達大夫の名があるも、さきごろ鬼籍の人となりしは誠に残念至極。齢80の長老ながら、独特の渋~い声で「ほんまの浄瑠璃」を聴かせてくれる太夫…。ほんとに残念。ここ、本来ならば、伊達、嶋が続きで語るはずだったのに。
昨年末から、玉幸、文吾が相次いで世を去り、自ら命を絶った大夫、カネで名声を失った大夫親子、追い討ちをかけるように伊達大夫の死。プログラム後半ページの技芸員紹介の写真が少なくなってしまったのが寂しい。

猛暑の盛りの14時半開演ながら、客席は9割がた埋まっていた。夏休みで、親子連れや、若いカップルの姿も目立った。
これすなはち、近松ものの力であろうし、蓑助、文雀、嶋大夫、綱大夫、咲大夫、燕三ら人気者がそろうたからだろう。演目・演者の組み合わせをいかにするか、上演時間とともに、さらに練って行く必要があるかと。


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