【回帰26周年】


香港では、祖国回帰から26年が経過した。毎年同じことを言うが「早いもんでんな」と(笑)。昨年は25周年、すなわち「50年不変」の折り返しということもあって、習近平国家主席が来港したが、今年はそういう中央の要人の来港はなく、「ま、香港で勝手にやっとってくれ」ってところか(笑)。

金紫荊廣場(Golden Bauhinia Square)で行われた国旗及び特区旗掲揚 Ⓒ香港01

この日は、祖国回帰26周年であると同時に、民間人權陣線(民陣)主催による大型デモが行われなくなって4年、その民陣が解散して2年となる。

かつて大型デモで人々が繰り出した銅鑼灣(Causeway Bay)や灣仔(Wan Chai)の街からは、怒号はすっかり消え、代わりに「七一折扣=返還記念日割引」目当ての市民がどっと繰り出している。「香港獨立」や「光復香港」と書かれた黒い旗に代わって、五星紅旗と香港特区旗の赤が至る所で翻る。六四の時には「慶回歸家鄉市集嘉年華」で賑わったビクトリア公園は、この日は「維園慶回歸(ビクトリア公園で返還記念日を祝う)」が開催され、「中国香港」と書かれた大型オブジェが目を引く。かつては、デモの出発点として多くの市民が集った場所だが、今や返還記念日祝賀行事を楽しむ市民で賑わっている。トラム、フェリー、MTRバスなど交通機関に加え、博物館も無料となり、市民の消費意欲を掻き立てた。

誰が何と言おうとも、香港は中国の一都市。決して「英国香港」ではない Ⓒ端傳媒
返還記念日を喜ぶおばさまたち

特に賑わったのは、西九龍文化地区にある現代アートを展示する「M+博物館」と「香港故宮博物院」の7つのテーマ展示の展示。西九龍文化地区管理局によると、「M+」では この日だけで23,000人以上が来館した。香港故宮博物院では7,600人以上の来館者があり、この日の両博物館の入館者数は、今年4月30日の「五一黃金周(メーデー・ゴールデンウイーク)」期間中の1日の入館者数記録を更新した。

記録的来館者数となった「M+」。香港人、こういうの好きやった?

この日の朝には、COVID-19の規制が実質完全撤廃されてから、最初となる「七一升旗禮(返還記念日国旗及び特区旗掲揚式典)」が、金紫荊廣場(Golden Bauhinia Square)で午前8時から挙行されたが、一般観覧エリアは設置されなかった。国安法以前なら、広場の周辺で長毛こと梁國雄らが、一暴れするのが風物詩となっていたが、暴れていたメンツも今は獄中の人。とは言え、不測の事態に備え、周辺の道路は封鎖され、特殊部隊など多くの警察官も巡回に当たり、「劍齒虎(サーベルタイガー)」と呼ばれる装甲車も配備されるなど、厳戒態勢で臨んだ。

ビクトリア公園付近に配備された「劍齒虎」をバックに記念撮影 Ⓒ獨立媒體

国旗及び特区旗掲揚式典は、香港各所で実施された。

中央人民政府駐香港特別行政區聯絡辦公室(中弁連)では、鄭雁雄主任らが出席し、国旗と特区旗が掲揚された。

中弁連での掲揚式典 Ⓒ香港01

また、尖沙咀(Tsim Sha Tsui)の九龍清真寺(Kowloon Mosque and Islamic Centre=カオルーン・イスラム・モスク)でも、初めて実施された。香港回教信託基金總會(Incorporated Trustees of the Islamic Community Fund of Hong Kong=香港イスラム信託基金)の主催で行われたもので、在香港エジプト、パキスタン、カタールなどイスラム諸国の総領事館関係者も出席した。近年強化されている「愛国教育」はかくのごとく、イスラム社会にも広がりを見せている。ただ、イスラム系の人たちって、多くは何代も前から香港に住んでる一派だから、「香港人」と言っていいくらいではあるからな。ことさら騒ぎたてる話でもないわな、実際は。

モスクでの掲揚式典。号令はすべて標準中国語で行われた

ほかにも、学校など教育機関や、記念イベントが開催されている各地域の公園でも掲揚式典が行われた。

大埔海濱公園では、大埔(Tai Po)地区の人たちが参集し、回帰26周年を祝う升旗禮が行われた Ⓒ端傳媒
大圍(Dai Wai)地区の教育界団体による慶祝式典では、生徒たちが校内で掲揚式を行った Ⓒ端傳媒

回帰記念日では定番となった解放軍基地一般開放。こちらでも、もちろん升旗禮が行われた。

陸、海、空三軍による国旗掲揚式典 Ⓒ香港電台
こういう模範演武も人気がある Ⓒ駐港部隊

さて、金紫荊廣場での七一升旗禮の後、香港會議展覽中心(會展=Hong Kong Convention and Exhibition Centre)で記念レセプションが開催された。

李家超(ジョン・リー)行政長官は、昨年、習近平国家主席が来港時に発表した重要講話を踏襲し、「一国両制度は何ら変更する理由はなく、長期的に堅持しなくてはならない」と指摘。ここ1年の間に、香港はCOVID-19の脅威から脱却し、本土との出入境も再開、国際的なつながりも復活しており、「香港はすでに『走上復常快車道=正常化の高速道路を前進』している」と語った。

なお、このレセプションには、民主派から唯一、民主党李華明(フレッド・リー)が招待された。李は「祖国回帰は『普天同慶的事(世界共通の祝賀行事)』であり、異見人士も祝賀レセプションに招待されるべきだ」と述べ、民主党から自分だけが招待されるのは残念だと考えている」と語った。政府は政治的立場が違っていても、政府を支援できる多様な人材が存在する可能性を否定すべきではない」とし、政府はこの点について、より寛容であることを期待したいとも述べた。

また、民主党に公式に政府からレセプションの招待状があったかについては、「自分はあくまで一般の党員であり、レセプションに毎年出席しているのは、旧友に会うためだ」と述べた。李は、区議会改革案には不満があるが、すべての政党は選挙に候補者を送り込むべきであり、そうでなければ意味がないと考えていると改めて述べた。

まあ、優等生的発言ではあるけど、結局、こういう「伝統民主派」の典型的な考えは、若者の反発を招く。その結果が、2014年の「雨傘行動」であり、2019年の暴力破壊行動である。

民主派から唯一の出席者、李華明 Ⓒ獨立媒體

ところで、六四の際には「わざと捕まりに来る」人士がわさわさと湧き出ていたが、今回はどうだったか。

87歳の呉老人は、手書きで「廢除國安法例、釋放政治囚犯」と書いたプラカードを持って、そごうの周囲を歩いているところを、約30人の警察官に規制線で囲まれ、約10分後にMTR銅鑼灣駅まで「護送」された。呉老人は、住所と電話番号を聞かれたが、どのような法律違反に関与したかについては、指摘されなかったと述べた。その後、同駅から自宅最寄り駅の油塘(Yau Tong)駅まで警察官2人に「護送」された。その際、警察官らは「今後、何かスローガンがあれば、まずは私たちと話し合ってほしい。あなたが書いたスローガンが国安法に違反するのではないかと心配だ」と語っていたと言う。警察、優しいやん! これについて呉老人は「(自分は)心配なんてしていない」と述べ、「引っ張りたければ引っ張ればいいし、手錠をはめたければそうすればいい」と意気軒高である。

自宅最寄り駅まで地下鉄で「護送」された呉さん。よかったやん、ちゃんと送ってもらえて

六四の時も、妙なパフォーマンスをした「女長毛」こと雷玉蓮。今回もけったいな行動で警察を困惑させた。午後7時ごろ、買い物や食事目当ての市民でごった返す旺角(Mong Kok)の複合ビル「朗豪坊(Langham Place)」付近で、「蝸居(カタツムリハウス)」と書かれたキャンプ用テントを建ててパフォーマンス。「香港の住居の困難さを反映したい」と小さなテントの中に身を寄せ、テントに「長時間労働、狭い家での生活、わびしい」などと書かれた紙を張り付けた。周辺を巡回していた私服警官が所持品を調べたところ、最後の香港総督クリス・パッテンに関する本などを所持していた。その後、女長毛は約1時間だけパフォーマンスすることを許可された。まあ、国安法に触れる文言ではないし、「ほな、1時間だけ好きにさせたるわ」ってところやな。やっぱ優しいな、香港警察。

ちなみに「蝸居」は、家を買うために高いローンを背負う人たちを描いた中国のドラマで、大ヒットした。なお中国語での「蝸居」は、「猫の額ほどのせせこましい家」という意味で使われる。

しかし、変わった人ですな… Ⓒ即立媒體

この日は、15人が取り調べを受けたが、結局逮捕者は一人も出なかった。唯一、逮捕確定の人物がいる。

金鐘(Admiralty)の政府合同庁舎1階の廊下で、焼けた国旗2枚と「黑心醫院」と書かれた共産党旗が見つかった。警察は「国旗侮辱」と認定。中區警區重案組第三隊では、関与したとみられる男性の行方を追っている。まあ、時間の問題でしょう、とっ捕まえられるのは。これは国安法で裁かれるケースやな。

★★★★★

昨年、一昨年は、まだ少し物騒な動きもあった7月1日。特に一昨年は警察官殺傷事件が、人通りの多い銅鑼灣のど真ん中で起きた。それに比べると、なんとも穏やかな7月1日だった。国安法の睨みが利いているというのもあるが、今年はCOVID-19の規制から解放された市民が、「七一折扣」に押しかけたという印象。しかし、こういう日は、人込みを避けて、トレッキングコースで山歩きしたり、近くのビーチへ泳ぎに行く方がいいぜよ。俺ならそうする(笑)。

海上では漁船団が慶祝パレード Ⓒ端傳媒

「デモの無い7月1日」は案外と早く定着し、「普通の祝日」になってゆくんじゃないだろうか…。


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