【睇戲】拆彈專家2

大阪アジアン映画祭も終了し、「しばらく映画は遠慮しとくわ~」って思っても、容赦はしてくれない(笑)。

今回観た『拆彈專家2』、「2」とあるくらいだから「1」もあるわけだが、「近々に行こう」と思ってたところ、あれよあれよのうちに上映終了してしまう。まあ、こういうことはどなたさんにも何度かあると思う。但し、小生の場合は「何度か」どころか「しょっちゅう」なので始末に悪い。別に誰に迷惑をかける話でもないので見逃してもいいんだが、こうして後で「2」が出てくるから悔いが残るというもんだ。

ってわけで、さっさとシネマート心斎橋へ向かったという次第である。

拆彈專家2 邦題:バーニング・ダウン 爆発都市

睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

港題『拆彈專家2』 英題『Shock Wave 2』
邦題『バーニング・ダウン 爆発都市』
公開年:2020年*COVID-19により香港公開は2021年に順延
製作地:香港 言語:広東語
評価:★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):邱禮濤(ハーマン・ヤウ)
編劇(脚本):邱禮濤、李敏(エリカ・リー)、李昇(エリック・リー)
監製(プロデューサー):劉德華(アンディ・ラウ)、林小強(アルビン・ラム)、古玉芬(エスター・クー)
動作指導(アクション監督):李忠志(ニッキー・リー)

領銜主演(主演):劉德華(アンディ・ラウ)、劉青雲(ラウ・チンワン)、倪妮(ニー・ニー)
主演(出演):謝君豪(ツェ・クワンホウ)、姜皓文(フィリップ・キョン)、吳卓羲(ロン・ウー)、馬浴柯(マーク・マー)、黃德斌(ケニー・ウォン)、 鄭子誠(ティモシー・チェン)、洪天明(ティミー・ハン)、袁富華(ベン・ユエン)、劉浩龍(ウィルフレッド・ラウ)、凌文龍(リン・マンロン)、趙永洪(レイモンド・チウ)、蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)、張竣傑(チョン・チュッキッ)、張揚(ジャン・ヤン)

《あらすじなど》

爆弾処理班に所属するフォンは、数々の事件を解決してきたエースだったが、爆発に巻き込まれ左足を失ってしまう。恋人や同僚の助けもあり、義足とは思えないほど身体機能が回復するが、上層部はフォンの現場復帰を認めなかった。仕事一筋で生きて来たフォンは自暴自棄になり、警察を辞めて姿をくらませる。そのフォンが、テロ組織「復生会」によるホテル爆破事件の現場で、重体の状態で発見される。容疑者として病院に収容されたフォンは尋問を受けるが、爆発の影響で過去の記憶を失っていた。そこに、フォンを救い出すべく復生会が乗り込んでくる。「なぜテロ組織が俺を助けるのか―?」フォンは病院から抜け出しひとりで逃亡するが―。<引用:映画バーニング・ダウン公式サイト

いや~、面白かった。ワクワク、ハラハラ、ドキドキとほんの少しの「え?なんでそうなるの?」を絶妙のバランスで観客にお届けする、「これが香港映画だ!」な作品を撮らせたら右に出る者のいない邱禮濤(ハーマン・ヤウ)監督と、「一体、いつまでアイドルなの?」な劉德華(アンディ・ラウ)がタッグを組めば、怖いもんなし。「でや!香港映画やろ、これ!」な作品、一丁出来上がり!ってのが、これ。

長ったらしい、美辞麗句並べてややこしかったかな(笑)。ま、そんな感じです。さすが、邱禮濤監督は香港人の「ツボ」を心得ていらっしゃる。こういうのが「香港の監督による、香港人俳優が主役の、広東語での、香港で撮った、香港人のための」映画というもんだが、COVID-19感染拡大の影響を受け、映画館一斉休業の香港での公開は先延ばしとなり、まずは大陸で公開せざるを得なかった。ようやく香港で公開が始まったと思えば、今度は香港最大の映画館チェーン、UAの突然の店仕舞。「映画鑑賞のスタイルが変わった」ことが「結業(閉店、閉鎖)」の背景にあったようだが、COVID-19は映画のみならず、様々な方面で生活様式を変えてしまった。

左から、邱禮濤監督、女主役で華仔の恋人役を演じた倪妮(ニー・ニー)、そして我らが華仔!

そんなに詰め込んだらついて行けないではないか!ってくらいたっぷりな内容なんだが、ツッコミどころも多々あって、そこがまたいにしえの香港映画っぽくて好感が持てる。ええねん、ええねん、香港映画は小難しいこと考えさせるようではアカンねん。

そもそも「2」とあるけど「1」たる『拆彈專家(邦:SHOCK WAVE ショックウェイブ 爆弾処理班)』とは全く連続性もなく、完全にリセットして「2」を作ったってのが、「1」を見逃した身には嬉しい。「拆彈」とは「爆発物処理」とか「爆弾処理」とかって意味。「專家」は見ての通り「専門家」「プロフェッショナル」なので、中文タイトルを直訳すれば「爆発物処理班」となる。「1」はそれでいったけど、「2」は物語が全く違うので、それもまずいなってわけかどうかは知らないが、今回はこの邦題になったんだろう。

のっけから香港国際空港大爆発シーン!!

かと思いきや、そこは「煽り」で、無事に飛行機は着陸。されど、冒頭でこうして空港のシーンが出てくるってことは、クライマックスに空港が爆破されるの?なんて思ってしまう。なにせ日本語公式サイトやチラシには「迫る核弾頭」なんてあるんで、「え?北朝鮮?」てな想像を巡らせたり(笑)。さてこれからどうなることやら、とちょっと心配だったが、警察ものに転じ、華仔と劉青雲(ラウ・チンワン)の友情物語が始まる。この二人、18年ぶりの共演だったとか。息はピッタリのご両人。と、ここまではよかたんだが…。

《あらすじ》にも記しているが、華仔演じる阿風(フォン)は爆発物処理の現場で片足を失う…。それでも義足を装着し、懸命にリハビリに励み、現場復帰を目指す。ここでの阿風と劉青雲演じる同僚の董卓文との和気あいあいかつ「頑張ればかならず復帰できる!」みたいなやり取りが、かなりベタなやり取りでニコニコしながら観ていたんだが、かわいそうな阿風は面談で現場復帰の道を閉ざされてしまう…。ここから映画は急展開してゆく。

リハビリに励むフォン。しっかし、この吹き飛ばされて喪失した左足、うまいことCGだかなんだかで華仔の足が本当に無くなったように撮ってるね

失意の阿風、片足を失った事故での勇敢な行動の表彰式の場で、やらかしてしまう。すんなり表彰を受けておけばいいものを、あろうことか警察批判をやってしまう。「警隊忘恩負義 用完即棄=警察は恩を知らず、使い捨てする」なんて抗議文?を掲げてしまう…。思うことはあるだろうけど、この場ではまずいよな…。これって、ふと思ったんだが、時折挟み込まれる彼が「抗てんかん薬」を服用するシーンとリンクするのかな…?発作的にやらかしてしまったとか…。でも、てんかんって、こういうことじゃないよな…。あの抗てんかん薬は何の意味があったんだろう…。とにもかくにも、阿風の人生は大きく変わってしまう…。

左側の鄭子誠(ティモシー・チェン)は、1990年代のTVBの超人気ドラマ『真情』での悪人役で人気を呼んだのが懐かしい。今は香港電台第2台『音樂情人』で毎晩、DJやってる。小生、しょっちゅう聴いてるww

さて、小生にとってはとにかく『南海十三郎』のイメージしか沸いてこない謝君豪(ツェ・クワンホウ)演じる「獨行者(Maverick)」率いる「復生會」なるテロ組織にいつの間にやら組み込まれている阿風。「おやまあ!?」って展開だ。その経緯なんぞを知りたいと思いつつ、そこをぶっ飛ばしていきなり阿風をホテルの爆破事件の容疑者にしてしまう荒っぽさもまた、「これぞ香港映画!」な展開で小生なんぞはニンマリしてしまう。昨日まで警察官だった人ですよ(笑)。ま、人によっては「そこ、飛ばさずにきちんと説明してくれよ!」って思うかもしれないが、まあまあ、そう焦りなさんなって、親切なる邱監督は後半に必ずそこをやってくれるから、とね(笑)。

本当に香港を消滅させるんじゃないかって勢いだった「復生會」の中心人物を演じた謝君豪(ツェ・クワンホウ)

負傷したため病院に担ぎ込まれるも、ホテル爆破の容疑者として扱われる阿風。重案組總督察・李長官(演:姜皓文/フィリップ・キョン)の取り調べを受けるも、記憶喪失状態で何も思い出せない阿風…。ここもねえ、「え?なんで?」「ほんまに記憶喪失なん?」ってなもんだが、こういうのは理屈を挟み込んではいけませぬ。相手は香港映画、展開は思わぬ方向にすっ飛んでいくのが常であるから、素直にへーっと思って観てるのがいい(笑)。

取り調べに「わたしは誰?」状態の阿風。このシーンの後、「ボケたこと抜かすな!」とキレまくる重案組總督察の李長官

取り調べを吹っ切って「復生會」の手助けもあって、大暴れの後、病院からの脱走する阿風。しかし何度も言うけど、片足切断された阿風をうまいこと撮ってるなぁと感心。それ以上に義足で走り回って大暴れするんだから、撮影技術は大したもんだし、このありえん展開で物語をグイグイ推し進めていく邱禮濤監督も大したもんだ。「舐めたらあかんで、天下の邱禮濤を!」という、これぞ香港映画の神髄!ってのは褒めすぎたかな(笑)。

警察を去り自動車修理工となった阿風に、テロ計画阻止の協力を申し出る董卓文。劉青雲はこういう役が良く似合う

かくして、復生會による核爆弾で空港爆破、そして香港の破壊という計画が動き出す…。董卓文たちは警察を離れた阿風とコンタクトを取り、この計画を防ごうとする。復生會もバカではなく、このコンタクトをつかみ、逆に復生會のトップMaverickは『水滸伝』を引き合いに出し、「複生會」を梁山泊、自分を晁蓋、組織を「裏切った」とみなされた阿風を宋江に譬えて捕える。『水滸伝』を譬えにするのが興味深い。しかし梁山泊は決してテロ組織ではないぞよ!

ここに至るまでにMaverickと阿風の過去物語が明らかにされる。なんかスカイダイビングなんてやっちゃたりして、お互いの「復讐心」を高め合う。そして二人の過去の関係が明かされる。これまた「へー!」ってところだが、まあ、香港映画によくあるストーリーだわな(笑)。

さあ、とにかくここからは、スクリーンの中では重低音と悲鳴が響き渡る世界が展開される。悪党と警察が撃ちまくるし、駅はこれによって大パニック状態だし、エアポートエクスプレスは暴走するし、青馬大橋は爆破するしで大変なことになるのだが、結局、この橋の爆破により空港の核爆弾攻撃は防ぐことに成功するわけだが…。それと引き換えに阿風もまた爆破の中で命を落とすことになる。その寸前の阿風からテロ対策部隊の元彼女[演:倪妮/ニー・ニー)への「下輩子(来世)でまた会おう」との言葉や、董卓文の最後の会話「お前は先に逃げろ」「だめだ!俺たちは一緒に逝くんだ!」が胸を打つ。あれでわかったよ、「ああ、この映画はこの愛情と友情の物語やったんや」と。

ま、行間にはいろんなメッセージやストーリーも散りばめられてはいたけど、小生、そこはあまり深く考えなかったというか、娯楽にそこは持ち込みたくなかった。しかし、抗てんかん薬は謎だ…。これだけは伏線回収されなかったような…。

ここでようやく女主人公について触れておく。倪妮(ニー・ニー)が演じたテロ対策部隊の龐玲は、先ほどちょこっと記したけど、阿風の「ほぼフィアンセ」だった元・女朋友。阿風の警察内での一連のことがあり、阿風の性格がまるで変ってしまったことにより、別れてしまう…。そんな二人のなれそめが、華仔と倪妮がデュエットする主題歌『相信我』が流れる中で描かれる。なんとも切ないシーンであった。

久々に、エネルギー炸裂の香港映画を観て、スカッとした。脇役陣も達者な手堅いメンバーで固められていたので、引き締まる。上映時間121分は頻尿男子には普段は耐え難い時間なんだが、今作はトイレに立たなかったよ!(笑)。まあそれくらい、引き込まれたってことでよいかな。

《拆彈專家2》正式預告2

(令和4年4月18日 シネマート心斎橋)


←こちらが第一弾。
SHOCK WAVE ショックウェイブ 爆弾処理班

◆特典映像
・特典映像メイキング
・オリジナル版予告編 


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