早いもんで、今年も「大阪アジアン映画祭」が始まった。COVID-19がどんなに猛威を振るおうと、季節は巡りこちらも年を取る(笑)。というわけで、オープニング作はさほど興味のない作品だったので、平日ということもあってパスして、最初の土曜日からスタートした。これもどうしようかな~と悩んだ作品だが、なにせこういう映画祭なんぞで上映される作品とは一生一度きりの場合が多いので、悩むくらいなら観ておこうという次第である。
コンペティション部門
野蠻人入侵 <日本プレミア上映>
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
繁体『野蠻人入侵』 簡体『野蛮人入侵』
英題『Barbarian Invasion』
邦題『野蛮人入侵』
公開年 2021年 製作地 香港・マレーシア
言語:標準中国語、広東語、マレー語
評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):陳翠梅(タン・チュイムイ)
編劇(脚本):陳翠梅
主演(出演):陳翠梅、張子夫(ピート・テオ)、柏榮・裴拉勒(ブロント・パララエ)、李添興(ジェームス・リー)、黃之豫(ジニー・ウーイ)
<作品導入>
出産と離婚を経て、引退したかつての名女優ムーン・リー。以前ムーンと組んでいたロジャー・ウー監督は、彼女に『ボーン・アイデンティティー』東南アジア版のアクション映画に再び主演してほしいと依頼する。ムーンは幼い息子をロジャーのアシスタントに預け、ロー師範の下、出演のため過酷な武術訓練に励む。しかし、ある日ロジャーから、資金提供者の介入により、ムーンの元夫ジュリアードを相手役として起用することが告げられる。<引用:第17回大阪アジアン映画祭作品紹介ページ>
いきなり難解な作品だった。いやさ、小生がボンクラなだけのことで、他の方々はよくご理解されていたのかもしれないが。
監督が主演も脚本も務めちゃう。不案内だったんだが、「マレーシア映画にニューウェーブを起こした伝説の女性監督」なんだそうな。10年間の監督休止期間を経て、これが復帰第1作とな。それだからだろうか、「野心作」という雰囲気が漂う。もしかしたら、自分自身のこと?っていう感じすらする。主人公の女優、李圓滿(ムーン・リー=演:陳翠梅/タン・チュイムイ)も引退していたのを、かつてコンビを組んでいた映画監督、子傑(ロジャー・ウー=演:張子夫/ピート・テオ)に引っ張り出される。10年の沈黙を破って、再び映画を撮った陳翠梅が李圓滿に自己を投影している姿と見えたが、如何に?
子連れの、そして見たところ時代遅れ気味なこの女優は、短期間でスタントを使わない新作に出演することになるわけだが、そのために武術訓練を受けることになる。ここまでマレー語っぽい標準中国語で進んできた物語は、一転して広東語に転じる。マレー語や英語の場面もあり、いかにも多言語入り混じるマレーシアらしい。映画も多言語が飛び交う。この辺が東南アジア映画のおもしろいいところで、言語お構いなしに物語も会話も進む。こんな塩梅だから、字幕の果たす役割も大きいはず。一度は現地の映画館で体験してみたいものだ。
この武術訓練はかなり本格的で、師傳も厳しい人でその弟子たちも容赦がない。最初は青息吐息だった李圓滿も次第に武術をマスターし、弟子たちともなんとか渡り合えるまでに成長する。まあ、そこは映画だから(笑)。と言いつつ、この監督、なかなか根性あるなぁと。その激しい稽古の間、子供は子傑のアシスタントの女性が預かるんだが、ある日、行方不明に。さあ大変と、稽古をおっぽり出して子供探しに翻弄したところ、どうやら子供は気の合う女子を見つけた模様(笑)。
結局、彼女は元夫との共演を拒んで、映画を降りることになるのだが…。このあたりから、作品が「メタ映画」の様相を呈してくる…。子供の誘拐、居場所突き止めるもボッコにされて、海に投棄される。流れ着いた海岸は違法入国者が泳ぎ着く海岸。すっかり記憶喪失の彼女。スマホ修理屋の男性に匿われ…と、あれあれ?これ、現実なの?こんな展開、無茶すぎるんちゃう?などと思っていたら…。「あ、そう来るか」という安心感と「な~んや、しょうもな~、ケッ!」っていう思いとが入り交ざる終盤。って、わからんよね、「こいつ何を言うてんの?」と思われても仕方ないけど、これは実際に観た人同士だけが共有できる感情だと思う。しかしまあ、短期間でなんとか人に見せられる程度身に付いた彼女の武術、なかなかなもんだったんやないかな。
この坊さんとの対話も色々と意味があったんだろうけど、頭の弱い小生にはその意味するところは理解及ばなかった(笑)。あと、子傑が冒頭でこんこんと語る巌流島における宮本武蔵の話も「だから、どうなんよ?」ってねぇ(笑)。これらは伏線なんだけど、「はて?どういう具合に回収されたんでしょうか?」という具合で、どないもこないも、お手上げ状態でおま。一番はなにをもって「野蛮人」なのか…。まあ、なかなか小難しい映画でしたわ(笑)。
しかし…。香港・マレーシア合作映画だが、香港はどの部分にどう絡んでいたんだろう?
Barbarian Invasion – Official Trailer
(令和4年3月12日 シネ・リーブル梅田)
『タレンタイム~優しい歌』[DVD]¥3,344(Amazon.com)
<子傑(ロジャー・ウー)監督を演じた張子夫(ピート・テオ)が音楽を担当する作品>
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歌ってごらん 笑ってごらん すべてを越えて 心は届く
2009 シネマニラ国際映画祭 最優秀東南アジア映画賞
2009 マレーシア・アカデミー賞 最優秀監督賞・最優秀脚本賞・最優秀助演男優賞・最優秀有望新人賞
たくさんの民族が暮らす街で、音楽コンクール“タレンタイム”に挑戦するかけがえのない青春を描いた感動作。
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。