【教協の黄昏】解散を発表

アイキャッチ画像:8月10日、香港教育專業人員協會(教協)は、理事会メンバーが教協總部で記者会見を開き、解散決定を発表した。さて、次なるターゲットは…?(端傳媒)>


てなことで、香港教育專業人員協會(教協)は8月10日、解散を発表した。

まあ、前回記したように、新華社と『人民日報』という「二大『党の口舌』」にケチョンケチョンに言われてしもたら、もう、こうするしか道はなかったってことよ。にしても、脆いな…。

とは言え、無駄な抵抗とはわかっていても、一応、解散回避の手は打ったことは打った。「二大『党の口舌』」に貶された後、「いや、これまでの教協とは一味違いますよ」ってところを見せたかったんかどうかはわからんが、いきなり「中國歷史文化工作組」なんてのを拵えて、「推動正確認識歷史國情」として、正しい国の歴史や国情、文化を認識した子供たちを育成してゆく、なんてのを掲げる微笑ましさ。

中國歷史文化工作組作りました!って告知する教協のHP。前日には、國際教育組織(Education International)を脱退したことも記載されている

これまでの教協の活動からして、連中が「正しい歴史」だの「国情」だのと言うと、やっぱり身構えてしまうよな。そりゃもう顧問が前会長の張文光ってのも「あんたら、笑かしてるんですか?」と言うところだ。なにせ、民主活動の場では必ず顔を見てきたし、立法会功能界別「教育界」で長年、議席を守ってたし、 支連会の幹部でもあった、あの張文光ですぜ、それだけで小生なんぞは「中國歷史文化工作組」とやらに真剣さを感じることが一切できないのだ。と言うか、激しい拒絶反応すら起こす。小生ごときでそうなんだから、中央からしたら「冗談言うな、このタコ!」ってな感じだろうよ。

こちら張文光。まったく関係ないが、このおっさんの顔見てたら、昭和の大阪の漫才師、芙蓉愛花師匠を思い出すのよね…

解散決定を報告する会見で、教協の会長である馮偉華は「現在の香港の社会環境、政治環境の変化は大きくて速すぎる。教協にとっては先行きが見えず、ますます大きくなる圧力下では、解散を決定するしかなかった」と釈明した。解散までの日程は明らかにはしなかったが、多分、1か月くらい後かな…。そんな感じがする。知らんけど…。

会員の資料はすべて破棄。そらそうやろ。会員数は約95,000人で、そのうち約半数が香港の小中学校の教師だという。簡単に「すべて破棄」と言うが、95,000人分の個人資料を簡単には破棄できないだろう。完全に破棄できるまでにどれだけ時間がかかるかは知らんけど、その間、破棄に至っていない会員は国安法の脅威にさらされ続けるってことか? ちなみにこの95,000人は、香港の労組としては最大規模。2位のキャセイパシフィック航空の7,190人の10倍以上の数。民主派だろうがなかろうが、巨大な勢力であることには違いない。

この95,000人、一体、何にメリットを感じて教協に所属したんだろう? 労働組合だから? いやそれだけではない。教協は会員向けのショッピングセンターを開設している。旺角(Mong Kok)と銅鑼灣(Causeway Bay)、荃灣(Tsuen Wan)の3か所にある。小生は、銅鑼灣のショッピングセンターの前をよく通っていたんだが、てっきり教協のオフィスかなんかだと思っていたら、実は「服務中心(サービスセンター)」「超級市場(スーパーマーケット)」「購物中心(ショッピングセンター)」だったと。教員向けの生協みたいなもんやな。どれだけ安いのか知らないが、これは会員の大きなメリットだったはずだ。

購物中心の内部はこんな感じらしい by “香港01”

すでに解散の報を受けて、買い物客が殺到しているとのことで、在庫一掃セールの必要もないかもね(笑)。解散により、こういう福利厚生もなくなるわけで、ざまー見ろ!ってところだ(笑)。このほかにも、中医、西洋医の医療センターや物理治療診療所もあるっていうから、至れり尽くせりだったわけだ。そりゃ協会から「今度の日曜、デモに行ってくれ」と言われたら「お安い御用!」とばかりにホイホイ繰り出すわけだ。そして半数の小中学校の教師が児童・生徒に「君らもなあ、社会勉強や、デモに行きなさい」と言ってデモに動員してきたわけだ。ホント罪だね~。

2019年8月17日、すでに「逃亡犯条例」は政府が引き下げたにもかかわらず、教協が音頭を取って教師による「守護下一代、為良知發聲(次世代のために良知の声を上げよう!)」デモが実施された by ”端傳媒”

蘋果日報』廃刊、此度の教協解散、恐らく近々には民間人權陣線(民陣)も解散するだろうし、香港市民支援愛國民主運動聯合會(支連会)も前途多難…。さて、国安法の次なるターゲットはどこになるか? 巷では香港の労組の連合組織「香港職工會聯盟(職工盟)」ではないか、とのことだが、うん、大いにあり得るな。あそこも問題組織であるからな…。


チョンキンマンション: 世界の真ん中にあるゲットーの人類学』(青土社)ゴードン・マシューズ (著)、宮川陽子 (翻訳)

世界有数のメトロポリス、香港。グローバル経済、文化の中枢を担う大都会の一角に、ひとつの巨大な雑居ビル、チョンキンマンション(重慶大厦)がある。17階建てのそのあやしげなビルには、毎日100か国以上の人びとが行き交う。なぜ世界中のバックパッカーや商人たちは、チョンキンマンションをめざすのか。そこでどんな取引がなされているのか。長年にわたり現場に通い続けた人類学者が丹念に描く、もうひとつのグローバリゼーション。


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