【睇戲】続 番頭はんと丁稚どん

浪花の名女優 浪花千栄子 アンコール

大好評だった「浪花の名女優 浪花千栄子」。NHK朝ドラ『おちょやん』で浪花千栄子が改めて脚光を浴びたことで、往時を懐かしむ世代にのみならず、ドラマで初めて名前を知った若い世代まで、古いモノクロ映画を観るためにシネ・ヌーヴォに繰り出したという現象。まあ、小生も一気に多くの作品を観たわけだが、「もうちょっと観たいなぁ」という気持ちもあったわけで。そんな心の底を見透かしたかの如く、シネ・ヌーヴォでは間をほとんど空けずに「アンコール」をぶつけてきた。親切な映画館である(笑)。今回は上映全6作品の中で2作だけチョイスして観ることに。まあ、色々都合もあるんですよ、ヒマに見えるけど(笑)。この日は崑ちゃんが主演のシリーズ二作目『続 番頭はんと丁稚どん』を観た。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

続 番頭はんと丁稚どん

邦題『続 番頭はんと丁稚どん』
公開年 昭和35年(1960) 製作地 日本
製作:松竹京都 配給:松竹 言語:日本語
総天然色
評価

監督:的位邦雄 原作:花登筐
脚本:花登筐、山根優ー 撮影:太田喜晴
美術:桑野春英 音楽:大森盛太郎

出演:大村崑(二役)、芦屋小雁(二役)、芦屋雁平、芦屋雁之助(二役)、浪花千栄子、浅茅しのぶ、三浦策郎、九条映子、三角八重、乃木年雄、榎本健一、森川信、ザ・ピーナッツ、水原真智子、川口京子、天津七三郎、桂小金治、若水ヤエ子、花紀京、和田弘とマヒナスターズ

【作品概要】

1959年に開局したばかりの毎日放送で最高視聴率82%を記録したお化け番組の映画化第二弾。楽しみにしていた天神祭の当日、崑松(大村)は集金を言いつけられるが、集金袋を取り違えて…。大村崑が丁稚とサーカス団員の二役で大活躍。団長はエノケン、本人役でザ・ピーナッツも登場する豪華版。人情味溢れる「大阪のお母さん」=浪花のご隠居はんも健在。<引用:シネ・ヌーヴォ特設サイト

1作目はモノクロだったが、本作からはカラーになる。前作が昭和35年5月20日の封切りで今作は、わずか3か月後の8月21日の封切り。松竹の「夏休み娯楽大作」というところか。もちろん、テレビの中継も好調で、出演者は殺人的スケジュールをこなしていたのが、容易に察せられる。「売れっ子」とはまさにこういう状態の大村崑芦屋兄弟のことで、今、ここまで「売れっ子」の上方喜劇人はいないね。もちろん、テレビ、映画を同時進行ってな番組もないし、全国的大ヒットの「上方喜劇番組」というのも絶えて久しいからね…。

出演陣もちょっとシャッフルしている。薬問屋七ふく堂の旦那はんが森川信から三浦策郎に。三浦策郎は花登筐のドラマでちょいちょい顔を見た人だが、覚えている人は少ないだろうな。頼りない婿養子には森川信より向いているだろう。一方の森川信は、崑松が紛れ込んでしまうサーカス団のピエロ役で出演。化粧しているからわからないけど、声が森川信だ(笑)。サーカス団の団長がエノケンこと榎本健一。この団長の息子を崑ちゃんが二役で。また、ザ・ピーナッツOSKの皆さんがサーカスのメンバーとして出演している。もちろん、和田弘とマヒナスターズも、1作目同様にお向かいの丁稚役で出演している。

浪花のおかあはん演じる隠居はんが、実質、店を取り仕切っているのは前作通り。旦那はんは隠居はんにも御寮はん(演:浅茅しのぶ)にも頭上がらんし、娘のかな子(演:九條映子)にも何かとからかわれる始末。騒ぎの発端とも言える、天神祭りで店を休むかという決定も隠居はんの判断。騒ぎを起こして行方不明の崑松を「謝らいでよろし。サーカスに出張してたんや」と慈悲の言葉を投げかけるのも隠居はん。ほんま隠居はんあってこその七ふく堂でおますな(笑)。

七ふく堂一家で言うと、御寮はんの浅茅しのぶと娘の九条映子は小生好み(笑)。アイキャッチの写真で、左から3人目が御寮はんの浅茅しのぶ、その右が娘の九条映子。顔でいくと浅茅が好きで、性格や言動でいくと九条というか、娘のかな子がよい。今作、浅茅の出番は非常に少なくてちょっと残念だったが、九条は前作同様にアグレッシブに動き回って、「現代っ子」を見事に演じている。

で、崑ちゃんの二役だが、場面によってはどう考えても「影武者」やろ!というのがある。二人が並んでるシーンなんてのはその典型で、現代の映像技術ならなんでもないことでも、60年前には不可能だったわけで、この影武者が誰かが気にはなる。そこはもはや崑ちゃんご本人に聞くしか手立てはないだろう。ただ、当時はそんなんどうでもよく「ようできてるな~」と観客はひたすら感心していたのは、容易に察せられる。崑ちゃんのほか、雁之助小雁もラーメン屋台の親子で二役出演している。

出演者の左端に「劇団笑いの天国」とあるが天国でなく「王国」が正解。昔はこういうミスがいたるところにあったが、そのまま世に出ていた。とにかく大らかで無頓着な時代

前作では七ふく堂の女中だった若水ヤエ子が「日本未来研究所」なる怪しげな研究所の所長役で出演。助手数名の中には当時、花登筐の「劇団・笑いの王国」に参画していた花紀京もいたらしいが、よくわからず。この研究所、崑松がサーカスで綱渡りが怖くて「うんてい」みたいなことになってしまい、落下したのが、丁度魚屋が配達してきた氷と魚の上で、そのために瞬時に「冷凍人間」になってしまうという、落語みたいな展開があって、ピエロの辰(演:森川信)に運び込まれた先である。ロケット式原子力治療(だったかな?)とやらで、なんか機械の中に入れられて解凍されるのだが…。頭の悪いものは良くなり、良いものはバカになる副作用もあるとのことで、出てきた崑松は超天才少年に(笑)。小生は本作でこのあたりの展開が非常に気に入っている。なんかこういうバカバカしさが懐かしいのだ。公開時、映画館の客席が爆笑で波打っている様が頭に浮かぶ。この数年後に小生は世に出(いずる)わけだが、そういう時代だったというのは、よくわかる。で、まあ、ほどなく崑松は元の状態に戻るわけですが(笑)。もう安心と安定と信頼の笑いのパターンな、これ(笑)。

そう言えば、崑松の幼馴染、猿の三ちゃんがサーカスに居て、崑松と涙の再会。崑松はアホだが、動物と会話ができるという特殊な技能の持ち主である。サーカスでは、三ちゃんが何かと崑松の世話を焼く(笑)。この三ちゃんも不思議だ。恐らくチンパンジーなんだろうが、やけに人間じみた動きをする。特に、崑松をおんぶして線路を歩くシーンなど、どう見ても人間だ(笑)。よっぽど小さい人か子役さんが「中の人」だったんじゃないかな?これまた崑ちゃんに聞かないとわからないハナシだ。こういう話が聞きたいので、ヌーヴォさんには、ぜひともまだまだ元気ハツラツな崑ちゃんと小雁ちゃんを招いて、ご両人の出演作一挙上映企画を組んでもらいたい。よろしくひとつ!

ストーリー的には、お遣い先でポカかまして責任感じた崑松が行方不明になり、七ふく堂は大騒ぎ…という、簡単明瞭なもので、まあそこはテレビと掛け持ちの上、前作からわずか3か月後の公開ということで、難しいことやってられんというのもあったのでしょうな。

面白さという点では、前作に及ばないと思うが、路線にはゆるぎないものを感じるし、何と言っても映画全盛時代の「ヒットシリーズ増産」の代表作の一つとして、昭和30年代の大阪喜劇の一コマとして、しっかり記憶にとどめておきたい作品。そして、何と言っても我らの世代でもなお、崑ちゃんは毎日どっかのテレビに出て、CMでもおなじみの大スターなのである。

(令和3年8月4日 シネ・ヌーヴォ)


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