【上方芸能な日々 文楽】令和3年夏休み文楽特別公演 第三部

人形浄瑠璃文楽
令和3年夏休み文楽特別公演 第三部

三部は夏芝居の定番中の定番、『夏祭浪花鑑』である。

いや~、今回は特別に良かった。なんせほら、この2年間、「夏祭」っていうのがことごとく中止になってるでしょ、その中であの地車囃子聴くと、居ても立っても居られなくなる。凄惨な殺人事件を目の当たりにして「ひぇ~」って思っている尻からお客さんみんな、地車囃子にウキウキしてしまうのだから、大阪人によっぽど合ってるんやな、あの音、あのリズムは。なにより、床も手摺も迫真の「長町裏」で、久々に舞台と客席がスイングしているのを体感したよ。ってわけで、小生はコロナ禍の不安の中にもかかわらず、2回見物に行きましたわいな。『夏祭~』は何回も観てるけど、今回の舞台は何べん観てもええな。ほんまよかったわ。

と、これだけ書いておけば十分なんだが、それじゃ付き合い悪いんで、ちょっとだけ見物の感想なんぞを(笑)。

7月19日のお座席からの眺め。最近は緊縮財政につき、二等席から見物することが多い。舞台全体が見渡せるのはいいんだが、どうしても浄瑠璃が遠くなってしまうのが難点

夏祭浪花鑑

住吉鳥居前の段

 口 碩 錦吾

碩は着実に力をつけているのを実感できる。まだ声は「浅い」と言うか「奥行き」が無いと言うかそんな感じを受けるも、「間口」にはキャリア以上の「広さ」を感じる。錦吾のリードもよかった。

奥 睦 團七

まあ、團七師匠が引っ張ているのは当然として、睦はこういう場面にはふさわしい語りをする。声が大きいので、ツケがバンバンと鳴る場面をよりダイナミックに聴かせてくれる。最近は声がしわがれてしまう場面もめっきり減った。そういうことなので、お辰の一輔ももっと大胆にやってもよかったんじゃないかと。

釣船三婦内の段

 口 咲寿 寛太郎

よいコンビ。この二人がまだほとんど子供だった時から観ているが、すっかり安心して聴けるようになっていることに歳月を感じる。夏休み公演ならではのコンビかもしれないが、上手い感じにはまっているので、これからも聴きたい組み合わせ。咲寿の詞章に乗っかってゆく寛太郎の三味線が会話しているようで面白かった。

奥  宗助

三婦に「なぜ男には生まれて来ぬぞい」と言わしめるほどの義侠の女、お辰を錣太夫がどう語るか…。この人は情をじわ~っと感じさせる語りをする人と思うので、果たしてお辰はマッチするのか、と興味深く聴いていたが、そこはそれ、義侠の女の持つ「じわ~っとくる情」引き出して、錣太夫の「お辰像」を聴かせた。宗助の三味線もそれによく乗り、清十郎のお辰にもその辺がよく表れていて、聴きごたえ、見ごたえのある段になっていた。しかしまあ、この後惨殺されるわけだが、義平次っちゅうのはホンマやらしいクソ爺やな…。錣さん、こういう奴も上手いねぇ。

長町裏の段

団七 織 義平次 三輪  藤蔵

もう、何も言うことなしの長町裏。お客さん、皆さん前のめり。芝居が進むにつれて前のめりの角度もどんどんついてゆく。書く申す小生も、アホみたいにポカーンと口開けて舞台にくぎ付け。マスクしてるからアホの口、見られんでよかった(笑)。

何と言っても玉男さんの団七がかっこええ。かっこよすぎる。殺される玉志さんの義平次の憎たらしさも相まって、凄惨な殺しの場面なのに、目が離せないのだ。手摺が圧巻なら床も圧巻。織さんの団七が人形を一層引き立たせる。もちろん、三輪さんの義平次もこの人でないとできない厭らしさ、憎たらしさがあってゾクゾクしてくる。そして時に激しいビートを響かせ、時に泥場の泥と血と汗のぬめりを感じさせる藤蔵の三味線。と、一級品がそろった長町裏。

これに地車囃子、大阪市南部の夏祭にかつては欠かせなかった「だいがく」、ツメ人形が担ぐ「高速神輿ww」、「ちょうさ、ちょうさ」の掛け声…。ここ2年、大阪から消えた「夏」が舞台の上だけだが戻って来た瞬間でもあった。

冒頭でも記したが、久々に舞台と客席のスイングを感じた。このスイングがとても心地よかったので、千秋楽にも第三部だけ見物に行った次第だ。いやー、よかったわぁー!

千秋楽のお座席。この日もやっぱり二等席。けち臭い野郎やなと笑ってくださいまし(笑)

勘十郎さんが人間国宝に認定されたことは、第一部の観劇記で記したが、千秋楽、第三部に向かっていたら、丁度、帰りの車に乗り込む前の人間国宝に遭遇したので、「おめでとうございます!」と声をかけた。「この度の人間国宝認定」と頭につけるのを忘れたから、「こいつ何をめでたい言うとるねん?」と思われたかもね(笑)。祝意を伝えるときは、ちゃんと伝えましょうね、皆さんも(笑)。

(令和3年7月19日、8月3日 日本橋国立文楽劇場)


人形浄瑠璃文楽名演集 夏祭浪花鑑 [DVD]

国立劇場の協力により人形浄瑠璃文楽世話物の名作「夏祭浪花鑑」をDVD化! 人間国宝や今は亡き名人らの名演を収録した決定版! ! 「夏祭浪花鑑」は、人形浄瑠璃全盛期(18世紀半ば)に初演され、現在も代表的な夏狂言として上演される名作である。「三婦内・長町裏(通称「泥場」)」以外の段が復活されて、作品の全体像が明らかになるのは戦後のことである。このDVDでは、復活された段を含む全段に加え、特典映像として、和田勉が演出したスタジオ収録の貴重な「長町裏」も収める。

最近は全く上演されなくなった「内本町道具屋の段」、「道行妹背の走書」が収録されている!


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