【睇戲】「香港、アイラブユー」短編集(港題:我真係好_鍾意香港系列)

2021香港インディペンデント映画祭 in 大阪

この日は短編8本立てを観る。日本語では「香港、アイラブユー」短編集だが、広東語タイトルは「我真係好_鍾意香港系列」である。好と鐘の間が伏字になっているが、これは2019年の「反送中」デモの際にデモ隊のスローガンの一つになった「我哋真係好撚鍾意香港」のに当たる部分。「ワイらは香港のことがクソ大好きやちゅーねん!」とでも訳すか(笑)。撚は広東語の「粗口(ちょうはう)」すなわち、言うてはいけない卑俗な言葉で、男性性器を指すものだが、用法としては最上級、超級となる。広東語にある程度慣れれば教えてもらわなくても「はは~ん、そうか」って感じが段々わかってくるから、スラングと言うのは面白い。で、そのまんまじゃ何かと波紋を広げるから伏字にしたんだろうけど。

「民主化が!」「中国がーーー!」ってガチな作品ではなく、「なかなかどうして、香港も香港人もいいもんですよ」って作品が並ぶ。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

暴動の後、光復の前 港題:暴動之後,光復之前

港題『暴動之後,光復之前』 
英題『After the Riots, Before the Liberation』
邦題『暴動の後、光復の前』
公開年 2020年 製作地 香港
言語:広東語

評価 ★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):姚仲匡(イウ・ジョンホン)

【作品概要】

劇映画でもなくドキュメンタリーでもなく、エッセイ映画という形で香港抗争運動の歴史が語られ、描かれる。<引用:2021香港インディペンデント映画祭公式サイト

香港の街を破壊したり放火したりの日々だった2019年後半。それが「民主を勝ち取るため」という声もあれば、「やってることは全然民主的じゃない」という声もあった。ただ、声が大きく暴力で反対意見を抑え込む前者に対して、後者は声を上げられずにいたという日々。そんな日々への「自問自答」「問答」を15分間の短編に仕立てた実験的な作品。その意欲や表現の仕方は良いのだけど、退屈したというのが正直なところ。

尋ね人 港題:尋人啟事

港題『尋人啟事』 英題『Missing』
邦題『尋ね人』
公開年 2020年 製作地 香港
言語:広東語
評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):朱家誠(チュウ・カーセン)

主演(出演):盧鎮業(ロー・ジャンイップ)

【作品概要】

父から引き継いだレストランの壁の一角に、隙間なく貼られた「尋ね人」の貼り紙。兄妹はごく最近おきた出来事によって、行方不明になったり、香港を離れたりした多くの人々の複雑な思いを知る。<引用:2021香港インディペンデント映画祭公式サイト

観終わって、ほっこりする作品。盧鎮業(ロー・ジャンイップ)の醸し出す「ほっこり」さによるところ大だろう。妹が仕掛けている「尋ね人」の貼り紙を表面的には冷めた目で見ている兄だが、両親が離婚した少年の父を思い慕う気持ち、会わせまいとする母親の言い分にも触れて、貼り紙の見方に変化が生じて行くところが、なんとも人情噺な面がある。17分という時間だからこそできる「ちょっといい話」的な作品で、けっこう気に入った。

ラブレター 港題:和你寫一封情書

港題『和你寫一封情書』
英題『Loves, with Love』

邦題『ラブレター』
公開年 2020年
製作地 香港

言語:広東語
評価 ★★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):陳寶雯(ジョミン・チャン)

主演(出演):陳健朗(チャン・キンロン)、Aka、嚴尚志、博塏晴(サリーナ・ボッグス)、邵美君(ルナ・ショウ)

【作品概要】

幼馴染の少女が年上の男性にラブレターをわたすのを目撃する─ 少女に片思いをした少年の心の移り変わりを描く珠玉の短編。<引用:2021香港インディペンデント映画祭公式サイト

大澳(Tai O)の光景がいい。「香港最果て」の漁村の幼い二人のラブストーリーが微笑ましい。小太りの男の子、王希之役の嚴尚志、ちょっぴりお姉さんぽい米米役の博塏晴(サリーナ・ボッグス)の子役二人が好演。米米が一通のラブレターを託したSam哥(サム兄さん)役は、大阪アジアン映画祭で上映された『手巻き煙草(港:手捲煙)』の監督、陳健朗(チャン・キンロン)。Sam哥は中秋節の前夜、そのラブレターをある人物に渡すため、刑務所に向かう…。いくつかの場面、Sam哥の言葉の端々にある種のメッセージ性を感じる。ある人は一連の暴力破壊活動を連想するかもしれないし、ある人は別のことを思うかもしれない。観た者それぞれが答え探しをすればいい、と思う。今回の映画祭で最高の作品かな。

初めての夜 港題:第一晩

港題『第一晩』
英題『Blue Hour』
邦題『初めての夜』
公開年 2020年
製作地 香港
言語:広東語
評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):葉兆聰(サム・イップ)

【作品概要】

宅配デリバリー「フードパンダ」の配達員になった父の初出勤の夜、息子と一緒に食べ物を客に届けに行くと、そこで思わぬ出会いが あった。<引用:2021香港インディペンデント映画祭公式サイト

これもすごくいい。希望を感じさせる父子の物語。父親は多分、失業してフードデリバリーの仕事を始めたんだろう。そこに時世を感じる。フードデリバリースタッフの最初の夜のこと。新しい仕事に戸惑う父親は11歳の息子にナビを頼む。二人が協力してデリバリーをこなす。そんな中、息子を見失う父親…。父と子が再会した時、姿を消した息子の事情が泣かせる。再びバイクにまたがり、高架道路を走って次の目的地に向かう父子の背景に広がる香港の街並みに、「よし!」と思わず自分を鼓舞したくなる。

1994年の秋 港題:四四年秋

港題『四四年秋』
英題『Days of Fall』
邦題『1994年の秋』
公開年 2020年
製作地 香港
言語:広東語
評価 ★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):陳志昇(フィッシャー)

【作品概要】

1944年の秋、日本軍に占領された香港で、イギリス軍の逃亡を手伝った香港の若者が一人の少女と出会うことで、彼の運命が大きく動き出す。<引用:2021香港インディペンデント映画祭公式サイト

この短編集で一番わからんかった作品。極限状態に置かれた人間の考察みたいなことでよろしいかな? 「へー!」と思ったのは、戦時中、新界の人が九龍や香港島へ行くことはまずなかったということ。主人公の女性は、兄が尖沙咀(Tsim Sha Tsui)へ行商に行くことがあって、市街地がどんなところか聞いたことがある、ってなことを言ってた。70年ほど前まではそんなもんだったんだな、と。他は「う~ん」と頭を抱えるしかなかった。

ホワイトナイト 港題:天暗亦明

港題『天暗亦明』 英題『White Night』
邦題『ホワイトナイト』
公開年 2020年
製作地 香港
言語:広東語
評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):周敬勤(チョウ・キンカン)

主演(出演):吳秉宸、黃詠琪

【作品概要】

ある香港人女子大生が台湾に引越した。彼女に興味を持つ隣人の台湾人男性が急接近。やがて彼は彼女の秘密を知ることになる。<引用:2021香港インディペンデント映画祭公式サイト

香港映画だけどロケ地は台湾。俳優も知らない人だけど、多分台湾人。で、この引っ越してきた香港の女子大生、かなりワケありな様子。ま、わかりますね。引っ越したと言うよりは逃亡してきたと言うべきで、なのでテレビの香港のデモ報道に敏感。あの当時、こういう連中多かったね。逃げれるやつはそれでいいかもしれないが、逃げる術のない多くの子たちがデモ現場、あるいはその後に警察に連行され、さらには罪に問われるケースも少なくない。逃げ延びた連中に問いたい。「そこに思いを馳せているのか?」と。

町へ出よう 港題:出去

港題『出去』 英題『Going Out』
邦題『町へ出よう』
公開年 2020年
製作地 香港
言語:広東語
評価 ★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):姚敏堃(ジェイソン・イウ)

【作品概要】

香港の元朗駅構内で、2019年7月21日の夜、白色のTシャツを着た集団が、人々を無差別に襲撃した「白服集団無差別襲撃事件」が起きた。その夜におこったある出来事をパロディとして描いている。<引用:2021香港インディペンデント映画祭公式サイト

これも「……」というところか。まあ、元朗の一件はさておき、阿Manみたいに部屋の中で暴力破壊集団をコントロールしてた奴がいたかと言えば、いなかったわけで、そんな奴がいたとしても外では実践的な行動はできなかっただろうし、実際にコントロールできる人間がいたら、あんな暴動にはならなかったと思う…。着眼点、テーマはなかなか面白かった。

レモン、牛乳 港題:檸檬,牛奶

港題『檸檬,牛奶』
英題『Lemon Milk』

邦題『レモン、牛乳』
公開年 2020年
製作地 香港
言語:広東語
評価 ★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):陳惠沂(ワイリー・チャン)

主演(出演):伍詠詩(ン・ウィンシー)、盧鎮業(ロー・ジャンイップ)

【作品概要】

未来の香港。ある若い女性が保険会社の入社テストを受ける。限られた時間の中、顧客の問題を解決しなければならない。やがて彼女の目の前の顧客たちが実はアンドロイドだと気づく。<引用:2021香港インディペンデント映画祭公式サイト

伍詠詩(ン・ウィンシー)ヴァージョンのポスターもあったけど、盧鎮業(ロー・ジャンイップ)好きなんで、こっちにしとく(笑)。伍詠詩は『逆さま(港:逆倒)』に主演した女子。今回は面接に来た女性役。ずいぶんと雰囲気が違う。上記概要にあるように、相手にするのは全てアンドロイドなんだが、彼女の尖った耳もまたアンドロイド的な特徴ある形。近未来の世界を描いた風刺的な意欲作。面白いんだが、ちょっと伝わりにくさもあった。盧鎮業の役割がわからん…。

映像の見つらなかったのもあります。「探すのが下手」と子供のころから散々言われているので(笑)。見つけた人、教えてください!

(令和3年6月23日 シネ・ヌーヴォ)



 


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