【上方芸能な日々 文楽】令和3年4月公演<第一部>

人形浄瑠璃文楽
令和3年4月公演<第一部>

例年なら、春公演初日には劇場前の桜が満開か満開目前なんやけど、今年は季節のめぐりが早く、すでに盛大に散り始めていた。あまり記憶にないなあ、このスピードは。

そして、青天の霹靂とでも言うか、あまりの突然のことで、びっくりする暇もなく、その場で千秋楽のチケットを抑えた一大事、簑助師匠から引退の表明が公演半ばにあった。5月の東京公演には出演されないということで、千秋楽が正真正銘、吉田簑助最後の舞台となる。

その一方で、世の中は、大阪はCOVID-19の感染拡大に歯止めがかからず、連日1000人を超える感染者が確認され、3度目の緊急事態宣言も時間の問題となってきた。「どうか、千秋楽だけはなんとか!」の願いもむなしく、千秋楽となった4月25日から緊急事態宣言が発動されることとなり、千秋楽は1日繰り上がってしまった。

なんと嘆かわしいことだろうか…。小生が簑助師匠の舞台を観た最後の日は、今公演の初日となってしまった…。『国性爺合戦』という演目の特性もあって、舞台全体を見渡せるようにと、あえて後方の二等席から観たのだが、前の方から観ておくべきだったと後悔しても、初日は戻ってこない…。そんな次第で、大変悔いの残る春の公演となってしまった。簑助師匠、『国性爺合戦』については後述するとして、まずは第一部から、あれこれ突っ込んでいくとしよう。

花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)

万才・海女・関寺小町・鷺娘

錣、芳穂、希、靖、碩、文字栄
宗助、清馗、寛太郎、錦吾、燕二郎

全体的には錣はんと宗助はんでしっかりまとめて「後の人、付いといでや~」って感じ。ただ、「ついといでや~」って言われた(実際に言われたわけじゃないよw)側も、ついて行くだけで済ませずにしっかりと聴かせていた。景事なんで、ここは人形に注目。

万才> 太夫/簑紫郎、才蔵/玉勢 「おお~!すごいやん!」というものはないが、適格で安心感のある遣いよう。玉勢はこのところの注目株。着実に向上していると感じる。<海女> 勘彌 ここは人形よりも、海女にちょっかいを仕掛ける蛸にばかり目が行ってしまう。まだまだお子様な小生(笑)。
関寺小町> 簑二郎 関寺小町と言えば、故・文雀師匠を思い出す。小生含めそういう人が多いので、ここは大変。簑二郎はんも悪くないのだが、その点で損な持ち場。
鷺娘> 清十郎 相変わらず立ち姿の美しい人。鷺娘を遣うにふさわしい。場面は真冬にもかかわらず、華やかで明るい舞台に引き込まれる。

下の展示室では「文楽の景色」という展示が開かれていた。せっかくなんだから、もっと『花競四季寿』とリンクさせればよかったのに。『小鍛冶』であれほどまでのことをやってるんだし…。なんか奥ゆかしいというか遠慮気味なんよね(笑)。

本来なら、この幕間で各賞受賞者の表彰が行われるんだが、三部制ではそれをやる時間もなく、受賞者名がロビーに掲出されるのみ。

ま、妥当な無難な…。どうしても「持ち回り感」が否めない。「出でよ!新しい力!」と叫んでも、人がいないのだからどうしようもない。ただ、嬉しいことに、研修を終えた太夫君二人が錣はんと呂さんに入門した。順調にいけば夏休み公演あたりでお目見えかな?

 

恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)

文楽劇場では平成23年(2011)の秋公演以来。結構開いたねえ。そんなにやってなかったかな…。その時は休演した嶋さんの代演で呂勢が出て、「おお!」と思い、素浄瑠璃の会では今の錣はん、当時は津駒はんがやっていたく感動した。今回は睦~咲さんのリレー。

「道中双六の段」

睦 ツレ 咲寿  勝平 ツレ 清公

床は芯はもちろんツレの二人も悪くない。多分それは、この物語を小生が好きだからそう感じたことによるところも、大きかったと思う。加えて、和生はんの重の井。この重の井があったからこそ、床もよく聴こえたと言っては、四人に失礼か?いや、そう言いたいほど、絶品の重の井。

「重の井子別れの段」

咲  燕三

「大和風」だそうで…。故・寛治師匠は以前、「素浄瑠璃の会」の解説で「マクラの『お側の衆に囃されて幼心の姫君』のところですとか、大和風を意識して、ふわぁっと音に乗っていくんです」と宣ったが、この「風(ふう)」というのが、ようわかりませんねん。言われてみて「ああ、そうなんか…。そうも聴こえるかな?」って程度で(笑)。こういうのがちゃんとわかれば、もっと楽しめるんやろうけど、40年文楽通ってわからんねんから、金輪際無理やろな、そういう境地に達するのは(笑)。

で、絶品の重の井で床がよく聴こえた「道中双六」と違い、こちらはさすがの咲さん&燕三はん。ただただ、三吉に泣かされるばかり。一連の重の井と三吉のストリーは、小生にとっては文楽三大涙の傑作のひとつ(あとの二つは…考えときますww)で、ハンカチが手放せない。その健気な三吉を玉彦がよく遣えていた。咲さんと燕三はんに乗せられるのは、客席だけでなく手摺も同様らしく、その融合というか化学反応というか、そういうんが、感じられる好演だった。「重の井、三吉親子に幸あれ!」と祈りたい…。と、平成26年7月5日の「素浄瑠璃の会」のブログの締めでも同じようなこと言ってる(笑)。

(令和3年4月3日 日本橋国立文楽劇場)



 


コメントを残す