第16回大阪アジアン映画祭
今年の大阪アジアン映画祭も、この日を入れてあと二日。毎年、10本前後を観るという怒涛の二日間となるのだが、今年は「これ観たい、あれ観たい」という作品が平日に微妙に分散していたせいもあり、比較的おとなしい二日間である。というわけで、この日二本目にして打ち止めの作品は中国映画。と言っても、潤沢な予算のもとで製作された超巨編というものではなさそうで、青海省のチベット族の若者を描いたチベット映画だという。なかなか目にすることのない青海省という土地や、そこに暮らすチベット族を知るいい機会になれば…。
コンペティション部門
君のための歌 中題:他與羅耶戴爾 <海外プレミア上映>
中題簡体『他与罗耶戴尔』中題繁体『他與羅耶戴爾』
英題『A Song for You』
邦題『君のための歌』
公開年 2020年 製作地 中国
言語 チベット語、標準中国語
評価 ★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):德格才譲(ドゥッカル・ツェラン)
領銜主演(主演):旦正才譲(ダムティン・ツェラン)
主演(出演):班瑪加(ペマ・ジャ)、旺卓措(ワンドル・ツォ)、扎西多杰(タシ・ドルジェ)
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
【作品概要】
青海省同徳県。遊牧民の青年ガワンは、いつの日か歌手として成功することを夢見ている。ある日、街で開かれた歌唱コンテストに参加した彼は、美しい歌声を持つ女性歌手と出会うが、名前を聞き出せぬまま別れてしまう。「本物の歌手と認められるには自分のアルバムを出さなければならない」と彼女にアドバイスされたガワンは、ひょんなことから、自分が肌身離さず身に着けてきたお守りに描かれた音楽の女神と彼女がうり二つであることに気づき驚く。そして彼はアルバムを制作するため、都会の西寧を目指して旅立つが…。<引用:大阪アジアン映画祭作品紹介ページ>
青海省は、中国西部に位置する省。省都は西寧市。1928年に青海省成立。省名は、省内に国内最大の内陸塩湖・青海湖があることにちなむ。居住する民族は、54%の漢民族に次いで多いのがチベット族の23%。回族も多く、16%が住まう。「少数民族ふれあい紀行」を趣味とする小生としては行ってみたい土地ではあるが、多分行くことはないだろう(笑)。高地のためか、作品の描く世界は雪と氷の世界である。一方で都会の場面は乾燥した空気を感じさせる。な~んとなく、青海省の気候がうかがわれる絵作りだった。ま、それを感じることができただけで良しとするか、みたいな…(笑)。
とにかく「う~~~ん」な作品だった。
何と言っても、出演者にこれほどまでになじみがないと、これほどまでに作品を楽しめないものなんだなあといことを終始思いながらエンドロールを迎えた。描いていることはよくわかるし、ガワンの気持ちが「伝統と革新」の狭間で大きく揺れ動いていることもしっかり確認できた。それで十分じゃないかと言えばそうではあるんだけど、もうちょっとパンチの利いた作品だと期待していただけに、「あれれれ?」ってところだ。
とは言え、青海省の雄大な自然は素晴らしく、また、省都・西寧の大都会っぷりは、かつて鄧小平が「中国中に香港を作る」と言ったことを思い出すほどのもので、「ああ、これは若いガワンが揺れ動くのも仕方ないよな」というところ。そのガワンを演じた旦正才譲(ダムティン・ツェラン)は本物の歌手なんだそうで、演技自体がこれが初めてという。その荒削りさと純朴さが、あくまで伝統的な民族音楽にこだわる青年を存分に見せることに成功したんだろうという感じだった。
それと、何かとガワンを煽るライバル的存在を演じた班瑪加(ペマ・ジャ)は良い俳優だと感じた。チベット族で北京電影學院卒業。なるほど、しっかりした演技だったわ。もう一人、これはやっぱり音楽の神・ロイテルの化身?の女性を演じた旺卓措(ワンドル・ツォ)。彼女の登場で、ガワンは「新しいもの=西洋音楽」にも目を向けるようになり、一歩外の世界へも足を踏み入れる、そんな大事な役柄がぴったりときていた。
ま、あとは…。って感じで、ごめんな、かなり居眠りこいてしもたわ(笑)。監督の映画製作の背景や意図するところを、あらかじめインタビューを見て理解しておけば、もう少し身を入れて観ることができたかもしれないけど、それじゃ、映画を観る楽しみが減ってしまうような気もするしね…。難しいところですな。
※予告編のクリップがないのよ…。
(令和3年3月13日 梅田ブルク7)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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