【睇戲】『ハロー、グッドバイ。』(台題=你好,再見)

台湾巨匠傑作選からの「台北発メトロシリーズ=台北愛情捷運系列」も、この作品で見納め。いや~、色々と思うところ多々ありだったが、「暫定版」ばかりで、ちゃんと残せていない。この三連休にとでも思ったが、今度は文楽秋公演が始まるし、ちょっとばかり紛らわしい書き物数本を「宿題」として、とある筋から課せられているし、なかなか「完成版」に仕上げられないと思う。香港のことも色々記しておきたいけど、もはや展開についていけない…。まあ、なにかと忙しい秋の夕暮れでありまする。

とりあえず、今回は「完成版」にて。以後、プチ編集はあるかもしれんけど(笑)。

さて、今回観た『ハロー、グッドバイ。』は駅が特定されず、「終点」となっている。つまりはシリーズの最終章。いくつかの謎が解けると同時に、「へー、そうやったんか!」という発見もあり…。返す返す、全作観たかったと後悔するが、こちらを立てればあちらが立たぬというのが、大人の世界。幸い、DVDも発売されているので、時間をかけてでも全部揃えたいところだな。

「終点」と言っても、いくつかの駅が登場する。敢えて終点を想起させる場面は、MRTの総合指令室かな。ああいう光景は、鉄おた心をくすぐる。ま、シリーズ全体でも、決して鉄おたが喜ぶような場面は、まずないので、日本人に多い「台湾鉄おた」は、シリーズ名から食いつくと「えええ!」って後悔するだけだだと思うよ(笑)。

台北愛情捷運系列 最終站
ハロー、グッドバイ。(台題=你好,再見)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『你好,再見』
英題 『Hello  Goodbye』
邦題 『ハロー、グッドバイ。
テレビ放映年 2016年4月30日(衛視電視台)
製作地 台湾
言語 標準中国語

評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):李青蓉(リー・チンロン)

領銜主演(主演):紀培慧(テレサ・チー)、布魯斯(ブルース)

何と言っても、紀培慧(テレサ・チー)演じる小捷(シアオジェー)である。シリーズ作品で小生が観た『振り向いたらそこに』、『隠し味は愛』でふっとMRTの車内に現れ、悲しみや寂しさに主人公の女性が打ちひしがれている時に、言葉をかける。あの赤毛の女性が今回の女主人公。「あ、そういう背景があったのか!」と、色々と納得した次第だ。

絵を描くのが好きな内気なシアオジェーは、北投駅のホームでよく会うシアオガンに片想いしていた。ふとしたきっかけで話すようになった二人は、お互いに寂しい環境にあることを知り、徐々に心が近づいていく。メトロで行き交う人々を描き出版を目指すシアオジェーを応援するシアオガン。ところが、ある日シアオガンが忽然と姿を消してしまう。 引用元:シネ・ヌーヴォ「台湾巨匠傑作選二〇一九」サイト

一方、男主人公の小剛(シアオガン)を演じた布魯斯(ブルース)は、今は禾浩辰(ブルース・ハン)と改名して、映画やドラマで引っ張りだこなんだが、今年の「大阪アジアン映画祭」の「TAIWAN NIGHT」で上映された『悲しみより、もっと悲しい物語』で、「えくぼ男子」として小生が取り上げた、あいつじゃないか。今シリーズでは小生が観られなかった『この街に心揺れて』で、主人公とヒロインの縁結びをする「月下老人見習い」を演じていたという。やっぱ、観ておくべきだった…。

二人が「パラレルワールド」について話し合うシーンがあるけど、この作品中の二人もまた、「パラレルワールド」な存在だったかなと。

まず、二人の出会いそのものがそうだ。最初は北投駅で対向ホームに立つ二人の存在。4本の並行するレールの「向こうとこっち」というわかりやすい「パラレル」。作中では小捷(シアオジェー)の視点から映像が作られていたが、実は気付いていないフリをして、小剛(シアオガン)も小捷が気になっていたという、もう昔の少女漫画みたいなベタ過ぎる「パラレルワールド」。でも小生、こういうのめっちゃ好きよ(笑)。「どうせ、出会うんやろ~」とニヤニヤして観ていたら、「ほら!出会った!」となる(笑)。

その出会いの、小剛(シアオガン)の真正面からの「僕は小剛!知り合いになろうよ!」って握手の手を差し伸べる。「こんなさわやか青年、勘弁してほしいわ~」と思いながら、「きっとこのさわやかさの裏には、重いものを抱え込んでるんやで~」と思ってら、「ほら!突然行方不明やん!」である。このさわやかさも、予感的中の「重い人生」も、チャームポイントのえくぼ全開で演じてゆく。いい俳優だなと思う。

小捷は、ちょっとシャイでお父ちゃん大好き。MRTの総合指令室で働く父親の仕事をガラス張りの向こうから、いつも眺めている。ホームに立てば、CCTVに向かって「你好!」とピースサインで父親に挨拶する。イラスト画のコンペに度々トライするが、毎回涙を呑む。それをいつも後押ししてくれる父親とおじいちゃん。そしていつの間にか、小剛(シアオガン)も…。

ビルの屋上で互いに将来の夢を語る二人。急速に距離は縮まっていったのだが…。「大事な人を守れる男になるぞ!」(だったと思うw)と叫ぶ小剛。クサいけどこのシーンはよかったな。しかし、ブルースの見事なえくぼよ!

忘れちゃいけないのが、小剛が可愛がっていた犬。彼が抱え込んだ重たい人生を紛らわすために、老人の溜り場を「秘密基地」として、そこで飼っていた犬。小剛の失踪と共に犬も姿を消し、「どうしてみんな『さよなら』を言わずに、私の前から姿を消すの…」と小捷をさらに悲しませた、あの犬…。なんちゅう名前やったか失念したが、老人によれば「音楽家の夫婦にもらわれて行った」と言うではないか。そうか! この日観た1本目の『隠し味は愛』で、ピアニストのヨンジェーと料理教室を開いていた夫にチェンチーが飼っていたあの子か! これもまた、ひとつの「パラレルワールド」と言えるかもな…。

もうひとつ「パラレルワールド」として、MRTの車内で小剛にそっくりのチャラい男子を見つけ、思わず追いかけようとするも「いけない。ここで別の小捷の入っちゃダメだ」と思いとどまる小捷、というシーンがあったあが、あの「もう一人の小捷」こそ、上述の『この街に心揺れて』に登場する「月下老人見習い」だったという、最終章での伏線ばらまき作戦。

そうだ、こういうのもあった。街ブラする二人が覗いたタトゥーの店にあったサンプル写真に、尻に「我愛珍英」と入れたものを見つけ、思わず吹き出す二人だったが、「あれ? これは!」と思い出したのが『淡水河の奇跡』で過去から現在へタイムスリップしてきたボニーの尻。またもや、シリーズ作品の伏線ばらまき作戦である(笑)。

こんな感じで、二人の恋の行方を追いながら、各作品の伏線を散りばめることで最終章を作り上げたということなんだろうが、なんか終盤が一気に展開しすぎて、忙しくなってしまったのがなんとも残念。放映時間に収めるための苦肉の策かもしれないが、70分という映画と呼ぶにはかなり短い上映時間は、いくらなんでもそれは…というところだ。シリーズの他作品が90~120分ということから見ても、あまりにも短すぎる。

そういえば、この日観た二作品ともオープニングもエンディングもシリーズ作品のカットを連ねる極めて「テレビ的」なものだった。これも電視電影ならではのものだろうが、今回観たシリーズ4作のうち、他の2作がごく普通に映画的なオープニングとエンディングだっただけに、この違いは何だろうとも思った。今後も台湾作品では電視電影を観る機会が多いと思うが、色々と観察すべき点は多いなと感じた次第だ。

さて、このシリーズ7作のうち4作しか観られなかったが、面白いシリーズだった。日本でもできるんじゃないか、と思っていたら、「そう言えば」と思い出した。関西テレビですっとやっていた大阪環状線の駅を舞台にした1話完結オムニバスドラマ『大阪環状線 ひと駅ごとの愛物語』があった! 2、3回しか観たことないけど。関テレさん、映画にしない?(笑)

豪華キャストをズラリと並べた超大作もいいが、こういう下手すると日本では公開されなかったかもしれない小編を集中的に観る、というのもまたいいものだ。香港映画の先行きが、かなり不安な昨今、台湾映画の一層の活況を期待したいし、それに刺激を受けた香港映画界が、また再びおもしろい作品を撮ってくれれば、うれしいのだが…。

最後に参考までに各作品の衛視電視台での放映日、劇場公開日を記しておく。

まごころを両手に(台題:五星級魚干女)』 2016年3月18日劇場公開
この街に心揺れて(台題:愛情算不算)』 2015年10月30日劇場公開 2016年4月2日テレビ放映
隠し味は愛』 2016年4月9日
振り向いたらそこに』 2016年4月16日
ハロー、グッドバイ。』 2016年4月30日
西門に降る童話(台:西城童話)』 2017年1月6日劇場公開

うわっ、見事に劇場公開作品見逃してるわwww。

衛視電影台 你好.再見 4/30 (六) 晚上九點 全台首播

(令和元年10月26日 シネ・ヌーヴォX)



 


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