ホンマ、デモ隊も警察も連日お疲れ様です。と、心から労いの言葉を送りたい、昨今の香港である。
さて、当初は、香港島限定だったデモだが、7月7日の九龍半島・尖沙咀(Tsim Sha Tsui)での開催を皮切りに、一気に九龍、新界に拡大。
新界・屯門(Tuen Mun)で「大陸から移住したおばさんたちのカラオケ騒音抗議」という名の反中デモ
新界・上水(Sheung Shui)での「水貨客=大陸人運び屋一掃」という名の反中デモと警民衝突
新界・沙田(Sha Tin)での「反送中デモ」と警民衝突
香港島での銀髪族(シルバー世代)による「反送中デモ」
新界・香港国際空港における航空関係者の「反送中デモ」
新界・元朗(Yuen Long)での「反送中及び“白シャツ軍団”への抗議デモ」と警民衝突
と、ランダムに思い出すままに並べて、ざっとこんだけある。それも、わずか1か月そこそこの間にだ。新界に拡大したデモは、同時に過激化をその都度増していっているし、その間にも、中聯弁への「襲撃」事件と警民衝突、元朗で白シャツ軍団の市民襲撃などもあり、毎週土曜と日曜は、小生も野球中継どころではなく、常に香港各メディアの「現場Live」のはしごという状況だ。
これでは、生活のリズムを崩してしまう。海外にいる「香港おた」でさえそうなんだから、実際に毎回最前線で対峙し、衝突を繰り返している若者を中心とした「先鋭化部隊」と香港警察も、疲労困憊だろう。どちらにも「御身、お大事に」と申し上げたい。
と、香港市民の「デモ疲れ」を心配してあげているが、実は「デモ疲れ」しているのは、一連の「反送中」を注意深く眺めてきた日本人、って言うか、拙ブログ御愛読者の皆様のようで、最近はデモ関連の新しいエントリを上げても、まったくアクセスが伸びない(笑)。1か月ほど前なら、新ネタ投下の瞬間からすごい勢いでアクセスが伸びのだが、もう、関心ないのね…。
そしてまた週末がやってきた。今回のデモは新界・元朗である。
今回のタイトル「元朗巷戰」は、翌7月28日付『蘋果日報』の一面トップ見出し。同日付の同紙は、えらい気合の入れようで、1面・終面ブチ抜きで前日の「巷戰」すなわち市街戦を報じる。まあ、一面、終面という「新聞の顔」にすら、入ってくれる広告主が無い同紙だからできる大胆な紙面づくりなわけだが。
他紙は広告であふれる一面と終面だというのに…。なるほど、WEB版もカネを取らざるを得ないわけだ。日本で新聞を定期購読するよりはるかに安い、数百円の世界だが、こういう偏った紙面には、カネは出せませんな。
『蘋果日報』の紙面分析は置いておき、デモに話を戻すと。
「光復元朗」と銘打たれた、このデモだが、実は許可の下りなかった「違法デモ」である。申請を出していた本土派の一派「港人自決、藍色起義」の鍾健平(マックス・チュン)氏は、「ほな、一人で歩きまっさ」と表明したことに多くの香港市民が呼応し、「元朗ワンデー・トリップ」だの「元朗一人旅」だの「元朗スイーツ食べ歩き会」だので、「元朗経済活性化」のために集結。あっという間に、28万8千人(鍾氏が計算w)の大型デモに発展した。
香港島住まいだった小生、元朗へは15年間で2、3度しか行ったことがない。90年代、まだMTRが開通してなく、バスしか行く手段がなかった頃、試しに行ってみたのだが、何と言うか「香港だけど香港でない」ような雰囲気があって「思えば遠くへ来たもんだ」と感じたものだ。
いまや、MTR西鉄線で香港や九龍の中心エリアから、あっという間に行ける。それだけに人が集まるのも早い。
そもそも、警察が許可を出さなかったのは、先日起きた「白シャツ軍団」と市民の衝突を危惧してのもので、市民の安全を考慮してのもの。一方、呼びかけ人である鍾健平にすれば、「白シャツ軍団の暴力と警察の当日の不可解な行動」への抗議のためにデモを行うというもので、双方譲れない。こうなると、今や「デモこそ大正義」という時代なので、合法だろうが違法だろうが「集まったもん勝ち」だ。
「反送中デモ」なら何をやってもいい、というわけではないはず。警察の車両はデモ参加者らによって無残なことに。車中でぐっとこらえる警察官が気の毒でならない。こういう「造反有理」的風潮こそ、香港から最も遠いところにあるものと思っていただけに、小生は大きな衝撃を受けている。
「元朗経済活性化」のため集まって来た市民の数は、午後4時ごろにピークを迎える。同時に「先鋭化部隊」の活動も活発化してゆく。元朗駅そばの新界原居民の集落「南邊圍村」の前では、鉄パイプや自製の防護盾を手にした先鋭化部隊が集結し、警官隊と対峙。南邊圍村は例の白シャツ軍団が逃げ込んだ集落とあって、まるで「お礼参り」にでも来たのかと。黒社会人士の暴力を糾弾しようという側まで、黒社会人士のように振舞っちゃいけませんな。
午後5時ごろには、別の原居民集落「西邊圍村」の前にも先鋭化部隊が集まり、警察は催涙弾をぶっ放して排除。いや~、とうとう普通の住宅街で催涙弾ぶっ放す日が来たんだなと、非常に複雑な気分でネットの現地LIVE中継を眺めていた次第。
上記は7月28日付『明報』に掲載された「警民衝突一覧」である。実に8か所。そのほとんどで催涙弾が使用されている。南邊圍村と西邊圍村及び隣接する元朗駅周辺が多いが、メーンストリートの元朗大馬路でも衝突が起きており、数時間にわたって激しい「市街戦」が繰り広げられた。
「先鋭化部隊」「居残りデモ隊」の市街地からの排除は、午後7時過ぎから完了し始めたが、今度は元朗駅での対峙が始まる。あの白シャツ軍団襲撃の時とは打って変わって、警官隊は素早く駅に突入し、警察へ暴力を試みる者や対峙する市民を片っ端から警棒で殴打してゆき、コンコースはまたもや血に染まる。
警察はMTRに対し、午後7時半、MTR西鉄線の上下線での特別列車運行を要請し、とにかく駅構内でのデモ隊の滞留を防止しようとした。ならば、ちゃんと電車に乗らせるように仕向けなあかんな、警察も。確かに駅構内に滞留するばかりか、警察に攻撃的な態度で向き合うのだから、「違法集会」として厳しく取り締まるのは、当たり前の職務なのだけど、ここはぐっとこらえて、全員を無事に帰宅させることに徹してほしかった。さらに禍根を広げないためにも…。
警察は排除行動で18~68歳の11人を逮捕した。容疑は違法集結、攻撃性武器の所有、警官襲撃など多岐にわたる。また、排除行動では少なくとも警官4人、市民24人が負傷、うち2人が重体となっている。デモの度に警民衝突が起き、毎回のように数十人が逮捕され、警民双方で数十人が負傷、生命の危機に瀕するような重体者も出ている。いつまで続くのだろう…。
当の香港特区政府並びに林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、その都度、暴力行為を厳しく糾弾するが、それ以上のことは何も言わない。肝心の「逃亡犯条例」については、「もうこの前に『已壽終正寢=すでに葬られた』って言ったでしょ、しつこいのよ!」と言わんばかりに、まったく触れない。触れる気も無いのだろう。これではデモは終わらない。「ご英断を!」と、おばさんに迫りたいところだが、残念ながら、おばさん自身で英断を下すことはできない。英断を下すのは中央政府、すなわち習近平だ。それが、おばさんの辞任なのか、噂される解放軍の投入なのかはわからないが…。後者なら、小生の「香港が香港であり続けるために」という願いも、完全に潰えてしまうことになる。まさしく、香港の終わりなのである。どうしよう、俺…。
ところで、政府傘下でありながら、完全に独立した制作方針で番組を作っている公共放送局「香港電台」の人気ドキュメント番組『鏗鏘集(Hong Kong Connection)』が「721元朗黑夜」と題して、例の白シャツ軍団による市民襲撃事件を追っている。各所に設けられた監視カメラを徹底解析し、警察資料も丁寧に綿密に読み解き、事件の全貌、問題点をあぶり出している。さしずめ「監視カメラは見ていた!」「警察はどこに?」というところか。短期間でこの仕事ぶりは素晴らしい!
これは30分番組ながら、極めて秀逸で、すでに話題沸騰である。『蘋果日報』のように民主派に肩入れするための番組ではなく、冷静に事件を分析する姿勢がいい。これこそ「香港メディアの矜持」という内容で、本来、メディアがなすべき仕事の手本のような番組になっている。下記にその放映分のYou Tubeを載せておくので、ぜひご覧いただきたい。広東語がまったくわからなくても、映像を見れば、大方のことは理解できるかと思う。
721元朗黑夜2019-07-29
721晚的元朗衝突,警方被質疑處理緩慢。警務處處長盧偉聰解釋「遲到」是部分警力調派往港島處理示威及警員當時正處理3宗打鬥、1宗火警。
《鏗鏘集》記者整理7月21號晚上不同的片段,訪問相關人士,按時序梳理情節,詰問元朗黑夜衝突中,消失的警力在何處。
で、翌日もまたデモだわな。これが…。
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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