【御朱印男子 6】道明寺、道明寺天満宮

御朱印男子
道明寺・道明寺天満宮

歌舞伎、文楽でおなじみの『菅原伝授手習鑑』ゆかりの地

歌舞伎、文楽でおなじみの『菅原伝授手習鑑』で、菅丞相(菅原道真公を指す)が九州へ流刑となる前に、叔母の覚寿に別れを告げるため、叔母の館「土師の里館」に身を寄せる。ここで起こる一連の物語「道明寺」は、『菅原~』の中でも非常に格調高く、浄瑠璃を聴けば聴くほど、おもしろい場面の連続となるが、上演頻度が少なく、小生も文楽で二度しか見物の機会に恵まれていない。義太夫節の難易度の高さ、上演時間の長さ、登場人物が多く配役が難しい…、などなど理由はいくつもあるのだろうけど、歌舞伎にしても文楽にしても、この段は見ごたえ聴きごたえ十分、値打ちのある段なので、もう少し上演数が増えてもいいんじゃなかと思う。

「道明寺」は『菅原~』の二段目に当たる。浄瑠璃において二段目のポジションは、一般的にはそれほど重要度は高くはない。しかし『菅原~』では、上述のように重要度が高く、物語全体の大きなクライマックスのひとつになっている。二段目の段切り「丞相名残の段(しょうじょうなごりのだん)」での

鳴けばこそ 別れを急げ鶏の音の 聞こへぬ里の暁もがな

はあまりにも有名な道真名残の一首。道真公がこの歌を詠んで西に流されて行ったことから、この地に住む者は鶏を飼わないという信仰があるらしいが、それはどうだろう? 飼ってる家あると思うけど…。

【6】蓮土山道明寺(れんどざんどうみょうじ)

『菅原伝授手習鑑』二段目「丞相名残の段」で語られる由来

『菅原~』の舞台となった「土師の里館」は、現在も近鉄南大阪線の「土師ノ里」という駅名に名残を残す。地名の由来となる土師氏は、道真公の先祖にあたる豪族で、この地を根拠としていた。古くは土師氏の氏寺で、6世紀ごろに土師連八嶋(はじのむらじやしま)によって開創されたのが土師寺、後の道明寺である。

土師寺が「道明寺」となったのは道真公の死後のことで、道真公の号名「道明」にちなむ。上述の『菅原伝授手習鑑』の二段目「丞相名残の段」は、

~夜は明けぬれど心の闇路、照らすは法(のり)の御誓ひ、道明らけき寺の名も、道明寺とて今もなほ、栄えまします御神の、生けるが如き御姿、こゝに残れる物語。~

と、道明寺の縁起を語っている。

創建当時は「五重塔」、「金堂」、「講堂」が一直線に並ぶ「四天王寺式伽藍配置」の本格的な寺院で、現在の道明寺天満宮の前方にあった。真言宗御室派の尼寺で、御本尊は道真公が36歳の時に彫った国宝の十一面観音菩薩。現在、「道明寺」と「道明寺天満宮」は並び建っているが、寛永10年(1633)の石川氾濫により道明寺は天満宮境内に移り、この状態は明治の神仏分離令まで続く。

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道明寺本堂。大正8年(1919)再建


<墨書右から>
奉拝
十一面観世音
平成二十九年如月三日 道明寺
<朱印・宝印>

右に「菅公御作」とあって、十一面観音像が菅公=道真公の作であることを示している
中央(宝印)蓮華座に火炎光背。宝珠に梵字「キャ」で本尊十一面観音の種子を記す
左に「道明寺印」

尼寺なので、尼僧さんがわざわざ庫裡に戻ってきれいに書いて下さった。

<ところ>大阪府藤井寺市道明寺1-14-31 <あし>近鉄南大阪線道明寺駅徒歩7分

梅干し

【7】道明寺天満宮(どうみょうじてんまんぐう)

府下有数の梅の名所

土師氏の氏神「土師神社」は、道明寺天満宮の前身であり、現在も境内には「土師社」がある。祭神は天夷鳥命(あめのひなどりのみこと)、野見宿祢(のみのすくね)、大国主命。垂仁天皇32年(西暦3)、相撲の祖とされる野見宿祢が、「はにわ」を創って殉死に代えた功績で、「土師」の姓とこの辺り一帯を所領地として賜わり、土師氏の遠祖、天穂日命(あめのほひのみこと, あまのほひのみこと)を祀ったことが始まりとされている。現在の天満宮は道真公の死後、天暦元年(947)に創建されているので、「土師社」が本社となる。

道明寺天満宮の祭神は天穂日命、菅原道真公と叔母の覚寿尼公
道真公ゆかりの神社とあって、関連の宝物の多さが際立っている。特に平安期のものとみられる以下の菅公遺品はすべて国宝である。青白磁円硯(せいはくじえんけん)、銀装革帯(ぎんそうかくたい)、玳瑁装牙櫛(たいまいそうげくし)、伯牙弾琴鏡(はくがだんきんきょう)、犀角柄刀子(さいかくつかとうす)、牙笏(げしゃく)。

『菅原伝授手習鑑』の「丞相名残の段」で、

玉の涙の木槵樹、数珠の数々繰り返し

とある「木槵樹(もくげんじゅ)」は、天満宮の西宮で毎年6月下旬に満開の花を咲かせている。その種子で数珠を作り、念仏を唱えれば極楽往生できると伝えられており、『菅原~』の一節もそれを踏まえてのものである。

梅の名所としても有名で、80種800本の梅が1月初旬から咲始め、3月中旬までが梅見のシーズン。近鉄各駅では、天満宮の梅の開花状況が日々アップデートされている。

訪れた日は二月初旬で、まだまだ満開には程遠かったが、「蝋梅」が満開であった
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丑年、丑の刻に生まれた道真公のお使いである牛を撫でて、ハッピーになろう!
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紅梅越しに本殿


<墨書右から>
奉拝
菅原大神
平成二十九年二月三日
<ところ>大阪府藤井寺市道明寺1-16-40 <あし>近鉄南大阪線道明寺駅徒歩7分

(平成29年2月3日参詣)



 


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