【睇戲】『わたしは潘金蓮じゃない』(中題=我不是潘金莲) <日本プレミア上映>

第12回大阪アジアン映画祭
特別招待作品部門

『わたしは潘金蓮じゃない』
(中題=我不是潘金莲)

postericom今回、中国作品はこの1本のみ。と言って、毎回出品数も観る本数もそんなに多くないわけだが(笑)。

どっちかと言うと、もう1本の『呼吸正常』のほうが観たかったんだが、ここが短期間のつらいところで、他作品との兼ね合いでそちらはまたいずれ機会があることに期待して、この『我不是潘金蓮』を選んだわけだが、さてその期待に応える作品だったかどうか。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

中題 『我不是潘金莲』
英題
 『I AM NOT MADAME BOVARY』

邦題 『わたしは潘金蓮じゃない』
公開年 馬、中、港、米:2016年11月 台湾:2017年1月
製作地 中国
言語 標準中国語

評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督): 馮小剛(フォン・シャオガン)

領銜主演(主演):范冰冰(ファン・ビンビン)
聯合主演(共演):郭濤(グオ・タオ)、大鵬(ダーポン)、張嘉譯(チャン・ジャーイー)、于和偉(ユー・ホーウェイ)、長譯、李宗翰、趙立新、田小洁

劉震雲(リュウ・チェンユン)の同名小説を馮小剛(フォン・シャオガン)監督が映画化したものである。小説は日本語翻訳版が出ているので題名は知ってはいたが、読んではいない。

3月21日、香港で開かれた「第11屆亞洲電影大獎(第11回アジアフィルムアワード)」で「最佳電影(最優秀作品賞)」、「最佳女主角(最優秀主演女優賞)」、「最佳攝影(最優秀撮影賞)」の三冠に輝く。他にも多数の受賞歴を誇る、という超話題作。にしてもだ、英題の『I AM NOT MADAME BOVARY』って何なこれ(笑)。

潘金蓮とは、シナ文学を少しでもかじっていれば、「ああ、あの」と思い当たるほどの悪女である。『水滸伝』では、饅頭(まんとう)売りの武大の妻という設定。絶世の美女にして性欲、物欲、向上心強し。夫を殺して情夫との淫行にひたすらいそしむ典型的な悪女・淫婦として描かれている。また『金瓶梅』では、『水滸伝』の悪女ぶりをさらに膨らませた準主人公として描かれ、名前の「金蓮」から「金」の字が作品の題名の一文字目として使われているほどで、現在でもどうやら「悪妻」の代名詞として使われるようである。だからこの映画のタイトルで今もなお中国人は「ああ、なんかそいう映画なの?」となるわけだ。

さて、この作品、先に記したように世界的に大きな評価を得ているのだが、果たして小生の目にどう映ったかというと、「くたびれた」の一言に尽きた。

いやいや、内容が下らんとかそういうハナシじゃないんだが、長すぎたのだ。それも技巧に走りすぎの感大いにありの「円形画面」が延々と1時間以上(だったはず?)続き、そのためにせっかくの范冰冰(ファン・ビンビン)の苦心の役作りも、言われているほど伝わってこず、他の役者の顔もはっきり確認できず…などなど、「この丸い画面はどうなんですかね~、お客さん!」と上映中に叫びたくなったくらいだ、いや、マジで。

<あらまし>
映画の舞台は江南の一農村。范冰冰演ずる主人公の李雪蓮と夫は会社提供の部屋が目的で一旦偽装離婚し、その後復縁するつもりだった(背景が複雑なので割愛)が、夫が別の女性と結婚。腹を立てた李雪蓮は訴訟を起こすも、更に彼女を腹立たせる出来事が次々と起こり、訴訟内容や訴える人物が増えていく。しかし彼女が本当にはっきりさせたいのは元夫に関連する事のみ。1年に一度、訴訟を起こすために北京に向かうようになるうちに、気がつけば10年の月日が流れていた…。描き出されるのは、役人たちの無責任、保身。それによって人の人生がいかに狂わされてしまうかということが、シリアスさをユーモアで包みこむように描かれている。
そんな憎っくき夫に「この潘金蓮め!」と罵られるわけだが、その夫も最終的には、かなり怪しい事故で命を落とし、李雪蓮はある意味、生きがいを失ってしまうことになる。いやいや、この事故、ほんま怪しいよ。

まあなかなか挑戦的な作品ではあった、あの国においては。とはいえ、共産党の「腐敗」というものが描き出されているというわけでもなく、役人の無責任、保身についても、最低限の普遍的なことを描いているだけで、人物や事件を特定するようなことはしていないので共産党的には「没有問題」ってところか。

さて、主演の范冰冰だが、「体重を6キロ増加させ、方言をマスターし、また、農村で女性たちが実際に着ていた服を集めてきて衣装として着用する、という徹底した役作りでこの作品に挑んだ。」(大阪アジアン映画祭公式HPより)ということだが、それでもやっぱり范冰冰は范冰冰であって、やっぱり中国の田舎の女性になりきれていなかったという印象。
それに「方言をマスター」と言っても、どうなんだろう? たとえばドラマで実に下手くそな大阪弁をしゃべる俳優のような感じだとしたらイヤだな(笑)。中国語の方言なんて全く分からないのが幸いしたかな(笑)。

范冰冰と言えば、中華圏で空前絶後のヒットとなった、痛快宮廷時代劇『環珠格格』で趙薇(ヴィッキー・チャオ)とのダブルヒロインで一躍トップ女優になったのが懐かしい。

その趙薇もまた『最愛の子(原題:親愛的)』で貧しい中国女性を演じたのだが、その「現実度」で勝負すれば趙薇に軍配が上がるんじゃないかなと。

こういうの、中国のサイトでも比べてる人が山ほどいて、それぞれに言いたいこと言ってるのがおもしろい。結局、香港電影金像奨で趙薇は最優秀主演女優賞を獲得したが、「さて范冰冰はいかに?」って締めくくってるけど、どうだろうねえ?

 【我不是潘金蓮】磨刀版預告

(平成29年3月9日 ABCホール)




 


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