【睇戲】『52Hz, I LOVE YOU』(台題=52赫茲我愛你) <日本プレミア上映>

第12回大阪アジアン映画祭
特別招待作品部門

『52Hz, I LOVE YOU』(台題=52赫茲我愛你)

postericom今年の大阪アジアン映画祭、台湾映画は3本のみ。例年の半分程度。これは寂しい。

他国作品、とりわけ香港作品の大進撃に割食ってしまったかな?

そんなわけで、今年は恒例の「TAIWAN NIGHT」もなく、さら~っと終わってしまいそうなところを、魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督が、最新作を持って来阪してくれた。これが実質上の「TAIWAN NIGHT」かな(笑)。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『52赫茲我愛你』
英題 『52Hz, I LOVE YOU』

邦題 『52Hz, I LOVE YOU』
現地公開年 2017
製作地 台湾
言語 標準中国語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):魏徳聖(ウェイ・ダーション)
編劇(脚本):魏徳聖、游文興(ヨウ・ウェンシン)、蘇達(スー・ダー)

領銜主演(主演):莊鵑瑛(小球=チュアン・チュエンイン)、林忠諭(小玉=リン・ジョンユー)、米非(ミッフィー)、舒米恩(スミン)
特別客串(特別ゲスト):張榕容、李千娜、趙詠華、林慶台、馬如龍、沛小嵐
超特別演出(超特別出演):柯文哲(台北市長、本人役で)

まず、映像がきれい。台湾じゃないみたいなきれいな色使いと映像。ファンタスティック!

最初から最後までとにかく歌いっぱなしで、まあバレンタインデーを愉快に楽しく過ごしてくれっていう、魏徳聖監督からのバレンタインプレゼントと思えば、「そりゃどうもお気遣い感謝!」ってところでいいんじゃないかっていう、お気楽映画。「こういう手合いのものも撮っちゃうんだこの人」と、認識を新たにしたってところだ。いや、別に厭味ったらしく辛口批評しているわけじゃなく、気楽に楽しめる映画も撮って、ご自身も楽しくお仕事して、また次なる大作への鋭気を養ってもらえればと思う次第なのである。実際、「『セデック・バレ』、『KANO』と大作が続き、おなか一杯で疲労感もあったので、幸せな映画を撮りたかった」と言う。

んなわけで、上映後のサイン会でも小生は「いやもう、楽しい時間をありがとう!」と素直に本人さんに感謝の言葉を申し上げておいた。(いくら広東語族でも、これくらいの普通話はしゃべれますww)

主役の男女4人はバリバリのミュージシャン。香港歌謡界ほど台湾歌謡界に明るくない小生でも知っている人たちだから、台湾人が観たら「おお~!」ってところ?そうでもない?

物語はこの4人の恋愛ストーリーと、LGBTの女性カップル(張榕容、李千娜)、小玉演じるケーキ屋の師傅(しーふー=師匠、おやっさん/林慶台)と小球演じる花屋の蕾蕾の叔母さん(趙詠華)の出会い、一目ぼれ、恋愛へ発展(?)を歌で綴るという展開。実に多くの歌が繰り返し歌われ、踊られたわけだが、Wikiによればその数18曲。もう、オープニングからして歌って踊ってなのである。「こいつはまいった」ってところだ(笑)。

その出演者たち、主役4人以外は、多くがこれまでに魏徳聖監督の作品に出演した人たち。『海角七号 君想う、国境の南』や『セデック・バレ』でおなじみの面々が愉快に歌って踊っているのも、斬新に映る。

LGBTの女性カップルが市長が承認する集団結婚式に強引に参加を迫る場面がある。イベントを切り盛りする米非演じる蕾蕾は、法的根拠を盾に拒むが、二人は「承認されなくても祝ってもらいたい、一緒に記念写真に納まりたい」と一向に引かない。このあたりは、昨今の「婚姻平權(婚姻平等権)」をめぐる台湾全土の盛り上がりを意識した場面なんだろうなあと見た…。って、「君、そういうのを質問しなさいよ!」ってことだわな(笑)。

さらにその式典になんと台北市長の柯文哲が本人役で登場するという、サプライズと言うかご祝儀と言うか。これには笑っちゃった。まあ、何かとやり手ですよ、この市長は。

上映終了後、魏徳聖が舞台挨拶とQ&A。

「この作品の構想は業界に入ってすぐに考えていた」と言う。「バレンタインデーに、花屋の女の子とチョコレートを配達する男の子、要するに人の恋愛のために働く二人が出会ったら、何が起きるかってことを想像したもの」だそうで、「自分にもそんなことあればいいなという願望もあって(笑)」。

楽曲は全てオリジナルだそうで、簡単な概念を書いた歌詞を作詞家に渡し、それを音楽にしてもらうようにして作曲していったと言う。それは従来とは逆のやり方だとのこと。
広東語歌曲もそうだが、中国語はイントネーションが変わると同じ発音でも全く別の意味になってしまうので、最初に曲ありきで歌を作るんじゃないかな、普通は。だから作詞ではなく「填詞(詞を填<う>める)と呼ぶし…。と分かった顔で言ってるが、多分そうだろうってことでよろしく(笑)。

52Hzは誰にも伝わらない周波数で、この周波数で歌い続けるクジラは「世界で一番寂しいクジラ」と言われている。そもそも、映画のタイトルを『〇〇, I LOVE YOU』にしたいと考えていたが、「I LOVE YOU」は神聖な意味にも俗っぽい意味にもなるので、俗っぽさを消したくてあれこれ思案の末、「一番孤独と言われる52Hzを入れれば、孤独というネガティブさが消え、人は孤独ではないということを暗示する意図を込められると思った」と言う。いや~奥が深い。

そういえば、当初のポスターはそれを意味する絵柄だった。あの図案がとても優しく感じて早くこの映画を観たいと思っていたのだ。なるほど、そういう意味な、そうかそうか…。にしても、このクジラの目が監督の目と似ていて優しそうなのは気のせいか?(クリックすれば拡大できるからよく比べてみてねw)

18曲、ほとんど記憶に残らなかったのは歌いすぎたからか? 結局『Do Mi沒有Sol』の出だしの部分しか頭に残らなかった。まあ、あの歌は残るわな(笑)。♪ド~ミ~沒有(めいよう)ソ~…。客席も笑ってたね(笑)。

《52Hz, I love you》正式預告

(平成29年3月8日 ABCホール)





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