浪曲
国立劇場開場50周年記念 国立文楽劇場第154回大衆芸能公演
浪曲名人会
毎年この時期恒例のお楽しみ「浪曲名人会」。会場の文楽劇場の大ホールは補助席も出る大盛況、大入り満員、結構なこと。
<ネタ帳>
真山一郎『南部坂雪の別れ』 オペレーター:真山幸美
京山小圓嬢『定九郎出世噺』 曲師:沢村さくら
松浦四郎若『松阪城の月』 曲師:虹友美
追悼「春野百合子師をしのんで」
春野ココ、春野富美代、春野美恵子、春野一
進行・春野恵子
―仲入―
三原佐知子『異国の母』 曲師:虹友美 オペレーター:鵜川せつ子
春野恵子『樽屋おせん』 曲師:一風亭葉月
京山幸枝若『間垣平九郎―どど平の住込み―』 曲師:岡本貞子 ギター:京山幸光
ご案内=真山隼人 ・ 京山幸太
今回も隼人&幸太の進行で。進行表とにらめっこしながらで軽妙な掛け合いと言うよりも、教科書を読みっこしているような進行だったけど、まあ、こういう20歳そこそこの若手がこれからの関西の浪界を担っていくのだから、客席も孫の舞台を見つめる爺、婆の気分か(笑)。
まずは真山一郎登場。おなじみの歌謡浪曲で一気に客席を温めていく。隼人曰く「うちの一門はとにかく衣装が派手で」と笑わせていたが、総帥の一郎師匠、ギンギラギンの袴で登場(笑)。全九席語ると優に4、5時間かかるという超大作。今席はその六席目にあたる。
小圓嬢師匠は今年芸歴70周年。現役最年長だがとにかくお元気。声も衰え知らずで、途中自ら「エエ声やろ~」と客席を笑わせてくれる。御存じ中村仲蔵の出世話の裏に夫婦愛と内助の功ありという名作。
四郎若はこの人らしい、戦国武将もので。キリッと筋の通った人物像を上手に描く曲を毎回聞かせてくれるが、多分、この人自身の素顔もそうなんだろうと思われる。「芸には人間性が出る」とはよく言ったもんだと思いながら聴く。
昨年10月25日、89歳で世を去った春野百合子師匠をしのんで、師の思い出話を一門で。「梶川大力の粗忽」と「藤十郎の恋」の一部がビデオ上映される。完璧とはこういうことを言う、そんな至極の芸。御存命中にもっともっとこの芸に接する機会があったのにと、悔やむ。
佐知子師匠登場。ハンカチのご用意お忘れなく。ホンマ、毎回よう泣かせてくれはる(笑)。両親を炭鉱事故で亡くした少年を引き取り、自分の子として育てた在日朝鮮人女性。いつか来る別れ、そして再会をドラマチックに。もちろん涙腺大決壊。
幕切れがちょいと切ない物語。亡き師匠の独壇場だった分野へ果敢にチャレンジ。世界中を飛び回り、浪曲の普及に努める春野恵子。実にアグレッシブ。ちょっとお疲れなのか若干声のハリがなく聞こえたが、気のせいならそれでよし、疲れてるならどうかご自愛を!
ホワ~ンとした語りで笑いを取りながら進んでいく幸枝若節。しかしながら、ここぞの聞かせ方はさすが。さあ、いよいよクライマックス、ここからどうなるってところで、例によって「ちょうど時間となりました」(笑)。
終演後は、全員がロビーに出てお客を見送ってくれる。これがうれしい。久々に菊池まどかを見かける。全国区での歌の活動に一区切りつけて、また浪曲で頑張っているようで何より。来年はこの会に出てくれるかな?
(平成29年2月25日 日本橋国立文楽劇場)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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