【上方芸能な日々 落語】吉坊ノ会<13.Dec.2016>

落語
吉坊ノ会<13.Dec.2016>

昼間は曇天でさほど寒さを感じない1日だったが、会がはねて外へ出たらかなりの雨。結局、今年の冬の「吉坊ノ会」も冷たい雨に見送られることになってしまった(笑)。

この冬、ついに「弱法師」、そして「淀の鯉」とのサブタイトル。これは聞き逃せない会である。
このところこの会では座席運に見放されていたが、今回は後方のひな壇席。平場の席よりもこっちの方が舞台全体を見渡すことができるのでいい。

20171213<ネタ帳>
「犬の目」 桂吉の丞
「淀の鯉」 桂吉坊
仲入り
「おしゃべりマジック」 伊藤夢葉
「弱法師」 吉坊

まずは吉の丞で「犬の目」。彼もいつの間にかこの辺のネタを「前座がやる前座ネタ」ではなく「実力派がやる前座ネタ」にしているなあと、その成長を嬉しく感じる高座。

さあ吉坊、最初のネタは「淀の鯉」。桂米朝・作。自分が作ったのにもかかわらず、「おもろないからずっと誰もやってないねん」と言われたというエピソードなどで笑いを誘いながら本題へ。

その「淀の鯉」だが、何年か前にだれかがやっているのを聞いた覚えがあるんだが、ブログにも記録がないし、ネタ帳ノートにも記録がない。でも聞いたことがある…。「う~ん、誰やったかな?」なんて考えてたら話はどんどん進んでゆくからそういう「邪念」は捨て去って集中すべし(笑)。
で、そないに「気を付け!」の姿勢で聴くような話でもないって言うと、熱演した吉坊君に失礼になるけど、まあそんな感じの軽いお話。ええテンポで聴かせてくれたので、よく笑えた。にしても、「板子一枚、下は地獄」って久しぶりに耳にしたフレーズやね。

中入りに気が付いた。前のお席に落語作家の小佐田定雄センセとタレントの松尾貴史が並んで座ってはった。お二方とも吉坊のよき先輩。小佐田センセはパンフレットで吉坊と対談。これはいい対談記事だった。

本日の色もんさんは、マジックの伊藤夢葉。最初に鞭の音を聞かせてくれた。ほんまもんの鞭ね。シンガポールは今なお鞭打ち刑が執行されているが、この音を聞いてどれほどの恐怖か想像がついた。これは恐ろしいってもんじゃないやろ…。
伊藤一葉の弟子と言う。「この件についてご質問は」とかで人気やったマジシャン。多分小学生のころによくテレビで見たと記憶。この夢葉師もその路線。チャイナリングはいまだに謎が解けなかったのだが、後日、ひょんなことからそのからくりを知ってしまう…。後日でよかった(笑)。

さて、大注目の「弱法師」である。言わずと知れた、師匠・吉朝が最期に高座にかけたネタである。またの名を「菜刀(ながたん)息子」。たしか千朝師はこっちの名称でやってると記憶する。笑う場面の無い落語である。時に客席が水を打ったように静まり返ることもある話である。それだけ客の心を鷲掴みにして話さない展開なのである。よって、この話で客席をグイグイと引っ張て行ける噺家はそんなに多いとは思えない、ごくごく限られた面々だろう。その一角に、吉坊がいるというのはこれ大変なことだと思う。

扇子で顔を隠して、物売りの声で月日の流れを表現する、これこそ語り芸たる落語の真骨頂だと思った。それはまた、吉坊だからなせる業だとも思った。天王寺さんの境内での1年数か月振りの親子の対面は、胸にグッとくるものがった。「聴かせたな~、吉坊」と唸ってしまう出来だったんじゃないか。

ま、本人はやる中で改善点や反省点を多数見出していたと思うので、そこはそれで大いに改善し反省してもらうとして、5年先、いや10年先でもいい、齢を重ねた吉坊が次にどんな風に「弱法師」を聞かせるのか、期待大な高座だった。

で。「長々患いまして難渋いたしておりますぅ~」っての、「長々患いまして」の部分を色々とアレンジしていつかどっかで使ってやろうと企んだってのは、ここだけの話な(笑)。

*2週後に同じネタで東京公演があったので、東京公演終了後の「予約投稿」としました。

(平成28年12月13日 近鉄アート館)




 


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