【睇戲】『3688』(星題=想入飛飛)<日本初上映>

第11回大阪アジアン映画祭
《コンペティション部門》

『3688』
(星題=想入飛飛)<日本初上映>

シンガポールからの作品を観る。
『ご飯だ!』でも記したが、東南アジア諸国の映画なんぞは、こうした機会でない限り、なかなか日本で観ることはできない。たとえそれが秀逸な作品であったとしても、よほどの篤志家がスポンサーに付くとか、へそ曲がりなミニシアターの経営者が直接自分で買い付けてくるとかない限り、鑑賞は限りなく不可能に近い。ならば、せっかくの機会だ。時間のある限り観ておこうということで、この日の2本目として選択。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

3688Poster_o星題 『想入飛飛』
英題 『3688』
邦題
 『3688』

現地公開年 2015年
製作地 シンガポール
言語 標準中国語、福建語、英語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督): 陳子謙(ロイストン・タン)

領銜主演(主演):蔡淳佳(ジョイ・チュア)、陳國輝(マイケル・タン)、劉玲玲(リウ・リンリン)、黄炯耀(ブランドン・ウォン)
主演(出演):Rahimah Rahim(ラヒマ・ラヒム)
特別介紹(イチ押し俳優):希克旋(ShiGGa Shay)

この作品、まず鳳飛飛(フェイフェイ)を知ってる方がより面白味が増す。「帽子の歌姫」として広く中華圏で愛された鳳飛飛だが、小生が住んでいた香港とは、やや縁が薄かったと思う。恐らく北京語歌曲の歌手だからと思うが、とは言え、香港人でも鳳飛飛を知らない人は多分いないと思う。縁が薄いと言いながら、彼女が息を引き取ったのが香港の病院なのだから、最後の最後に縁が結ばれたということか…。陳子謙(ロイストン・タン)監督の鳳飛飛への思いがいっぱい詰まった作品。

もうひとつテーマになっているのは、老人介護あるいは痴呆症の家族との接し方の問題。シンガポールもご多分に漏れず、高齢化が進み、老人介護は社会の一大関心事。主人公の父親に痴呆症の疑いが濃くなったときの、主人公の受け入れたくないという気持ちは、いかばかりのものだったか…。最終的には、彼女はその事実をしっかり受け止め、父親とは自然に接してゆこうということになるのだが、そのときの主人公の晴れやかな表情、父親の穏やかな表情が印象深い。

個人的には、久々に耳にした「シングリッシュ=シンガポール式英語」の響きが懐かしい。とりわけ、「Car park=駐車場」の発音が「カパ」と聞こえるあたりは、「それそれ! シングリッシュはそうでなきゃ!」って嬉しくなった。

映画の舞台のひとつでもあったホーカー(屋台風お好み食堂街)も懐かしい。香港の奉公先のシンガポール会社へ度々出張したが、表の顔はビジネス街、でもビル街の裏は典型的な公営団地という立地にあって、昼ご飯は団地のホーカーでという日々。安くて旨いのは当たり前。何といってもメニューの豊富さと東南アジアならではのメニューの数々が、たまらない。

そしてもう一つ。どうやらボケてきたらしい主人公の父親が、若き日の職業を思い出してか、古ぼけたラジオを持って「麗的呼聲(Radio Rediffusion)のご契約を」と戸別訪問すのだが、この 麗的呼聲はそもそもが香港のケーブルラジオ である。もちろん小生が香港住まいを始めるよりも遥か以前のラジオ局ではあるが、4月に完全に「停波」となる香港の地上波テレビ局・亜洲電視(ATV)の前身にあたるラジオ局である。

こういう様々な視点がからみあい、知らない俳優オンパレードながら、結構心に響く作品であった。

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上映後は、 主演女優の蔡淳佳(ジョイ・チュア)と陳子謙(ロイストン・タン)監督が舞台挨拶に。
「鳳飛飛が亡くなったときはショックだった。母親をコンサートに連れて行ってあげる夢を果たせなかったので、なんとか夢をかなえたいという思いからこの映画を作ることになった」と、陳監督。
今回が映画初主演のシンガポールの人気女性歌手・蔡淳佳は、「フェイフェイの歌を歌うのは、とてもプレッシャーでしたが、歌い上げることができた今は満足しています」と言う。

「忘れるということを責める必要はない」と言う陳監督の思いが全編から伝わり、温かい気持ちで席を立つことができる。

にしても…。この監督の映画は、ほとんどタイトルが数字だなww。

(映画祭出品作に付き、甘口評、辛口評は割愛)

《3688》想入飞飞 Trailer (Opens 17 Sept)

(平成28年3月11日 ABCホール)



 


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