【前進なき香港普通選挙への道】

2017年 行政長官選挙選出方法改正議案否決

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1995年6月20日付け『蘋果日報』創刊号。トップ記事に返還後の初代行政長官として想定される9人の名前。なかなか興味深い

香港民主派にとって、唯一信頼に足るメディア『蘋果日報』が、6月20日発行で満20周年を迎えた。センセーショナルな創刊告知のTVCMを今も覚えているが、そうか、あれから20年になるのかと、思わず「遠い目」になってしまう。香港生活を開始して、ちょうど1ヶ月のころだった。

その『蘋果日報』の20周年を祝うわけでもないだろうが、18日の香港立法会で、特区政府が提出した2017年の行政長官選挙選出方法の改正議案が否決された。19日付の『蘋果』紙面の大半をこの関連が占め、20周年記念特別紙面を飾ったのは言うまでもない。

昨年のいわゆる「雨傘行動」が成果を上げ、「中央の決定事項を現地議会が史上初めて否決した快挙」という見方をする目出度い人々もいることはいるが、実際には、今回の否決によって、2017年の行政長官選挙で約束された「一人一票」は実現せず、次の行政長官もまた、1200人の選挙委員による「間接選挙」での選出となる。その先については、まったくの「予定は未定」なのである。

この結果を、それでもなお「民主の勝利」とあくまで叫ぶのか、冷静に「現状維持=失望感」とみなしてがっかりするのかは、それぞれの立ち位置で変わってくるところであるが、とりあえず19日時点の香港市民の声を、香港のラジオのニュースやネット上でざっくり拾ってみた限りでは、後者の声の方がやや多いように見受けられた。

立法会では18日正午過ぎに採決が行われる際、香港経済民生連盟(経民連)の林健鋒氏が休会を要求するも、議長に拒否され、その直後に建制派(親政府派、親中派)議員の多くが退席してしまう。残った37人だけで採決が行われ、反対28票、賛成8票で否決された。

反対票を投じたのは、汎民主派議員27人と医学界選出の梁家騮氏。賛成票を投じたのは自由党5人、工業界選出の林大輝氏、保険界選出の陳健波氏、香港工会連合会(工連会)の陳婉嫻氏。

林健鋒氏が休会を要求したのは、体調不良の劉皇發氏が立法会に到着するまでの時間を稼ぐため親政府派議員が退席し法定人数不足にするつもりだったらしいのだが、議員間での意思疎通が行き届かず一部の親政府派議員が議場に残ったため採決が続けられたという。

要するに、建制派の「史上まれに見る大チョンボ」が生んだ「否決」でもあったわけで、民主派も「大勝利」と声高に叫べるような状況でもない。

a0401a議場を退席した人、残った人、賛成と反対あれやこれや(拡大可能)

この「否決」で、民主派は2017年に向けて何か新たな機軸を中央に向けて提示することができるのか? 今までのように「我要全面普通選挙!」をひたすら叫び、10万人とか30万人とか、ときには50万人を超えるデモを行ったとしても、何一つ動かないのは、返還以降、何度も見てきたこと。結局、それの繰り返しに終わってしまいそうな気がする。その結果として香港は、大きな民主化の後退を見ることになるだろう。実際今回、あれほど待ち望んでいた「一人一票」の機会を逃してしまったのだ。その「一人一票」がたとえ中央主導型で、体よく民主派人士を排除する形式のものであったとしても、逃してしまったことには変わりはなく、その罪は大きい。それこそ「千古罪人」に値するだろう。

香港の民主化を阻止する最大の病巣は、民主派そのものだということを、多くの香港市民は実感している。民主派は誠実に市民の失望感に答えて行く必要があるが…。個人的には「もういいよ、民主派は」というところだ


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