【上方芸能な日々 浪曲】第26回 浪曲錬声会

浪曲
第26回 浪曲錬声会

毎度人気の「浪曲錬声会」。ってわけで、毎回「あああああ…」言うてますうちにチケット完売の憂き目に遭ったり、すっかり忘れてしまって行きそびれてしまったりと、どうもご縁がない。そこで今回は気合入れてチケットを抑えることに成功! それでも「あと数席」の危ういところだったが…。そして、なんともラッキーなことに、第1部、第2部どちらもゲットできた。これで多分、今年の運はすべて使い果たしたんだろう(涙)。

<ネタ帳>

【第一部】 

『夕立勘五郎 眉間割り』◆京山幸太
   曲師 一風亭初月
『ねぎぼうずのあさたろう』◆浪花亭友歌
   
曲師 沢村さくら
「雨月物語」より『浅茅が宿』◆真山隼人
  オペレーター 真山幸美
『発明王 豊田佐吉』◆天中軒涼月
曲師 沢村さくら

<観客入れ替え>

【第二部】

『太閤記―初陣の巻』◆浪花亭友歌 曲師 沢村さくら
寛政力士伝より『小田原相撲』◆京山幸太  曲師 一風亭初月
  落語「たらちね」より『東男に京女』◆天中軒涼月  曲師 沢村さくら
『落城の舞』◆真山隼人 オペレーター 真山幸美

今回出演の4人は、2月に文楽劇場の大ホールで開かれた『浪曲名人会』において、「お楽しみ座談会 ~関西浪曲界の新星揃い踏み!」で紹介された、文字通り浪界の期待の新星たち。女性陣の年齢は極秘事項のようだが、現役大学生(のはずの)幸太が21歳、隼人(今日出演で最年少らしい)が20歳になったばかりと、初々しい。そして聴くたびに、腕を上げて行っているのが、小生のようなボンクラなお客でさえ、しっかりわかるのだから、若さと言うのはほんとうに素晴らしい、そして羨ましい。

幸太
『夕立勘五郎 眉間割り』:話に引き込まれる。幸太の力と言うよりは、そこはまだまだ作品の力によるところ大。と言うか、ほとんどそこ。とにかく、勘五郎の「よくできた人」ぶりに、目頭が熱くなる思い。でも、悪役の立場にならざるを得ない花屋金兵衛の苦しい立場も、共感はできる。

♬寛政力士伝より『小田原相撲』:よい師弟関係が垣間見える、師匠幸枝若ゆずりの軽妙な、テンポの良い口演。彼のニンには、こっちの方がしっくり来た。去年の錬声会でも演じたネタだとのことで「去年いらした方には成長ぶりを感じてもらえたら」と言うが、恐らく去年来ただろう小生の周囲のお客さんたちも称賛。よかったやん!

友歌
『ねぎぼうずのあさたろう』:ちびっ子に人気の浪曲風時代劇絵本からの書き下ろしとか。なかなか一風変わったネタだったが、実際に、子供さんにもよくわかる筋立てだし、「ファンのすそ野を広げる」という意味では、子供を集めてこの手のネタを披露するなんてことも、浪界のなすべきことだと思う。今日は客層違いすぎた(笑)。でも、チャレンジは続けてほしい。

『太閤記―初陣の巻』:一部とは打って変わって、こっちは浪曲の本道。これはよく聴かせてくれていたと思う。こちらも『夕立勘五郎』同様、ネタがしっかりしていたから得をした感あるも、時折、自分の力で押してゆくような場面もあり。そろそろ次のステップにさしかかろうというとこまで来ているか? は?「次のステップでどんなステップやねん?」って? それがわかったら、評論家でメシ食えますがな(笑)。

隼人
♬「雨月物語」より『浅茅が宿』:真山一門は、歌謡浪曲で。出演者で最年少と言いながらも、もう入門5年目と、キャリアはそれなりに積んでいるから、安心感がある。怪異小説も、歌謡浪曲で歌いあげてくれると、なかなか情味深く味わえる。

『落城の舞』:初代真山一郎の代表作だけに、一層気合の入った舞台。パッと扇を広げた決めのポーズ、なかなかカッコよかった。一部、二部を通しての「大トリ」にふさわしい口演だった。彼のいい点は、表情がとにかく豊かであること。歌謡浪曲というジャンルである以上、表情で「語る、歌う」部分は非常に重要。おそらく師匠の二代目一郎の指導の賜物だとは思うけど、声と表情を目いっぱい使って、聴いてもらおうという姿勢が、非常に好ましい。

涼月
『発明王 豊田佐吉』:トヨタ自動車の原点である豊田佐吉、幼き日の物語。涼月の出身地、静岡県湖西市で今に語り継がれる偉人伝。浪曲という芸能は、その題材となるエピソードの幅の広さや柔軟性に、いつものことながら感心する。

♬落語「たらちね」より『東男に京女』:幸太の『小田原相撲』と共に、この日の各出演者の「ニン」にもっとも合ったネタだった。彼女自身が放つ可愛げや明るさと、民謡で鍛えた喉がうまくミックスして、楽しい口演に仕上がっていた。落語「たらちね」は上方では「延陽伯」。上方でやるなら、そっちを上手く取り込んで行った方が、もっと客受けはよくなるかなとも思うが、どうでしょう。いずれにしろ、お客を乗せる術に長けている。本人は案外、そこには気づいてないかもしれないけど。気づいてないなら、それでなお結構。

第一部が正午開演14時半打ち出し。第二部が15時開演17時半打ち出し。「ああ、しんど」というところだが、充実の5時間ではあった。

あ、それから!!天中軒雲月師のTwitter情報では、なんと、吉田拓郎が聴きに来てたとな! いや~、おれはまったく気づかなかった! ミュージシャンには浪曲好き、浄瑠璃好きが多いからねえ。

さて。この前日。かつて角座の大看板、音曲漫才の宮川左近ショウのメンバーで、左近ショウ消滅後も、弟子とのコンビで三味線漫才で人気だった、暁照雄がご浄土へと旅立った。元々は浪曲師だった照雄師匠、現役の浪曲師たちの親交も多く、上方の演芸界の大きな柱の一人だっただけに、同じ日にやはり浄土への旅立ちとなった今いくよちゃんとともに、その喪失感の大きさははかりしれない。

照雄師匠からすれば、ほとんど孫世代の、今日の出演者たちの熱演を、頼もしく思っているんじゃないだろうか。

照雄師匠および宮川左近ショウの思い出話は、またいずれ稿を改めてと思う。絶妙の三味線テクを披露した直後に「なんでこんな上手いんやろ」と笑わせるあのギャグ、大阪の子ならだれでも一度はやったことだろうよ…。

(平成27年5月30日 日本橋国立文楽劇場小ホール)


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