「大阪アジアン映画祭」”台湾:電影ルネッサンス2015”
『コードネームは孫中山』
(台題=行動代號:孫中山)<日本初上映>
台湾映画が活況を呈しているのは、『GF*BF(原題・女朋友。男朋友)』、『天空からの招待状(原題・看見台灣)』や『KANO』の大ヒットを見ても明らかで、そのヒットぶりはもちろんのこと、出来の良さには、香港映画びいきの身にはちょいと悔しい現状なのは確か。香港映画に比して台湾映画は総体的に洗練されているようで、日本人がさらっと入って行ける世界が映されているってのがあるのかも。英国文化の血を引くか、日本文化の血を引くか、同じ「華流」でも出来あがってくるものには、けっこう違いが出て来る。その辺の観察もまた、短期間に多くの作品を観ることができるこの映画祭の楽しさでもある。
にしても、この『コードネームは孫中山』だけど、中華民国建国の父たる「孫中山=孫文」を青春学園コメディのタイトルに持って来るってのが、いかにも台湾らしくって、なぜか好感を抱いてしまう。タイトル見ただけで、愉快そうな作品と期待できる。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
台題 『行動代號:孫中山』
英題 『Meeting Dr.Sun』
邦題 『コードネームは孫中山』
製作年 2014年
製作地 台湾
言語 標準中国語
評価 ★★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督): 易智言
領銜主演(主演):詹懷雲、魏漢鼎
特別演出(特別出演):張孝全(ジョセフ・チャン)、李千娜
特別客串(ゲスト出演):洪都拉斯(ホンジュラス)、楊淑君、黃河(リバー・ホァン)、張書豪(チャン・シューハオ)、胡瑋杰
その映画を観ようというきっかけは、人それぞれなんだろうけど、ポスターやチラシなど紙の宣伝物のビジュアルに影響される部分というのも、けっこう大きなウエートを占めるんじゃないだろうか?たとえ役者の姿がそこになかったとしても、ビジュアル戦略は重要。このポスターなんてまさにそう。少女アニメ的なお面に囲まれた孫文の像。なんか愉快そうではないか? 観てみようか、となったのは、小生だけではないはず。こんなポップなビジュアルに孫文がいらっしゃるってのが、とにかく笑えて仕方ない。
上映前に、主役の若者二人と易智言監督が舞台挨拶。そして上映後には観客とのQ&Aが。若者二人、ちょっと緊張してるかな? 無理もない、まだ16歳。心配しなくても、おじちゃんやおばちゃんたち、取って食べたりせえへんからね(笑)。それにしても、平日の真昼間に満員のABCホール。ほんと、みなさんお好きですね(笑)。
主役の詹懷雲、魏漢鼎は映画初出演。そりゃそうだ。この映画のキャスティングのために、監督自ら西門町に赴いて路上スカウトしたんだから。二人とも最初は「怪しい人じゃないかと不安に思った」と言う。当たり前だな(笑)。この二人が、ほんとにいい味を出して、この作品を最高の「青春おバカ映画」にしてくれたと思う。監督は「普通は脚本に従って役者に演じてもらうもんだけど、この映画では、二人の性格や人柄に応じて脚本を作り上げて行った」と言う。それだけに演技なのか、「地」なのかわからないけど、何とも言えない「ぶつかり合い」があって、面白いものを作り上げて行ったんだと思う。
そして上述の「少女アニメタッチのお面」が、非常に効果的だった。これがもし、仮面ライダーの怪人のお面だったり、ハロウィン的なものだったり、あるいはピエロだったりしたら、それはもう「ギャグ」の世界ではなく、シリアスなドラマになってしまうはず。「安モノの塗料使ってるから、かぶっているとかゆくなる」という設定も、青春おバカ映画の本道みたいで心をつかんでくれた。あるシーンで、このお面が「増殖」し、登場人物たちが声を出さずにゼスチャーで会話するってのがあるんだが、「あそこを撮っている時、『ああ、自分はクリエイティブな仕事をしているんだ』という充実感があった」と監督は言う。そんな言葉が出て来る監督が、すごく羨ましく感じた瞬間だった。
易智言監督にとっては『藍色夏恋(原題=藍色大門)』(2003)以来の長編作。その『藍色夏恋』で、陳柏霖(チェン・ポーリン)、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)らがデビューし、その後、大きく飛躍したのと同じように「この二人の若者が、この作品のデビューをきっかけに、大きく飛躍してくれるように皆さんも応援してやってください」と、優しい。作中そのままに、普段でも「天然ボケなところがある」詹懷雲、「芯が強く、ミステリアスな部分が魅力」という魏漢鼎。近い将来、二人が台湾映画の大きな柱に育ってくれれば、この舞台挨拶の場にいたおじちゃんもその時に自慢できるってもんだ(笑)。だから、加油!!
*「映画祭」出品作品につき、【甘口評】、【辛口評】は割愛。
《行動代號:孫中山》官方正式預告
(平成27年3月13日 ABCホール)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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