<大阪アジアン映画祭>”Special Focus on Hong Kong 2015”
『セーラ』
(港題=雛妓)<日本初上映>
いや~、久々に「三級片」を観たでござるよ(笑)。それこそ30歳代のころは外回り営業中に、「あ~あ、今日はもう営業やーめた!」って勝手に宣言して、油麻地や北角の薄汚れた映画館で題名もよくわからない「三級片」を観て、「中途半端やな~」なんて逆に退屈していたもんだ。若かったね、俺も(笑)。
「第10回大阪アジアン映画祭」にも、「三級片」が登場と言うので、観てきた。この三級片にTwinsの阿Sa(アサ)が出演ってのも、またこれがもう、そそるでござるよ…。
香港という都市は、自由放任経済がウリである一方で、取り締まるべきはかなり厳格なルールでビシッと線を引くところがあり、これはこれで観察していると面白い。映画においては、レイティングシステムをきちっと線引きしており、それは下記の4段階に分けられる。
第Ⅰ級:適合任何年齡人士觀看(年齢に関係なく観ていい)。定義=いかなる暴力、色情、スラング、恐怖シーンもない。
第ⅡA級:兒童不宜(児童だけでの鑑賞には適さない)。定義=僅かではあるが、スラングや恐怖シーンがあったり、暴力や格闘シーンもある。児童は保護者監督のもとで鑑賞のこと。
第ⅡB級:青少年及兒童不宜(青少年、児童だけでの鑑賞には適さない)。定義=裸体や性行為をにおわせる場面が含まれる。明確なスラングや恐怖シーンがあり、暴力、格闘シーンには流血を伴う。青少年、児童は保護者監督のもとで鑑賞のこと。
第Ⅲ級:只准18歲或以上人士觀看(18歳以上が鑑賞して良し)。定義=明確なアダルトシーンがある。大量のスラングや流血場面がある。児童、青少年の鑑賞はならぬ。
今回観た『セーラ』はこのうちの「第Ⅲ級」に相当する。巷では「三級片=さんかっぴん」と呼ぶもので、ほとんどは昔の日本で言う「成人映画」になる。あまり暴力シーンが酷いからと、「三級片」に指定されたってのは聞いたことがない。ゼロではないんだろうけど。ちなみにテレビでは、放映時間帯で区別している模様。
港題 『雛妓』
英題 『SARA』
邦題 『セーラ』
製作年 2014年
製作地 香港
言語 広東語
評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督): 邱禮濤(ハーマン・ヤウ)
領銜主演(主演):任達華(サイモン・ヤム)、蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)
主演(出演):柳俊江(ライアン・ラウ)、スナドゥチャ・タドゥラビアブ、孫佳君(サニー・シュン)、何華超(トニー・ホー)
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
まず、阿Saが演じる主人公セーラの男同僚のポール役の柳俊江、映画では見かけたことないけど、かなり頻繁に目にしている男だな…って思ってたら、以前、TVBでニュース読んでた男アナだった。もちろんこれが映画初出演。今は九龍巴士(カオルーンバス)の偉い人らしい。それと大学の男朋友、これもどっかでお目にかかってないか? と思ってたら、香港電台のDJ、凌梓維だった。
上映前後に邱禮濤監督のお話あれこれあり。詳しい内容については、映画祭のHPにそのうちアップされるだろうし、逐一メモってる御熱心な方たちがブログなりで紹介してくれるだろうから、そっちを見てもらうとして(笑)。
監督は今回、大阪で何をしたいかの問いに「図書館へ行きたい。聞くところでは歴史的に由緒ある建造物らしいし、蔵書数もすごいらしいから、どんなものか見てみたい」とのこと。聞いた? どっかの市長とその腰巾着の府知事。あんたらと外国からのお客さんとでは、相当価値観の開きがあるな。「グローバル化」とかたやすく口にするなよ、悪いこと言わんから。
これは小生も気になっていたんだが、「アイドルのTwinsの阿Saをこの映画の主役に使うということで、彼女の事務所側から反発はなかったのか?」と。監督曰く「もちろん、作品のチェックはあったけど、それだけ。それよりも、彼女はアイドルということで、これまでの出演作品はお嬢さんとかお姫さんとかそういう『カワイイ』役だけしかやってこなかった。それだけに、ぜひこの役は彼女にさせてみたかった。彼女にとってもこの作品は、今後の彼女の役者生活の上で、大きな意味を持つ作品になったはず」。いやあもうねえ、おじちゃんはねえ、阿Saの濡れ場にはびっくらこきましたよ! それだけにこの質問と同じ心配をしていたけど、確かに、今回の阿Saはまったくこれまでとは違う一面、って言うか、「お前、そんなんできるんか!」みたいな顔を見せてくれており、アイドルから大きく脱皮したことを印象付けたと思う。そんな阿Saは今年の金像奨の最優秀女優賞の候補に名前が挙がっている。
もうひとつ、プロデューサーが杜汶澤(チャップマン・トー)ということについては、「いまの香港映画は、マーケットの規模を考えると、どうしても大陸での公開を意識して作らざるを得なくなるが、彼は『大陸を意識しなくていい映画を撮ってくれればいい』と言ってくれたので」とのことだった。うん、杜汶澤はイイ奴だ。
小生と邱禮濤監督の出会いは、『八仙飯店之人肉饅頭(原題=八仙飯店之人肉叉燒包)』であり、『エボラシンドローム~悪魔の殺人ウイルス~(原題=伊波拉病毒)』であったから、悪趣味な監督というイメージしかなかったが、今回の『セーラ』でかなりイメージが変わった。まあ、『エボラシンドローム』にしても、90年代には「こんなバカな話が」と思っていたのが、現実のものとなったのだから、あの作品もまた「社会派」だったってことか…。う~ん…。
◆若干の「ネタバレ」御免。知りたくない人は、以下スルーを!◆
「三級片」というだけで、鼻の穴大きくして触角をピクピクさせていた身を改めて反省し恥じらうしかなかった。確かに大胆な濡れ場はあったけど、それはそれとして、この作品は社会派の作品だった。
敏腕の女性記者セーラの過去と、タイにおける少女買春あるいは女児の人身売買という現在を見事に縦糸、横糸に紡いだ丁寧な作りの作品だった。そこに重要な「配色」となって登場するのが、重鎮の任達華でありチェンマイで体をひさいでいた少女役のスナドゥチャ・タドゥラビアブというわけか。かなり精密な織物であり、ある意味、手ごわい作品だった。
「三級片」とは言え、たとえば学校教育の場で見せても、何ら問題のない内容だと、小生なんかは思うのだが…。実際、香港でもかなり評価はされている模様。これは「ABC賞」をとってもらって、ぜひともABC朝日放送で放映してもらい、広域近畿圏の視聴者に観てもらいたい作品。
上映前、監督がこんなことを言っていた。「知識を得ることで、人は成長する。そんなことを描きたかった」と。セーラは彼女なりのやり方で知識を得て行き、敏腕記者になった。そして今度は、タイに「もっとたくさんのセーラ」を見つけて、これを追って行く。女優として阿Saは、この作品に出会い、今までとは全く違う役を演じることで新たな「知識」を得て、役者として人間として、成長した…。そんな図式が見えて来るような、監督の言葉だった。
*「映画祭」出品作品につき、【甘口評】、【辛口評】は割愛。
電影《雛妓》首支育成預告片 (三級版)
この後、「HONG KONG NIGHT」そして『點對點』が始まる。当方の日程上の都合とはいえ、2連戦は疲れるでござるよ(笑)。
(平成27年3月12日 ABCホール)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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