【睇戲】『アバディーン』(港題=香港仔)<日本初上映>

<大阪アジアン映画祭>”Special Focus on Hong Kong 2015”

『アバディーン』
(港題=香港仔)
<日本初上映>

1424418627423403821803月6日、幕を開けた「大阪アジアン映画祭」は、数えて第10回。今回も日本をはじめ、台湾、香港、大陸、韓国、東南アジア各国などアジア各地を中心に欧米に至るまで、選りすぐりの作品が集まって、大阪の映画ファンを楽しませてくれる。

まずは香港映画の『アバディーン』を観てきた。

香港生活2年目の1996年7月から香港撤退の2009年12月まで、小生が住み続けた香港島南部の漁港の街、それが香港仔(Aberdeen)。そんな愛おしい街の名前が映画タイトルになって、昨年、香港で公開された。この報を耳にして、「今すぐ観に行きたい!」と思ったが、単なる一大阪市民となった今、そう簡単に香港へ映画を観に飛んで行くというわけにはいかず、「どうか近いうちに日本で上映される日が来るように」と願っていたら…。来ました!大阪アジアン映画祭の「Special Focus on Hong Kong 2015」のひとつとして上映される日が! これは万難を排して駆けつけるしかないだろう!

1618408_233672440146557_1366184530_n港題 『香港仔』
英題
 『ABERDEEN』
邦題 『アバディーン』
製作年 2014年
製作地 香港
言語 広東語

評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督): 彭浩翔(パン・ホーチョン)

領銜主演(主演):古天樂(ルイス・クー)、曾志偉(エリック・ツァン)、楊千嬅(ミリアム・ヨン)、梁詠琪(ジジ・リョン)、吳孟達(ン・マンタ)、吳家麗(キャリー・ン)

主演(出演):余文樂(ショーン・ユー)、杜汶澤(チャップマン・トー)、鄭希怡(ユミコ・チェン)、陳靜(ダダ・チャン)、蔡潔(ジャッキー・チャイ)、李汶桂(マーガレット・リー)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

自分のホームタウン香港仔がタイトルになっていることもさることながら、その出演陣が、もう小生にとっては嬉しすぎるメンバー勢ぞろいなのである。

たとえば呉孟達。80~90年代の香港映画でどれだけ彼の姿を観たか。その役どころは、ほろっとさせてくれるものからナンセンスギャグまで幅広く、特に『過ぎゆく時の中で(原題=阿郎的故事)』、『今すぐ抱きしめたい(原題=天若有情)』は印象深い。呉家麗もその年代に多く映画に出演しており、『應召女郎』シリーズ、『友は風の彼方に(原題=龍虎風雲)』、『大丈夫日記(原題=同じ)』などなど、印象に残る役どころは枚挙にいとまがない。

梁詠琪は在住当時に人気が頂点にあって、銅鑼湾のそごうの裏で会社帰りに偶然ロケ現場に遭遇した時は、見知らぬ香港男子たちと「うぉ~~!ジジがいてるぅぅぅ!!」ってもりあがったもんだし、ユミコはなぜ日本人みたないな英語名(?)をつけてるのか不思議だったし、杜汶澤はときに発言が波紋を呼ぶけど、いつもユニークで友達ならきっと楽しいだろうし、楊千嬅はいつ見てもイイ女だし、曾志偉は香港芸能を語るにあたって欠かせない人物だし…。

いやもう、名前見てるだけでワクワクするのだ。ただし。名優ぞろいの映画が、必ずしもいい作品になっているとは限らない。これは香港だけの話でなく、今までそれでどれだけ「裏切られて」きたことか。油断は禁物(笑)。

◆「ネタバレ」御免。知りたくない人は、以下スルーを!◆

午後9時開演という「レートショー」の時間帯ながら、ぎっしり満員。皆さん、お好きです(笑)。

映画祭出品作品だからということもあるだろうが、終演後、自然と拍手が起きた。それだけ見応えがあったということだろう。小生の個人的な期待が大き過ぎたか、肝心の香港仔の風景は、水上レストラン「ジャンボ」の裏側が遠景で一瞬映っただけだったが(笑)。ではなぜにタイトルが『香港仔』は、「ああ、なるほど」と。

上述した俳優陣はもちろん、子役で父親(古天樂)に「ブタ子(小豬)」と呼ばれていた李汶桂(マーガレット・リー)まで、実に役どころをしっかりわきまえた好演技を見せていた。キャスティングの妙がまず印象的だった。はぁぁ、にしても、梁詠琪もお母さん役か…、歳月は流れるねぇ…。

230112.53673791香港の道路標識で、至るところでみかけるのが「所有目的地」。要するに「この道(このレーン)はすべての目的地に通ずる」という意味なわけだが、「そんなんわかってるがな!」って突っ込みたくなる表現である。狭い香港のこと。どの道を走っていても、いずれは目的地にたどり着くのは明白なんだけど、この投げやりな、アバウトな、一方で上手い事言うねぇ的な態度が、いかにも香港らしくて、一介の旅行者だった時代から気に入っていた。

この作品のキーワードもまた、「所有目的地」。どの場面でどう使われているかは、観てのお楽しみにしてもらうとして、このいかにも香港らしい表現が、呉孟達演じる鄭東一族の人たちの或いは香港という土地の過去、現在そして未来のことだとしたら、これほどにあてはまる言葉はないなあ、というのが、観劇後に一番強く思ったこと。そしてわずか15年足らず(見方によっては15年もの長きにわたって)香港で生きた小生の過去、現在、未来もまた「所有目的地」と書かれたレーンの上にあるのだと。

「所有目的地」をキーワードに、香港と香港人を暖かく描いた彭浩翔に拍手喝采したい。この作品を最後に、ひとまず香港映画から抜け出して、大陸に活躍の場を移した同監督の、香港への思いがいっぱいつまった作品だった。一時は「ホラー映画かよ!」って思う場面もあったけど(笑)。それもまた、香港の日常!

*「映画祭」出品作品につき、【甘口評】、【辛口評】は割愛。

巴福斯影業發行《香港仔》終極預告片

加えて、エンディングに流れた黃耀明(アンソニー・ウォン)が歌う主題歌『目的地』が、この映画のエッセンスをあまりにもうまく語りすぎていて、ググッとくるものがあった。これはいい歌だよ~。

黃耀明《目的地》(巴福斯影業發行電影《香港仔》主題曲)

(平成27年3月9日 シネ・リーブル梅田)


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