【上方芸能な日々 文楽】平成27年初春公演<2>

人形浄瑠璃文楽
国立文楽劇場開場三十周年記念
平成二十七年初春公演 第一部

前回は写真でごまかしたので、今回は感想などを。

『四季寿』、『千本道行』と舞踊モノが2本あって、「え~、そんな殺生な~」と思ったけど、見たらそうでもなかった(笑)。一方で、太夫の聴かせどころってのが、こういう狂言建てになるとグッと減ってしまうのは、浄瑠璃マニアとしては辛いところ。さりとて正月から重厚な通し狂言ではお客はしんどい。なかなか難しいね。

花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)

万才・海女・関寺小町・鷺娘
呂勢を要に、芳穂、希、靖、咲寿と若くてイキのいい太夫が並び、三味線は清治師匠が手綱を取りながら、宗助、清馗、寛太郎、錦吾と手練に長けたメンバーで。床が華やかなら、人形も関寺小町の文雀師匠を筆頭に、清十郎(鷺娘)、簑二郎(海女)、玉佳(太夫)、才蔵(一輔)で、年初の舞台を彩る。文雀師匠は言うまでも無いが、清十郎の鷺娘は、ただでさえ明るい舞台が一層の華やぎを増して美しい。「海女」に登場するタコの動きが楽しく、冬休みとあって親子連れで観劇中のお子たちも大喜び。で、タコはだれが遣ってるの?気になるね(笑)。

彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)

◆初演:天明6年(1786)閏10月、大坂竹本座
◆作者:梅野下風、近松保蔵合作
*全十一段。今公演では八段目「杉坂墓所」、九段目「毛谷村」を上演

「なんか正月から地味なのやるのね~」って思ってたけど、いやいや、これはなかなか面白いものだった。歌舞伎で観たことあったと記憶するが、多分、文楽で観るのは初めてだったような気がする。

「杉坂墓所の段」
掛け合い。松香大夫以外は入れ替わり立ち替わり。「上手い!」とか「好き!」とかは特に思わないけど、松香大夫が出て来ると「ああ、文楽に来た」って思う。いわゆる安心感。そこらがキャリアなんでしょうな。津國大夫もそう。でも、もしかしたら少し喉痛めてたのかな?ちょっといつもと違った気もしたが。気のせいであればそれでよし。南都大夫が吉岡一味斎の家来佐五平を語ったけど、老人の息絶える場面って、難しいねえと思いながら聴く。

4月に「二代目吉田玉男」となる玉女さん、きりっとしていて舞台がひきしまる。いいね~!

「毛谷村の段」
しかしまあ、「微塵弾正(実は吉岡家の仇敵、京極内匠)」っていかにも悪そうな名前だなと、吹いてしまいそうになった(笑)。その微塵弾正、まさに画に描いたような悪い奴で、その憎らしいところと、六助の謙虚さを咲甫がうまく語っていた。ところで…。清介師匠はあんなにも「ザ・スキンヘッド」だったっけ??

切場、咲さん&燕三。ここはもう、思いっきり身を委ねて結構かと。筋立て自体は、六助の言うように

「イヤ親にならうのかゝぢやのと、押入れ女房の手引きした、あの子も滅多に油断はならぬ」

という、ちょいと新喜劇(吉本でも松竹でもありうる)を思わせる展開があったりして、仇討ストーリーにしてはおもしろい。「なんか地味…」というのは思い込みであって、観れば聴けば相当楽しめる。

義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)

「道行初音旅」
楽しみにしていたのは、幸助が遣う狐忠信。従来なら、狐の化身モノは勘十郎の当たり役のはずだけど、勘十郎は静御前で。なんか時代のうねりを感じた。床も、太夫が津駒(静御前)、文字久(忠信)を軸に、ツレは靖、希、小住なら、三味線は寛治師匠と藤蔵を軸に、清丈、龍爾、清允となかなかフレッシュな顔ぶれ。舞台も両サイドの小幕、囃子部屋まで満開の桜の書割で覆っていまうという斬新な設営で、明るさが増してよかった。扇のパスも見事に決まって、お客さんうっとり&拍手喝采の渦。お子たちも多かったので、喜んでいた。

近いうちに第2部にも参りまする。その日は、今宮戎から福娘御一行が来てお神酒をいただけるというので、でけるだけ早い目に(笑)。

(平成27年1月5日 日本橋国立文楽劇場)


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