【睇戲】中篇映画祭2014『箪笥の中の女』(濠題=櫃裡孩)』、『城の外(濠題=城牆外)』

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

この日もまた、以前の「マカオ映画祭」で見逃した作品を観に、シネヌーヴォXへ。

今日は2本。両方とも、まさしく「中編」と言える上映時間で、約45分。ってわけでお値段も2本分(ケチくさいこと言うな、とww)。ではまず最初の作品から。

濠題『櫃裡孩』
英題『I’m Here』

邦題『箪笥の中の女』
製作年 2012年
製作地 マカオ
言語 広東語/43分/カラー
評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

監督:徐欣羡(トレイシー・チョイ)

これはいいドキュメント作品だった。
マカオの二人のレズビアンの成長物語を、実際のドキュメントと「レズを扱った映画=『女嬌』」が並行して進んでゆく。

「レズの映画を撮るなら、レズの人にまずは話を聞かなければ」と、友人の取材を重ねる部分が、ドキュメントになっている。
「マカオは狭くて、レズビアンが生きにくい街」と、二人は口をそろえる。奇しくも二人がその「生きにくさ」から解き放たれたのは、台湾留学がきっかけだった。
「マカオには、台湾や香港のような自由さがない」と二人は言うが、台湾はいざ知らず、香港はこれから政治的に大変な時代に突入するよ…。

邦題にある「箪笥の中」とは、そんな狭苦しくて息苦しい街、マカオのことだというのは、映画が始まって数分で理解できるのだが、もう少し気の利いたタイトルのつけようがなかったのかな、箪笥はちょっとなぁ…。いつになったら、「箪笥の中」でひきこもってる女が出て来るのか、期待してしまったやないかい!(笑)

ま、それはさておき。ドキュメント取材に対して、思うところを恐らくほとんど包み隠さず話した二人は、もうすでに「箪笥の中」にはいない。同じように、実に闊達にしゃべりまくった二人の母親も、「箪笥の中の母」ではない。「幸せに生きてほしい」「一番楽だと思う生き方をしてくれれば」と話す母親もまた、その言葉に行きつくまでに、「狭苦しくって生きにくい」マカオでもがいていたのだろう。自分の年齢的に、母親二人の言葉に感情移入してしまった。俺、子供いないけど(笑)。

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濠題『城牆外』
英題『Beyond the Walls
邦題『城の外』

製作年 2014年
製作地 マカオ
言語 広東語/45分/カラー
評価 ★★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

監督:陳子揚(ウォレス・チャン)

これも力作のドキュメント映画。

まず、何よりも驚いたのが、作品の舞台となった路環島(コロアネ島)の変貌ぶり。
小生が知っている路環島は、ホテルと言えばウエスティンホテル(現在は、グランド・コロアン・リゾート)のみ。あとは香港ですら忘れてしまったような古びた漁村と黒沙海灘(ハクサビーチ)というローカルな海水浴場、そしてポルトガル植民地時代のまんまの教会などの建造物の島というもので、人口密集度の高いマカオ市街地と比べると、別世界。時の流れが非常に穏やかな場所だったのだが…。
おそらく、この島に開発の波が押し寄せたのは、マカオ空港開港や、カジノの市場開放などによる急激なマカオ全体の再開発のためだろうけど、決定づけたのは、すでにここが「島」でなくなってしまったことだろう。

Mapa_de_Macao上は1990年代のマカオ全図。一番下の島がコロアネ島。マカオ市街地(大陸)、氹仔島(タイパ島)がそれぞれ橋でつながっていた時代。

Macau-CIA_WFB_Map現在のマカオ。氹仔島と路環島は埋め立てでつながってしまい、埋め立てられたエリアは「路氹(コタイ)」と呼ばれている。いずれは、マカオ市街地とも埋め立てでつながってしまうのかな? CHINA側の埋め立ても、これまたすごい勢いなのがわかる。

路環島の新興団地、石排灣。これはもう、香港の団地そのもの。超高層アパートが無機質な表情で建ち並ぶ。こういう場所は、必ず人の心も乾燥させてしまう。そんなけだるい表情の青年。

「一日村民活動」の中心となって、古き良き路環島の良さを多くの人に知ってもらいたいと言う若い女性も、実はこの団地の抽選に当たった。「矛盾を感じるけど」と複雑な胸の内を漏らす。

村に移って来て、数十年という中年男性は、昔ながらのバラックのような家に住んでいるが、ここの新鮮な空気や緑が好きだと言う。ご近所付き合いも忘れない。

それぞれの路環島への思いを丁寧に取材した内容に出来上がっていた。

次回、香港へ行くのはいつになるか、まだ予定を立ててはいないが、十数年振りに路環島、氹仔島を訪れて、しっかりと歩いてみたい。あの、よい意味での「前時代的」な村や山や海の景色がどれほどの変貌を遂げたのか、自分の目で確かめておきたい。この映画を観る限りでは、残された時間は、ほんわずかしかなさそうだ。昼間のマカオなんて、久しぶりになるなぁ(笑)。

澳門影像新勢力 LVP 2014 – 城牆外 | Beyond the Walls

(平成26年9月9日 シネヌーヴォX)


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