第9回大阪アジアン映画祭
『甘い殺意』(台題=甜蜜殺機)
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
第9回となった「大阪アジアン映画祭」。 今回も日本はもちろん、台湾、香港、韓国、東南アジア諸国の話題作、自信作が10日間にわたり大阪の街で公開される。
日本初公開や海外初公開の作品が多く、映画マニア垂涎のラインナップとなっており、オープニングを飾る台湾映画『KANO』のように、チケット前売り「即完」どころか「瞬殺」の作品も。
かく申す小生も、その『KANO』前売り瞬殺の前に、涙を流した一人…。そう遠くない将来の本格的な日本公開を待つとする…。
で、 いくら「職業:暇人」な身分でも、時期的に言えば確定申告なんかもあるし(笑)、実際にはそれほどヒマがあるわけでもなく、「これ!」というのを数本に絞って、この映画の祭典を楽しむこととしたい。 んなわけで、まず最初に見たのは、台湾の今年の旧正月公開映画『甘い殺意』。
小生が行った上映回には、監督の連奕琦(リエン・イーチー)がゲストで登場。上映前に簡単に挨拶があり、上映後には作品についてのあれこれのおしゃべりがあったんだけど、監督を見れた!というミーハーな気分よりも、久々に大好きな台湾の「ナマの台湾式普通話」が聞けたという喜びの方が、圧倒的に大きかった奇妙な観客であった(笑)。
この作品、なんと言ってもかつてのスーパーアイドルユニット「小虎隊」のひとり、蘇有朋(アレックス・スー)が主役の一人だというのがイイ。イイって言うか、懐かしいのだよ! 小生が香港住まいを始めた頃は、小虎隊はちょっと前に解散してはいたけど、メンバーだった呉奇隆(ニッキー・ウー)ともども、台湾、香港を股にかけて大活躍してた時代。中華圏芸能界では、アイドル百花繚乱時代の頂点と言える時代だったねぇ…。
また、99年には香港ATVでも放映された、中華圏空前の大ヒット痛快時代劇テレビドラマ『還珠格格』『還珠格格2』で乾隆帝の皇子・永琪を好演したのもこれまた懐かしい。 今回、久々に彼の演技を見て、バリバリのアイドル時代から見れば蘇有朋もイイ感じで齢を重ねているなと、なんか嬉しくなった。何なのかな、この気持ち。別にファンでもないのにねぇ…。
そんな蘇有朋が、台湾は高雄警察署の冴えない中年独身刑事役として、事件に解決に挑んでゆく…。
台題 『甜蜜殺機』
英題 『Sweet Alibis』
邦題 『甘い殺人』
製作年 2014年
製作地 台湾
言語 普通話
評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督): 連奕琦(リエン・イーチー)
主演(出演):蘇有朋(アレックス・スー)、林依晨(アリエル・リン)、呉中天(マット・ウー)、雷洪、郎祖筠、馬念先、林暐哲(阿KEN)、林柏宏(オースチン・リン)、朱芷瑩、高盟傑、杜姸、林佳陵(レナ・リン) 他
【甘口評】
なるほど旧正月公開作品だけあって、「サスペンスコメディ」として、存分に楽しめる。お見合いセンター通いで、危険を避けてばかりの気弱な刑事(蘇有朋)が、「監視」を押しつけられたのが、刑事としての気位が高いが融通の利かない「お嬢様(なぜお嬢様かは見てのお楽しみに)」な新米女性刑事(林依晨)。これが二人ともピタッとはまっていて、かなり高得点をたたき出す好演技。いいコンビだった。
また、台湾芸能界の超ベテランで、誰もが知っている雷洪、郎祖筠のコンビもこれまた味があって、「へ~、こんな演技もしちゃうのね」みたいなこともやってくれて、これなら台湾観客も大喜びだろうというもの。(*後付け:台湾ではそのシーン、カットされたんだとか…)
アラフォーダメ刑事の甥っ子役、林柏宏(オースチン・リン)もイイ感じだったし、売れっ子の呉中天(マット・ウー)もイイね。
連奕琦監督は、「台湾映画には、サスペンスというジャンルがまだ確立されていない」と言う。この作品がきっかけになるかどうかはさておき、台湾の観客のウケはよかったらしいので、希望としてはきっかけになる作品であってほしい。で、くれぐれも、香港警察モノの踏襲は避けて、台湾独自のサスペンスのジャンルを創出してほしいなという期待も込めての、星4つ。
原題『甜蜜殺機』、邦題『甘い殺意』。このネーミングもまた、事件のカギとなる、ある食べ物を指しているという単純明快さも好感が持てる。映画はこうでなくっちゃね!
エンディング曲は蘇有朋。当然だけど、小虎隊時代とは全然違うオトナの歌いっぷり。ノリ良いリズムで、この作品によく合っている。70年代に台湾で放映された刑事ドラマ『天眼』の主題歌とのこと。道理で小生の年齢と肉体に合ったということね(笑)。
《甜蜜殺機》電影主題曲:: 老天有眼 MV
【辛口評】
総体的には、文句なしのよくできた「サスペンスコメディ」。
ただ、連奕琦監督が「テーマは愛」と言ったけど、「愛」が感じられたかと言えば、焦点がぼやけすぎてしまった感あり。あまりにも「愛」を盛り込み過ぎたのかもしれない。また連監督は「少年犯罪についても描きたかった」と言うが、描き切れてはいない。「罪を犯した少年(アラフォー刑事の甥っ子=林柏宏、実は事件に大きく関与)のその後は?」との質問があり、「実は少年の結末を時間の都合でカットせざるを得なかった」と、連監督。いやはや、正直な人だニャ(笑)。では仮に、少年の行く末をきちんと収めることがことができていたとして、「少年犯罪」をテーマの一つに据えた作品になっていたかどうかは、かなり疑問。
事程左様に、随所に散漫さが見え隠れする仕上がりだったとも言える。ただ、台湾内での位置付けが「春節娯楽映画」ということであるなら、文句のつけどころは見当たらない。
《甜蜜殺機》正式版預告:: 2014.1.17 爆笑登場!(『現地予告版』)
(平成26年3月9日 梅田ブルク7)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
2件のコメント