【上方芸能な日々 文楽】平成26年初春公演・第2部

人形浄瑠璃文楽
平成二十六年初春公演 第二部

201401bunraku_poster遅ればせながら、明けましておめでとうございます。

「遅ればせ」と言いながら、大阪では十日戎までは「明けまして~」で許されるような空気がありますから、許してね(笑)。

今年最初のブログエントリは文楽ネタでまいりましょう。これまでにない美しいチラシであります。さすが阿古屋さんです。

世間の多くが「仕事始め」となった1月6日から、大阪は大変冷え込んでおりまして、アタシの住む大阪市内の某エリアでも、明け方の気温が氷点下にまで下がっていました。アタシは暑いよりも寒い方がよっぽど辛抱できますので、別に気にはならんのですが、世間はそうは言わないので適当にハナシ合わせて「寒いの難儀しますな~」なんて言ってますがw。

さて、文楽。
まずは午後の部(第2部)から観てまいりました。今回も存分に浄瑠璃の雨、霰を浴びることができる良席を確保できました! しかしながら、風邪がすっきりせぬままに行ったから、ちょっと集中力には欠けたのだが…。
とは言え、新春の文楽劇場は華やいでいて、ウキウキします。

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正面玄関には門松が飾られています
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文字と絵は熊野那智大社の朝日芳英宮司の揮毫による
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そして舞台中央上部に大凧となって、にらみ鯛ともども掲げられる
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もちろん、にらみ鯛もロビーに
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開演前の床にもお飾りがあって、正月ムードいっぱい

初日となった1月3日の第1部は補助席も出る満員御礼の大盛況だったということですが、やはり平日の午後4時開演となるとお客入りは厳しい。しかし、見た目65%の客入りは、アタシの感覚では「健闘してるやん!」ってところなんですが、意地悪な何某の市長さんは、「これでは補助金満額出せまへんな」と言うんでしょうな。ま、それはさておき。

面売り

■作詞・作曲 野澤松之輔
■初演 昭和19年(1944)10月、大阪四ツ橋文楽座

 

「おしゃべり案山子」なんてのが出てきて、伊坂幸太郎の『オーデュボンの祈り』が頭に思い浮かぶかもしれないけど、この「おしゃべり案山子」は人間でござるよ(笑)。そういう名称の大道芸人。面売りの娘がおしゃべり案山子の講釈に合わせて踊るという趣向。新春舞台を華やかにというところ。

その割には、太夫陣の掛け合いがもうひとつなように感じる…。人形は一輔、勘彌で盤石だっただけに惜しいなぁ…。

その一輔だが、とにかく「たたずまい」がいい。後述の阿古屋でも出遣いで左を遣ったが、とにかく「たたずまい」がいいのである。最近とくに目立ってきたと思う。春には高校生の御子息が簑助師匠に入門するという。故・桐竹一暢の息子=若手と思っていたら、そんな大きなお子がおったとは! 

 

近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)

■作者 不詳(諸説あり)
■初演 不詳*天明5年(1785)に正本が刊行されている


「四条河原の段」

文字久大夫は良かったけど、御簾内から聴こえる『ぐち』(上方唄)が修練不足を感じる。

「堀川猿廻しの段」
切場。住さん登場。とにかくお客さんは温かい。ちょうど1年前が復帰公演。それからさらにリハビリを積んで堀川を語る住さんは超人の域に達したのかの如し。地歌『鳥辺山』に聴き入る。この人がごくごく目の前の床で浄瑠璃を語っている、そこに自分が居る、この図式が嬉しいし初春を寿ぐにふさわしい場だと感じた次第。

後。英大夫、清介で。清丈、ツレ弾きで登場で「猿廻し」。堀川は何度観ても、ここに登場するお猿二匹に見取れてしまうし、意地らしゅうて胸が締め付けられる。しきたり上、仕方ないのかもしれないけど、番付にお猿を遣う人形さんの名前があればなぁと、毎度思う。もちろん、おなじみの「そりゃ聞えませぬ伝兵衛さん」もゾクッとね。

 

壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)

■作者 文耕堂、長谷川千四 合作
■初演 享保17年(1732)、大坂竹本座
*近松作『出世景清』の改作


「阿古屋琴責の段」

上のチラシの写真にあるように、阿古屋の絢爛豪華な衣装に客席からどよめき。「三曲=琴、三味線、胡弓」を阿古屋に弾かせて、愛する景清の行方を吐かせようとする詮議の場。

「わりとよくかかる芝居ですわ~」なんて思っていたら、前回観たのは2004年の新春公演のこと。いやはや、歳月の流れの速いのなんの、10年前やもんな…。

見せ場は当然、「琴責」。阿古屋は三人出遣い。番付には主遣いしか名前は出ないけど、主の勘十郎はもちろん、とにかくたたずまいが美しい左の一輔、足の勘次郎が見事で惚れ惚れする阿古屋。

お客は床で三曲を奏でる寛太郎の手さばきと人形の勘十郎、一輔の手さばきを首を右左に振って見比べながら舞台を観ることになるわけだけど、これがもう寸分の狂いなし。圧巻。一曲終わるごとに「ほぉ~」というため息が一つあっての拍手、拍手、また拍手。これ、今のテレビのサイズなら、画面を割って伝えることも簡単だろうから、ぜひとも収録して放映してほしいな、頼むわな、NHKさん!そのための受信料でっせ!

出遣いと言えば、今回足を遣った勘次郎がTwitterで投げかけた当方の質問に答えてくれたのを思い出す。

やったね、勘次郎くん。出遣いでの足、一歩ステップアップできましたね!
こうして若い力が着々と力をつけていっている。

今年も文楽から目が離せませんぞ、皆の衆!

(平成26年1月7日 先帝崩御の「昭和天皇祭」の日、日本橋国立文楽劇場)



 


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