第3回国宝薬師寺東塔保存修理現場見学会
いやいや、それはもう結構な現場を見学できた。
応募総数約3000人のうち、抽選に当たった人約1000人にのみ許された、1300年前の建造物の修理現場見学会。アタシはなんてラッキーなヤツなんだよ!
11月9日と10日の二日間にわたって開催された見学会。小生は2日目の10日(日)、午後3時半の部に参加した。
雨の薬師寺。
思い起こすのは、3年前の「南こうせつ薬師寺特別音楽会」。
あの日は土砂降り。せっかくの白鳳伽藍でのおいちゃんとのひとときも、おいちゃんのライブにありがちな(笑)土砂降りの野外ライブ。
そして今日もまた雨。よっぽど薬師如来さんは小生に雨の荒行を強いられるのがお好きなようでありまする…。
見学会は東塔解体のために作られた「素屋根(すやね)」内部で行われるので、雨にぬれる心配は無いのだけど、やっぱりこういうのはカラッと晴れた日に…、なんて贅沢は言いますまい。冒頭でも触れたように、この見学会に参加できたこと自体がラッキーなんだから。
そう言えば、そのライブで、もうすぐ東塔が解体修復工事に入るため、大きな囲いに入ってしまうので、今日、東塔を見ることができた皆さんは、ラッキーですョ! みたいなこと言ってたな…。
実際には平成21年に始まった工事が終わり、修復を終えた東塔がお姿を見せるのは、まだまだ先のこと、平成30年。いかに大規模な作業か…。我々の家で、ちょこっと雨漏り修理するのとは大違い(比べたらアカンわな)。
写真=遠近の差があれども、同じ方向から撮影した、今昔。平成22年5月(上)と現在
さて、現場へはおよそ50人ほどのグループで向かう。全員ヘルメット着用。自分がどんな顔か見たかったね(笑)。
そしていよいよ素屋根の内部へ。胸の鼓動が高まりまするな~。まず見学したのが、がっしりと組まれた「三手先(みてさき)」という組物。いきなり「わぉ!これぞ日本の建築の粋!」みたいな構造物。
重の重い軒は「尾垂木(おだれき)」という斜めの材、方形の「斗(ます)」、横長の「肘木(ひじき)」を積み重ねた「三手先(みてさき)」という組物で支える。
で、さらに細かい決まりごとってか、法則があるのだけど、それをここでアタシがあれこれ言っても、事がややこしくなるだけなので、やめときます(笑)―要するに、うまく説明出来ませんので(笑)。
1300年前ですョ、この技術というか、この着想が…。この構造物を見ただけで、「今日は来てよかった!抽選に当たってよかった!」と感激しましたね、アタシは!
どれほどスロープを上ったでありましょうか。現時点での解体工事最上部となっている「二重主屋」部分へ。この上の「三重裳階」、「三重主屋」、水煙を含む相輪部分はすでに解体が終了。「心柱」もここまで。
「もちろんそうだろうな~」と思いつつも、実際に現場を見てみると、想像以上に、ひとつひとつのパーツを丁寧に慎重に解体し、そして丹念に調査しているというのがよくわかります。大変な作業です。
さらに上から見下ろしてみますと、こんな具合に。しかし、この「心柱」っていうのは、相当タフなパーツですな。時代時代で、大なり小なり修復作業はあったとは言え、基本的には1300年もこの塔を支えているわけですからねぇ…。驚異ですな、マジで。ただ、この心柱、実は足元の内部を虫が食ったのか腐ったかで大きな空洞ができてしまったらしく、今回の大修理を断行する最大の要因となったと聞く。まあ、それにしてもそんな状態でも、シュッと立ってたわけだもんなぁ…。
解体されたパーツがきちんと整頓されている。しっかり調査して、部材の年代や内部の状態などを見て、今回の解体修理の大きな課題のひとつでもある、過去の修復事業の実態の解明につなげるのだとか。いや~もう、日本ってすごいな~と感心することしきりでありました。
三重の「裳階」中心部分。二つ上の写真の柱を取り巻くように、これがあって、さらにその周りに建物自体があったということですかね…。もうこのへん、いろんなことに感激していて、説明もちゃんと聞いてませんでした(笑)。
ところで、塔の上にあった「水煙」はすでに撤去されているわけですが、これが間近に見ることができる展示会が境内で開催されています。
水煙の下部、「九輪」。これがまた大変な構造で、中心の「檫管(さっかん)」に乗せられているだけで金具などで留められているわけじゃないっていうから、こりゃすごい!こちらが「水煙」全体像。写真撮り放題ってのが嬉しいし、ありがたい!
よく見ると、笛吹きやら宙づり状態やらいて、この彫り物にも物語が込められている様子。これまた1000年を超える遥か昔の技術。ただもう「凄いな~」の言葉しか出てこないのであります。それにしても、面白いね、こういうのをじっくり眺めているのは。
というわけで、薬師寺の東塔修復事業をしっかり(でもないか)見学してきたのでありまする。
驚嘆と感動の連続。もちろん当時の渡来の技術があっての建造物なのだけど、それを日本の風土に合うようにアレンジした技術を間近に見ることができて、大変貴重な経験ができたと思う。いずれは第4回が実施されるかもしれいけど、また応募して抽選に当たればうれしいな。今度はどんな状態を見物できるのかな…。楽しみだな~。
(平成25年11月10日 見学)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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