【けいおん部】私家版・青春プレイバック<1>

前回のエントリでお約束(笑)したとおり、今回から数回は、「私家版青春プレイバック」として、これまでに買った、借りた、聴いたLP(アルバム、CDは除外!)の中での、独断と偏見及びこれを書く日の気分しだいによるベスト5を並べてみることに致しまするので、しばしはお付き合いの程を、願ふ次第でありまする。では、さっそく最初の1枚から参りませうか。

felista_00000743348『GOOD VIBRATION Mr.Kohsetsu in 武道館』 南こうせつ
昭和51年7月発売(日本クラウン)

■日本人アーティストとして、初めて日本武道館で単独ライブを行ったこうせつの、ライブアルバム2枚組。この武道館ライブの成功が先駆けとなって、以降、日本人アーティストの武道館進出への憧憬が始まるのである。

■映像メディアが市販されていなかった時代のライブアルバムは、コンサートの臨場感を味わいたいファンにとって、唯一無二の存在。それだけに、この頃のライブ盤は、こうせつに限らず、ステージと観客の「心意気」のようなものがバンバン伝わってきて、それこそ、聴いているだけで武道館のステージや客席の情景が目に浮かんでくる。

■実際、この『GOOD VIBRATION』でも、ステージに押し寄せる観衆を、警備員が「危ないですから!」と必死で阻止する声もバッチリ収録されていて、いかに会場が興奮のるつぼと化していたかが伝わってくる。また、LP盤というサイズの強みで、ジャケットのこうせつの表情や、ジャケット内側見開きいっぱいにあしらわれたライブの写真のあれこれ、さらにはジャケットと同サイズの16ページ建て写真集などなどの出来うる限りのビジュアルが、武道館の様子を生き生きと伝えてくれている。これで、聴き手は想像力をさらに掻き立てられ、自宅のスピーカーやラジカセの前で、アリーナ席の一観客と化してしまうのだ。そこには、CDや音楽配信では得ることのできない感動がある。

■発売が昭和51年(1976)、ときに小生中学1年生。この頃から、ラジオの深夜放送と南こうせつにどっぷりと漬かり始めるのである。そして37年後の今日もなお、「やっぱ、こうせつが一番やよね~」なんてほざいているのだから可愛い奴だ(笑)。

■そんなこんなで、小生の手持ちのLPレコードで、最も再生回数が多いこの1枚は、こうせつと小生をつなぐ大切な宝物であることに、今も昔も変わりはない。こうせつ自筆であろう、「のりのり仮面」の落書きも懐かしい、最高の1枚(いや、2枚組)。

【収録曲】 <1-A面>朝が来るまで/昨日にさようなら/来年も来るよ/九州へ帰る友へ/たぬき囃子 <1-B面>さよならの街/妹/ひとりきり/思い出にしてしまえるさ/私の詩 <2-A面>ヘイ・ジプシー誘っとくれ/何処にも行かない/ねがい/今日は雨 <2-B面>うちのお父さん/いつもふたり~朝が来るまで/幼い日に/グッド・ナイト・マイ・ベイビー
 
81Zke82K9UL._AA1231_『the KAGUYAHIME foreve』 かぐや姫
昭和50年3月発売(日本クラウン)

■かぐや姫の活動期間は短い。第1期のかぐや姫が初のアルバム『レッツゴーかぐや姫』をリリースしたのが、昭和46年(1971)。メンバーチェンジの後、『神田川』がヒットしたのが同48年(1973)、そして解散が同50年(1975)。南こうせつ、伊勢正三、山田パンダの3人での活動は、わずか3年ほど。その間にどれほどの名曲を世に送り出したかについては、ここで一々説明するまでもなく、それらは今も本人のみならず、様々な歌手に歌われ続けているのだから、非常に濃い3年間だったのがよくわかる。

■そんな短くて濃い活動期間の締めくくりに発売されたのが、この『かぐや姫フォーエバー』。カートンボックスのケースに収まった2枚組全26曲が、かぐや姫の世界を余すところなく聴かせてくれる。世に、この名盤の所有者は実に多く、当時のファンはもちろんのこと、その一世代下にあたる小生らの世代から、現代の10歳代の若人まで、「フォーエバー、持ってますョ」という人は非常に多い。そう言えば「一家に1組フォーエバー」なんてことも言われていたっけ…。

■このアルバムは、「解散記念盤」でありながら、あれもこれもと欲張らずに、まずはこれまでの活動記録のような形で曲を「再録」した。そして、新録音が7曲収録されたことで全体のクオリティーがアップしていること。さらには、曲順がひとつの「物語」を紡いでいる。

■そうなのョ。昔のLPはそれ自体がひとつの「物語」を紡いでいた。今のCDは、その雰囲気が希薄な気がするのは小生だけではないだろうと思う。かぐや姫がこれまで出したアルバムのそれぞれの「物語」を、「フォーエバー」で再構築して、新たに「かぐや姫の物語」を紡ぎつつ、聴く者の来し方の「物語」をも紡いでいるのかもしれない。そこに、ジャンルの嗜好、年齢、時代を超越して広く愛聴されている理由があるのかもしれない。

■最後の1曲『好きだった人』も、新録音。オリジナル版よりも洗練されたアレンジが、さらに切なさを誘う。そして「ああ、いよいよお別れか…」と、その切なさが頂点に達したとき、こうせつの掛け声とともに、賑やかなパーティーシーンの様相に一変し、『おもかげ色の空』のフレーズが、繰り返されてゆく。♪部屋のあかり、消しながら、また会うその日まで……。「また会えるよね、いつか…」。

■ここで約束されたが如く、かぐや姫はその3年後、一時的に再結成され、オープン直後の横浜スタジアムなど全国各地で大規模なライブを開催し、再び熱狂を呼ぶのであった。

「明日に もし何か見失うことがあったら 思い出して下さい かぐや姫の世界を」。ボックスの帯の一文である。本当に、そんなときに聴きたくなる名盤と言えましょう。

【収録曲】 <1>この秋に/君がよければ/ひとりきり/ペテン師/赤ちょうちん/あの日のこと <2>マキシーのために/あてもないけど/うちのお父さん/眼をとじて/加茂の流れに/けれど生きている/僕の胸でおやすみ <3>神田川/雪が降る日に/おもかげ色の空/こもれ陽/今はちがう季節/突然さよなら/22才の別れ <4>あの人の手紙 /アビーロードの街/なごり雪/黄色い船/妹/好きだった人

ってことで、続きはまた明日!


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