【上方芸能な日々 落語】第636回田辺寄席*旧ブログ

地元におりながら、毎度ご無沙汰の田辺寄席。
今回は、いよいよ大名跡・月亭文都襲名を2日後に控えた、月亭八天師、ラストランとなる高座でございますので、チャリをかっ飛ばして、桃ヶ池公園市民活動センターへ!

第636回 田辺寄席
3月17日(日)昼席

《新・じっくりたっぷりの会―月亭八天の段》

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<ネタ帳>
※ 開口0番(文太の前ばなし) 「あきすとぜねこ」
一、月亭八斗 「動物園」
ニ、月亭八天 「地獄八景亡者戯」
三、桂文太 「抜け蟹」
<仲入り>
四、笑福亭智之介 <マジック>
五、月亭八天 「がしんじょ長屋」(作:牧野修)

例によりまして、文太師匠の「開口0番」で、客席を温めてくれます。
「あきすとぜねこ」…。これ聞いて、「ああ」とか「そういうのんあったなあ」なんて思い出す人、わりかし古い人でんな(笑)。
かく申すアタクシも、「あはは!、あったあった!」なんて言うクチです(笑)。

「高座に上がる時間より、髪の毛いじってる時間の方が長い『髪型落語家』」の八斗くん。彼曰く、芸界の師匠は正真正銘、八方師匠だが、こと、落語に関しては「八天兄さんがあればこそ」と。たしかに、「君、八方と八天、どっちの弟子やねん?」みたいな時期がありましたよね(笑)。今日もそんな八天師に仕込んでもらった『動物園』。ところで、なんか緊張してた?
さて。余すところこのネタ入れて、あと二席で八天を名乗って高座に上がることはない、という八天師。『地獄八景~』の縮小版で。『地獄~』は普通にやれば、優に一時間を超す超長講ネタですが、こうやれば、ここまで短縮できますョ、の手本みたいなバージョンでした。
襲名2日前という気負いのようなものはなく、非常にリラックスしているようにも感じましたが、恐らくは田辺寄席の客層が醸し出す独特の「空気」がそうさせたのかもわかりません。
田辺寄席は、老舗の手作りの市民寄席だけに、噺家を育ててあげようという優しい空気があふれている一方で、手厳しい視線が飛ぶこともあります。この日は、文都襲名を前に「八天として、最後の高座」を勤める八天師を、田辺寄席から温かく送り出してあげましょうよ、という空気をアタシは感じました。さて、ご本人はどうだったでしょうか?

文太師匠『抜け蟹』は、ピンと来る方も多いと思いますが、『抜け雀』の贋作であります。サゲが「ああ、そうなるんか~!」と。まあ、それは聴いてのお楽しみということで…。
中入りは会館の裏庭で、お茶やお菓子をいただき、ちょっと喫煙タイム。ふと、感じたんですが、タバコ吸う人、ホンマに減ったなぁ…と。寂しいわ…。
運よく、八天さんとばったり。ちょちょっとお話して「明後日、楽しみにしてますわぁ~!」と。

中入り後の色もんは、智之介くん。いいえいな、アタシの”ちのちゃん”の元々の印象は「かわいらしぃ子」やったんですが、なんかえらい立派になりはって…。マジックやるんでタキシード着てたからかなぁ…。お客さん参加型で、良い雰囲気で色もんさんの役割を果たしてました。
さあ、トリはいよいよ、八天師最後の高座です。
意外にも新作の『がしんじょ長屋』で。
まあ、得体の知れんハナシです(笑)。さすが、牧野修の作品です。で、これがまたお客さんに受けてまして、アタシも含めて皆さん、よく笑ってらっしゃいました。熱演の末、最後は襦袢だけになって、「八天から脱皮」したかのように、高座を下りて行った八天師を、皆さん、大きな拍手で見送ったのであります。

アタシは、襲名披露興行へも行くのですが、こうして一人の噺家さんの、旧名最後の高座と、襲名最初の高座を拝聴でけるのは、大変うれしいことですし、そうそう巡り合う機会もないかと思いますので、幸運でもあります。ましてや、日頃、応援している八天師のことですから、余計にそれを感じます。

襲名後も、より一層の「ご八天」ならぬ「ご発展」を!


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