【SARS10年を回顧-8】買い占め騒動&レスリーの死

SARS騒動は4月に入っても、一向に終息の気配を見せませんでした。

そして、4月1日は忘れ難い1日となりました…。
いっぺんに色んな事が起きてしまい、

「ああああああ、どうなるのよ、香港はぁぁぁぁぁ」

ってな感じでした。

【4月1日】
■日本人13世帯も住んでいる淘大花園では、3月31日までに計185人の感染が確認されたが、在香港日本国総領事館によると、問題のE座に日本人の入居はなく、連絡が取れた7世帯の家族にはSARSの症状は出ていない。

■ブロックEが封鎖されて2日目。その他のブロックでは「次にうちも封鎖されて軟禁されるのでは」と、続々と引っ越す人々が絶えない。また体調を崩す人も多数。

■なぜブロックEの7号室、8号室に感染が集中しているのか? 都市環境専門家の現場調査によると、汚水処理施設の排気ダクトがブロックEとFの脇にあり、風向きの影響で7号室と8号室の中層階に吹きつける。糞便を処理する過程で、排気中にウイルスが生存し、風にのってブロックEに吹き付けられ、窓はめ込み式クーラーから吸い込まれて多くの人に感染したのではないか?

■衛生福利及食物局・楊永強局長は淘大花園ブロックEの設備を徹底的に調べると発表。

■TVB深夜ニュースより:衛生福利及食物局・楊永強局長は、下水システムから伝染しているとの見地から、おそらく、淘大花園ブロックEの住人全てが感染している可能性がある、と慎重に言葉を選びながら語った。

■華字紙「明報」のウェブサイトが、ある青年にクラッキングされた。ウェブページが複製され、そこに青年が嘘の情報を書き込んで自分の登録しているホームページからEメールで「デマ」を流していたことがわかった。明報側は登録されたウェブサイトの資料からこの青年に連絡をとり、警告とともにこのデマ情報を削除した上で警察へ通報。

■警察は、「明報」のウェブサイトのコンテンツを盗用し、「香港が伝染病汚染地域宣言をする」などのニセ情報を流し、香港を大混乱に陥れた疑いで、新界・大埔(Tai Po)の住宅で、14歳男子の身柄を拘束。警察の商業罪案調査科が調査を進める。

■マスコミの問い合わせに対して、衛生署・陳馮富珍(マーガレット・チャン)署長は、香港を伝染病汚染地域宣言(全ての空海港閉鎖)の予定はないと明言。今朝より、「疫埠になる(伝染病汚染地域宣言をし、全ての出入境を禁止する)」という噂が広がり、市民がスーパーマーケットへ押しかけて食料や米を買いあさる騒動が勃発したため。

■政府スポークスマンは、工業貿易署の資料によると現在香港には十分な量=3200万トンの米があり、香港全体で36日分に相当すると語った。スポークスマンはまた、米の輸入状況も正常であるので、市民は心配に及ばないと語った。

■「4月1日午後3時、香港政府は香港の“疫病エリア”宣言!」のデマを打ち消すための一つの措置として、香港政府は香港市民の携帯にSMSを送信。内容全文は以下の通り。
Important message from Information Services Department:
Director of Health announced at 3 pm today there is no plan to declare Hong Kong as an infected area.

ニセ情報は、SMSやメールを通じてあっという間に香港中に出回り、 スーパーは買いだめに走る市民で大混乱に…
米の商品棚はわずかな時間でこんな状態に

■衛生署副署長は、淘大花園でのSARS感染者が増え続けていることで、住民の健康を考慮、またビル内のウイルス蔓延の原因を徹底的に調べるため、同所の住民を西貢(Sai Kung)のマクレホース夫人キャンプ村、および鯉魚門(Lei Yue Mun)公園キャンプ村へ移住させることを決定した。期間中住民は隔離され続け、当局が食料提供と身体検査を行う。衛生署と民安隊、警察が住民の移住を手伝う。

■淘大花園ブロックEの住民は、政府の決定により2つのキャンプ村へ突如移住、引き続き隔離されることについて、当局からなんの連絡も受け取っていないと不満を漏らした。ある住民は、自分がまるで難民にでもなったかのようだ、と話し、荷物をまとめる時間もないと困惑。また別の住民は、テレビニュースで移住させられることを知ったという。突然のことで、何を持っていくべきか考えがまとまらないと言う。

■午後9時過ぎ、強制移住準備が整い、政府は淘大花園ブロックEに隔離されている住民およそ300名を西貢と鯉魚門公園のキャンプ村に移住させる。民安隊は約20台のマイクロバスで住民を移住地まで輸送する。漁護署のスタッフが保護服とマスクを着用して、住民のペットを預かり面倒をみる。

強制移住・隔離の準備が進むアモイガーデン
着の身着のままで住まいを追われる居住者のみなさん

■カナダのSARS感染者数は増え続け、昨日だけで31名増え、累計129名。オンタリオ州が最も多く、当局では市民に対し、病院へ見舞いに行くのを控えるよう呼びかけている。全世界で、1700名以上感染者と61名の死者が出ている。
■中米・パナマで54歳男性が死亡。SARS感染者と見られる。

■俳優・歌手の張國榮(レスリー・チャン)、文華酒店(マンダリン・オリエンタルホテル)で飛び降り自殺。享年46。

レスリーの飛び降り自殺報道も、「デマ」であってほしいと願ったけど…

■米国務省は1日、SARS感染が拡大しているとして、広州と香港の米公館を対象に、一部の館員とその家族を出国させる方針を決めた。

【4月2日】
■香港貿易発展局は、スイス政府が法令として、香港の業者を明日バーゼルとチューリヒで行なわれる、世界ジュエリー&ウォッチフェアに参加させないと発表。中国、香港、シンガポールおよびベトナムなどSARS汚染地域からの人が来ると、来場客にうつるかもしれないという理由。

■スイスで開催される宝飾品展示会に、香港企業の参加制限を決定した旨、駐香港スイス領事に連絡してきたことに対し、唐英年(ヘンリー・タン)工商・科学技術局長は失望の意を表した。

■WHOはジュネーブで会議を開き、SARSは空気感染するのではなく、香港の淘大花園事件は汚水によるものだという見解を示した。

■WHOによると、中国政府はWHOの広東省入りを許可したが、日程は公表せず。広東省へは、SARSが世界で最初に発見された地域であるため、WHOは当初から専門家を派遣し調査したいとしていたが、中国の関連部門の回答を得られなかった。ようやく同意を取り付けたが、その日程の詳細は明らかになっていない。

■上海の衛生機関の関係者が、上海でも初めてSARS感染の疑いのあるケースが発見されたと述べたとの情報を明かす。患者は、中国南部に出張したことのある女性で、上海に戻ったのち、咳・高熱・呼吸困難などの症状が見られ、現在観察中。

■SARSが広がる広東省と香港に関し、WHOは旅行者に対し、SARSの感染を避けるため当分の間、香港と広東省への旅行は避けるべきとの警告を発した。WHOによると、香港を訪れた外国のビジネスマン9人が香港で感染し、自国に戻ったあと発病しているとのことから、この警告を発したとのこと。

■香港政府は、「荃湾曹公潭屋外康楽センター」と「西貢屋外康楽センター」を隔離センターとすることを決め、淘大花園E座の住民を移転させているが、西貢地域の住民に「地域内にウイルスが蔓延するのではないか」という不安を招いている。「西貢区居民大連盟」の代表者数名は正午頃、「西貢屋外康楽センター」に出向いて、ウイルスが拡散しないかとの抗議を行なった。代表によると、「西貢屋外康楽センター」から最寄りの住宅までは2、3分の距離であり、淘大花園E座住民の移転後、周辺の住人が感染する恐れがる。彼らは、住宅地から離れた「康楽センター」を使うべきだと要求。

■食物環境衛生署の虫害・鼠害予防チームのスタッフ数10名は、全身に防護服をまとい、午後、淘大花園に到着してネズミ取りを設置し捕獲作戦を開始した。チームはマンション内の花壇や階段、物陰などに数10個のネズミ取りを設置。さらに、多くのガラス瓶を用意しネズミの糞を回収した。チームの袁銘志主任によると、ネズミはウイルスを拡散する媒体となり得、SARSのウイルスを伝播する恐れもあるため、ネズミを捕獲し化学的チェックを行なうとのこと。

■4月2日午後1時の時点で、新たに23名(うち淘大花園住民3名、医療スタッフ7名)のSARS感染者を確認。累計708名。退院者はきょう5名。累計89名退院。82名が依然としてICU内で治療中。

広東省のSARS発症者は1000人に達していると、広東省政府がついに発表。
(1)3月だけで361人発症、9人死亡
(2)発症者合計約1000人、死亡者は30人を突破

■WHOの公式報告
(1)中国全土の感染者累計1190人、死者46人、世界合計は78人に
(2)広東省だけで感染者1153人、死者40人
(3)広西チワン自治区の死者11人
(4)北京市、感染者12人、死者3人(高い死亡率)
(5)山西省の感染者4人、湖南省7人、四川省の3人は完治

■WHOの勧告を受けて日本の厚生労働省は、外務省や国土交通省などと調整して、政府として香港や中国・広東省への渡航延期を勧告する方針を固めた。感染症の危険で渡航延期を勧告するのは初めて。また、SARSを感染症法の「新感染症」に認定することも検討。新感染症は、厚労省によると、国内の医療機関から2日夕までに報告があったのは、流行地から帰国して10日以内に38度以上の発熱や、息切れなどが出たとするSARSの「疑い例」が11人と、さらにX線写真で肺炎が認められた「可能性例」3人の計14人。いずれも回復または症状が安定しており、「SARSの可能性は極めて低い」という。

WHOのヘイマン感染症対策部長は2日の記者会見で、アジアを中心に流行しているSARSについて、香港では上下水システムなどの生活環境が感染源となっている可能性があると語り、空気感染の可能性は否定した。広東省と香港に対する渡航延期勧告を出した理由については、広東省では3月に新規感染者が361人発生し、うち9人が死亡したことや3月15日以降に香港から戻ってきたシンガポールのビジネスマンら計9人がSARSに感染していたことなどを挙げた。同部長は、渡航延期勧告について「(内容を)変更する必要があるかどうかを毎日検討する」と述べ、感染拡大の封じ込め確認など情勢に変化があれば、勧告の取り消しはいつでもあり得るとの認識を示した。

■董建華行政長官は、胡錦濤国家主席から電話を受けたことを公表。胡主席は香港SARS蔓延状況を心配しているという。

■カナダ・オンタリオ州でまた2名のSARS感染者が死亡。当局によれば、二人とも年齢が70歳過ぎ。オンタリオ州では、現在SARSの感染、疑い合わせ124名、うち6名が死亡している。

■タイで新たに1名がSARSで死亡。外電によると、この死者は78歳の男性。3月22日、香港からタイに到着、その後隔離されていた。スポークスマンは、衛生当局は国際空港に医師を駐在させ、中国、香港、台湾、ベトナム、およびシンガポールからの旅客の健康状態を監視し続けるという。

もうねぇ、散々な4月1日だったわけですよ。

1)「香港が封鎖される!」なるデマ情報で、買い占め騒動勃発
2)大スター、張國榮(レスリー・チャン)が自殺
3)アモイガーデンブロックE住民に突然の強制移住宣言

デマが流れているさ中、当時の勤務先は日系企業の悲劇とでも言いますか、誰も外の騒ぎを知らなくて、気付いたのは騒動が一段落した昼下がりのことでしたよ…。のどかというか、情けないというか、恐ろしいというか。
これ、デマでよかったものの、実際に生命にかかわる重大な事態が発生していたとしたら、社員の運命はどうなっていたんでしょうね…。
上記でも紹介した政府からの「心配するな」メッセージは、当然、小生の携帯にも届き、改めて、自分の職場以外は大騒ぎになってたんだ~と、驚いたもんです。

そして、レスリーの死ですよ。

自宅に戻ってケーブルテレビの娯楽情報番組が、やたらレスリーがどうしたこうしたとうるさいので、腰を据えてよく見てみると、「何?自殺?」と。これこそタチの悪いデマであってくれと願ったんですがねぇ…。

番組では、飛び降り現場の血痕やら救急搬送されるレスリーらしき人物の写真なども映っていてねぇ…。

そうこうしているうちに、テレビが次に映し出したのは、アモイガーデンE座住民の強制移住・隔離作戦でした。
実に遅々とした作戦実行でした。遅すぎます…。
まるで犯罪者が連行されるように、E座を去る人々…。こういう作戦は、初期段階で実行すべきだったのに、なんてのは、小学生でもわかる話でして。なんでここまで引き延ばされたのか、その間に何人が亡くなってしまったのか…。

とても切ない2003年のエイプリルフールでした。

*ちなみに、小生のLeslieは、張國榮に因んだものではなく、ベイシティ・ローラーズの「レスリー・マッコーエン (Leslie McKeown)」にちなんだものです


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